Vol.22  2003.10.1  この号の当選番号は129と159です。

若さ故の過ち


天高く馬肥ゆる秋、です。

この言葉は本家中国では「秋になると北方の騎馬民族の馬に充分な餌が行き渡るので攻めてくるぞ」というマイナスイメージの言葉なのですが、日本では「馬も太っちゃうくらい美味しいものがいっぱいあるぞ」という、実に楽しいイメージのある言葉です。


そんなウンチク話はさておき、この季節になるとあちこちで食べ放題の様々なイベントが行われています。

四十を迎えた今となってはたくさん食べることよりも美味しいものを食べることの方が魅力的なのですが、無敵の胃袋を誇っていた二十代にはあちこちの食べ放題を渡り歩いたものです。


そんな中で今も強烈に記憶に残っているのが名古屋ヒルトンのケーキバイキングです。


時はバブル末期、当時会社員だった私は「天下のヒルトンのスイーツを食べ尽くすぞ」のかけ声の元、集まった十人ほどの同僚達と共にヒルトンホテルに乗り込んだのです。


しかし敵もさるもの、小ぶりとはいえ二十種類以上ものケーキが取りそろえてあり、そう簡単には食べ尽くさせてはくれません。

女子社員達は一つのケーキを何人かで分け合って全種類を制覇する作戦をたて一部男子社員もそれに乗ったのですが、私とあと二人九州出身の男達は「九州男児は敵に背を見せんのじゃー」などと訳のわからん事を口走り、全部を食べる事にしたのです。


最初の内こそ「このケーキはカルバドス(リンゴのブランデー)を使ってるな」などと冷静に分析しながら味わっていたのですが、中盤あたりから「これはチョコ」「これはたぶんイチゴ」程度しかわからなくなり、終盤には「これは甘い」としかわからなくなってしまいました。

それでも何とか最後の一つを食べ終わり「ヒルトン破れたりっ!!」と心の中で快哉を叫んだ時、目の隅に恐ろしい光景を捉えたのです。


新しい種類のケーキを運んできている・・・・・・


結局新しいケーキは五種類ほどしかなく、確かに食べ尽くしたはずなのですが、都合の悪いことはすぐに忘れてしまう私の脳に、そのあたりの記憶は残っていません。


その後、はち切れんばかりのお腹を抱えて友人の車に乗り、「ブレーキを踏んじゃイカン!!」などと無茶言いながら帰ってきたのですが、途中春日井あたりで誰ともなく「なんか塩気が欲しくない?」という話になり、ラーメン屋さんに寄ってから帰ることになりました。

バスを改造した怪しげなラーメン屋さんですが、意外に美味しかったのを良く憶えています。


ケーキは別腹、という話は良く聞きますが、ケーキのあとのラーメンも別腹なんですね。


今となってはとても出来ない芸当ですが、若さというものは・・・・。


さて、食欲の秋いえばデザートの美味しい季節でもあります。

栗やリンゴの香りをいかした新作デザートが次々に登場します。

以前のものと名前が同じでも、組み合わせなどは毎回違うので「去年食べたから」などといわずもう一度お試し下さい。


え?もうお腹いっぱいですか?

でも・・別腹ですから・・・・。


KURIKURI