Vol.59 2007.11この号の当選番号は21と66です。

炎のデザート
 
実りの秋・食欲の秋になり、食いしん坊の我が家には色々な方から、家庭菜園で食べきれなかった分や旅の想い出のお裾分けなど、いろんな美味しいものを頂きました。
 
さて、そんな中でちょっと面白いなと思ったのがジャム。
 
一緒についていたカタログを見ると、ブルーベリーやアプリコットといったベーシックなものの他に「林檎とレーズンのシナモン風味」とか「バナナのキャラメル生姜風味」などの一風変わったジャムが並んでいます。

これだけでも「どんな味なんだろう」と充分楽しめるのですが、面白かったのはその使用例。

「林檎とレーズンのシナモン風味をアップルパイに」というのは充分に想像の範囲内ですが、「いちじくと洋梨のジャムを白カビ系のチーズに」とか「ドライフルーツのジャムをフォアグラのテリーヌに」となるともう想像の範囲外。

誰かこの組み合わせに挑戦する方がいらっしゃれば、ぜひご相伴させていただきたいっ!!

そして、現場サイドの人間として興味深いのは、この組み合わせを見つけるためにどれだけ大量の組み合わせを試してみたのかということです。

私が開発担当なら、きっとハムやエビフライも試してみるところですから、きっとそれ以上(刺身とかたこ焼きとか)の組み合わせにも挑戦しているハズ。

どの組み合わせが一番気持ち悪かったのか・・・ぜひ聞いてみたいものです。

ちなみにウチのお店でもニューヨークチーズケーキに和風だしとかハヤシライスにカルピスのように意外な組み合わせに挑戦しているのですが、「気持ち悪い」程の組み合わせになったことはありません。

ハヤシソースにコーラの隠し味でもまあまあ美味しかったですし、珈琲でもそんな悪くはありませんでした。

まぁその程度でやめているということは、まだまだ度胸がたりないということでしょう。

ジャムのスタッフを見習わねば・・・?

さて、そんな話はさておいて、ウチが頂いたのは練乳のようなミルクジャムと「マンゴーとオレンジの胡椒風味」のジャム。

「胡椒風味」なのですから胡椒の香りがついているだけかと思うかもしれませんが、ピンクや白の胡椒が丸い粒のままあちらこちらに入っている立派な「胡椒入りジャム」なのです。

ただ・・味の方にそれほど胡椒の風味はありません。

確かに胡椒の粒を噛んだときには鮮烈な味と香りが広がるのですが、他の部分を食べているときには微かな胡椒の香りが、マンゴーやオレンジの香りの中に一本の蜘蛛の糸のような芯を与えている程度。

こんなに微かな風味でいいのか?という疑問が浮かびます。

でも、よくよく考えてみれば私のハヤシライスもカルピスの味なんてしませんし、「超おいしい」と評判のマーマレードは、大鍋一杯のオレンジに指についたのを舐めただけで涙が止まらなくなるほどの激辛ソースを数滴垂らして作るのが秘訣だという話を読んだ覚えもあります。

平凡な人生でもほんのわずかなスパイスで豊かなものに変わるといいますが、美味しさというものはほんのわずかの違いから生まれるものでもあるのでしょう。

ただ、気をつけなければならないのはそのさじ加減。人生のスパイスも度を過ぎれば取り返しがつかなくなってしまうように、使いすぎればせっかくの美味しさが台無しです。

スパイスを隠し味に使ったデザートを開発するのはいいのですが、かつてアイスクリームを作るとき砂糖を入れ忘れて作ってしまった実績もありますし・・・・間違って多く入れすぎて、お客さんが火を噴くような事態が起きなければいいのですが・・・・・。

KURIKURI