Vol.32  2005.8.1  この号の当選番号は038と045です。

流暢


本格的に夏になりました。焙煎機のなかでは豆が焼け、オーブンではケーキが焼けているKURIKURIの厨房は朝の六時台で既に30℃以上まで気温が上がり、人間も蒸し焼き状態になっています。


これだけ暑くなると困るのは「生チョコ」です。

生チョコは熱した生クリームに純度の高いクーベルチュールチョコレートを溶かし、ひたすら混ぜながら温度を下げて作るのですが、この時最も肝心なのが30℃から26℃までの間です。


この間をゆっくりと三分から五分ぐらいかけて温度を下げながら素早く混ぜていくことによってチョコレートに含まれる油脂分が適度に結晶化し、滑らかな口溶けが生まれるのですが、室温が高いとこれがなかなか難しいのです。

何もしなければ室温が30℃以上もあるのだから永久に固まらないし、下手に冷やせば口溶けの良い結晶ができる前に固まってただのふわふわ生チョコになってしまいます。

このためこの時期は一発で結晶化に成功することは稀で、大抵は何回か温度を上げ直して作るため、春には十分もかからず作れる生チョコに三十分近く費やすことも珍しくありません。

要するにただ腕が悪いだけの話なのですが、おまけの生チョコを食べる際に、この滑らかさにかける努力を少しだけ思っていただけると嬉しいです。


さて、滑らかさと言えばアイスクリームも滑らかさが命です。

種類によってはワザとシャリシャリ感を出すこともあるのですが、バニラや紅茶のアイスクリームは香りと共に口溶けも命です。

このためこれまでにも何回も調合を変えて滑らかさを追求してきたのですが、最近調合だけでなく調理方法も変えることでより滑らかになる方法を発見しました。

これまでより、更に美味しくなったKURIKURIの手作りアイスクリーム、機会があれば是非お試し下さい。


と、ここまで書いて気が付いたのですが、アイスクリームを美味しく食べるにはもう一つ大事なことがありました。

それは温度です。

以前、めちゃくちゃ暑い日にかき氷を食べに行ったのですが、そのお店がガンガン冷房を効かせていたためにあやうく死にかけたことがありました。


KURIKURIの室温はゆっくりと長居していただけるよう若干高めに設定しているのですが、もし寒いと感じるようなことがありましたら、すぐに対応いたしますので、身の危険を感じる前にお申し出下さい。


ところでアイスクリームと言えば、ハワイで食べるアイスクリームは「人生観が変わるほどウマイ」という話を何かのエッセーで読んだのですが、これは本当の話なのでしょうか?

やはりあの常夏の太陽がアイスクリームの美味しさを極限まで引き出してくれるのでしょうが、残念ながらハワイに行ったことがないため真偽のほどは判らないのです。

どなたか体験した方がいらっしゃれば是非お話を聞かせてください。


わたしが食べた南国のアイスクリームといえば、高校時代家族で行ったグアムで食べたもので、美味しかったのは間違いないのですが、この記憶はちょっと微妙です。

この時、ビーチの屋台のようなところで注文したのですが、姉の頼んだ「トロピカル○×#**」というアイスクリームがやたらと美味しそうだったのでわたしも「Me too」と言って同じものを注文したのです。


しかし出てきたのは姉のとは全く違う空色のアイス。


わたしの「Me too」は「Mint」としか聞こえなかったようです。

あの時もっと滑らかに発音できていれば、という後悔が現在の滑らかさの追求に繋がってる・・・はずはないか・・・。


KURIKURI