Vol.56 2007.8この号の当選番号は004と162です。

修行が足りない!

世の中美味しいものがたくさんありますが、美味しいものを美味しいと感じるかどうかはまた別の問題です。

たとえ本当に美味しいものであったとしても、そこのお店の雰囲気や、誰と一緒に行ったかなどでおいしさは大きく左右されるものです。

また、美味しさがある域を超えるとその美味しさを感じるためには経験が必要になることもあります。

たとえばワイン。

第二次大戦時、フランスに侵攻したドイツ軍将校がシャトーに眠るビンテージワインを飲んで「これは腐っている」と判断したために接収を免れたなどという噂が今もなお語り継がれているように、高級ワインの善し悪しは難しいもの。

初心者がフレッシュなカリフォルニアワインとビンテージワインを飲み比べたならば、きっとカリフォルニアワインの方が美味しいと思うことでしょうし、多少の通でもシャトーマルゴーの1998年と1979年を飲み比べて、味の違いを値段の違いほどに楽しむことは無理に違いありません。

ちなみに当店でブルーマウンテンを出していないのも同じ理由によるもの。

通常の豆の十倍以上もするブルーマウンテンの美味しさを値段ほどに味わう事は難しいですから、普通の豆の二倍少々程度の値段で充分に美味しいエメラルドマウンテンにしているのです。

さて、そんな話はおいておいて先月のお話。

七夕が結婚記念日の我が家はその前の六日の定休日に、名古屋に食事に行ってきました。

まぁ結婚記念日とはいえ、そう贅沢できる身分ではないのでちょっとよさげなイタリアンレストランでのランチ。

ウチで作るのとは違う味付けを楽しんだのですが、ここでは特に記憶に残るほどの美味しさは生ハムだけ。

サラダに二枚乗っていたのですが、その二枚とも部位が違う上に切りたて。いつもスライスされたパック入りしか食べていないかったので、切りたてがこんなにも美味しいものかといたく感動しました。

そして食事の後はミッドランドスクエアの中をしばしうろついて腹ごなしをした後、本命のピエールマルコリーニのお店に。

前々からここのチョコレートパフェが気にはなっていたのですが、なかなか名古屋に行く用事もない上に、何といっても値段が1680円。

ウチのパフェの三倍近くもするものですから、結婚記念日くらいのイベント性がなければ食べようなんて気にはなりません。

迷いつつ入り口を見つけたものの、外におかれたメニュー一つ一つの高いこと。

意を決して中に踏み込むと黒服のお兄さんが恭しくご案内。昼なお暗き店内で、多治見では決して見かけないようなウエイトレスさんに注文して待つことしばし。

やっと現れたパフェは、白と黒のシックな雰囲気。

ウチならついフランボワーズかなんかで色を足してしまうところですが、さすがピエール君は大人です。

チョコの黒と、生クリームとバニラアイスクリームの白だけの直球勝負。

その堂々とした姿に気圧されし、いきなりチョコレートに行く勇気がなくなったので、まずは生クリームを一口・・・・・ふむふむ全然甘くない。

それではとチョコアイスを一口・・・甘〜い。

どうやらこのパフェは自分でクリームとチョコで味を調節しながら食べるもののようです。

濃厚なチョコレートの風味と新鮮きわまりない生クリームの美味しさを満喫し、エクレアと珈琲を合わせてその前のランチ並のお勘定を払って外にでたのですが、正直私には払った金額に見合うだけの感動は得られませんでした。

お店の雰囲気などは充分に良かったので、多分まだ私にはチョコレートの修行が足りないという事なのでしょう。

いや、もしかして一緒に行った人の問題か・・・・なんて事は口が裂けても言えんな。


KURIKURI