Vol.66 2008.6この号の当選番号は027と095です。

爆発と夏の料理

火山はどうして爆発するのか知っていますか?

あれは溶岩が爆発するのではなく、熱い溶岩に触れた地下水が急激に沸騰し、その圧力で爆発するのです。

そんな話はさておいて、先日家族で外食に行った折、メニューの中で目を引いたのが「コラーゲンスペシャル」。

牛スジ肉のハッシュドビーフにコラーゲンスープにコラーゲンの吸収を高める緑黄色野菜をセットにし、しかもメニューの横には美容皮膚科のセンセイのコメントまでついているという念の入れようです。

理系の私から見ると、いかに大量のコラーゲンが入っていようが消化してしまえばただのアミノ酸。

アミノ酸なら肉で摂ればいいのです。しかし女性の目にはそう映らないようで、ヨメさんはともかく小学生の娘まで目を輝かせています。

そんなわけでコラーゲンにつられて頼んでしまったのですが、お味のほうもまずまずのおいしさ。

そして特筆すべきなのはコラーゲンスープについていた「コラーゲンボール」。

スープでできた直径三センチほどのゼリーの玉なんですが、これをスープに溶かしながら飲むのです。

これがもし最初から溶かしてあったのなら、いかにコラーゲンが入っていようとただのコンソメスープ。

しかしプルプルのゼリーとして添えてあれば、いかにも効きそうじゃありませんか!私には味見分の一口だけで、あとは二人できれいに飲み干していました。

そんなこんなで大量に摂取したコラーゲン、翌朝二人の肌がプルプルになったかどうかは定かではないのですが、「お肌にいい事した」という満足感はたっぷり味わったようです。

で、そんなに女性が満足するのなら、うちのランチにも何か活かせないかなぁと考えていたら、昔大量のコラーゲンが入ったカレーを作ったことを思い出しました。

ここに何度か書いたように、私は独身時代、毎週月曜日に後輩たちを招いて食事会をしていたのですが、あるとき「牛すね肉のカレー」のレシピを見つけ、作ってみようと思い立ったのです。

早速お肉屋さんに行くとすね肉の横にはオックステイル、牛の尻尾のお肉がありました。

オックステイルは真ん中にごっつい骨が入っているので、なかなかいいダシになります。

そこですね肉とオックステイルを買い求め、早速調理開始。

すね肉はスジ肉同様に腱が沢山入っているのでベイリーブスを入れたお湯で三十分ほど下ゆでに。

その間たまねぎを刻んで飴色になるまで炒め、オックステイルも表面がキツネ色になるまで炒めます。

そして、茹で上がったすね肉をざるにあけ、たまねぎとオックステイルとともに鍋に入れ、ビールと赤ワインを加え、煮立ったところで水を加え、火を弱めて第一段階終了。

三時ごろに始めたのに外は真っ暗、最初寒かった台所は熱気で蒸し暑いほど。

そしてこのまま4時間ほど煮込んで火を止めれば第二段階完了です。

そして翌朝月曜日、寒い中いつもより少し早起きして第三段階。

ジャガイモなどの野菜を入れてもうひと煮込みするのです。

まず、野菜を切る前に鍋を火にかけ・・・と思ったら、鍋の中がブルンブルンに固まっています。

どうやら腱と骨髄から出た大量のコラーゲンのため恐ろしく硬いゼリーができてしまったようです。

挿しっぱなしにしてあった安物のお玉は抜こうにも抜けず、下手に引っ張ればグニャリと曲がってしまいそう。

弱火にかけて溶けるのを待つことにしたのですが、ばかでかい鍋ゆえに側面にまで火が回らず、混ぜることすらできません。

仕方がないのでそのままにして野菜を切り始めたのですが・・・・そのとき悲劇が起きました。

巨大ヘドロ怪獣がくしゃみしたような異音と共にゼリーが爆発し、台所中に飛び散ったのです。

原因は水蒸気。

鍋の底のゼリーが溶けて沸騰したものの、周りは固まったまま。

極限まで高まった圧力で一気にゼリーが噴き出してきたのです。

と、いう訳でコラーゲン料理は夏に作りましょう・・・

KURIKURI