Vol.45 2006.9.1 この号の当選番号は030と044です。

皮がポイント

いつの間にやらもう秋です。

この原稿を書いている八月末の時点でも、日中は流れ落ちる汗がアスファルトでジュッと音をたてるほどの暑さが残っているものの、朝晩はめっきり涼しくなっています。

さて、秋と言えば栗の季節です。

今年は梅雨の長雨と夏の酷暑のため少し遅めの九月末から栗のデザートが始まります。

もしかするともう少し前からおいしい国産栗が出回るかもしれないのですが、もし間に合わなければこの秋一番の栗のデザートが輸入むき栗で始まってしまう事になるので、少し余裕を見て遅めのスタートにしたのです。

無論輸入のむき栗でもおいしいことはおいしいのですがKURIKURIのデザートは香りが命、皮ごとじっくり蒸し上げなければあの香ばしさは得られないのです。

しかし、毎年のように書いているくらいこの皮付き栗は手間がかかります。

蒸し上げた栗は熱いうちに二つに割って中身をスプーンで掻き出し(この時渋皮も少し混じるようにするのがポイント)、目の細かいふるいでしゃもじを使って裏ごすのですが、これらの作業は結構力がいり、時として手の皮がむけてしまうこともあるくらいなのです。

しかしこの作業があるからこそ、あの栗きんとんのように滑らかでおいしい栗のアイスが生まれるのです。

さて、皮と言えば先日十数年ぶりに行った海水浴でエライ目に遭いました。

その日は超のんびり屋さんの台風十号の影響で不安定な天気。

波は沖合の防波堤のおかげで穏やかなものの、空には不穏な雲が流れていました。

しかし、娘たっての願いでやってきた滅多に来られない海です、泳がないわけにはいきません。早速着替えて飛び込んではみたものの、日の当たらない海は結構冷たく、結局波打ち際で娘と砂のお城作りに熱中することとなったのです。

途中まで作るたびに大波に洗われて崩れる砂山。

時を忘れて夢中になっていたのですが、ふと気がつくと背中が熱い、いや痛い・・・。

いつの間にやら雲は流れ、灼熱の太陽が私の白魚のような(?)背中に燦々と降り注いでいたのです。

そんなわけでその後数日は背中をひねらないロボットのような歩き方と、背筋をピンと伸ばしてハンドルにしがみつく若葉マークのような運転を余儀なくされたのです。

そして、痛みもひいた一週間後、今度は皮がむけ始めました。

人によってはポロポロとむけるようですが、私の場合はペリペリと大きくめくれます。

学生時代、隣で飲んでいた見ず知らずの女性に「わーこんなにむける人初めて見たー」とか言いながら手の平大の皮をはがれしまった事がある程なので、全身くまなく焼いて、その道の名人がむけばきっと等身大の剥製だって作れることでしょう。

そんなわけですからパジャマ姿でうろつくとあちこちに一目でわかる大きな皮が点々と落ち、娘は「パパがどこに行ったかすぐわかる」と大喜び。

私が脱皮する野生動物なら、どこに隠れてもきっと見つかって食べられてしまうことでしょう。

今はやっと脱皮も終え、微妙なまだら模様を残すのみ。

一皮むけてちょっと大きくなったような気分です。と、いってもむけたのは背中だけですけど・・・。

娘よ、父の大きな背中を見て育つように!!



KURIKURI