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せめぎ合いの豊かさ

6月といえば梅雨です。

梅の実が落ちる頃の雨だからという説もあれば、黴雨と書いて「ばいう」と読んでいたのを「いくらなんでもカビじゃいかんだろ」と言って梅という字に書き換えたなどという説もありますが、要は季節の変わり目。

真夏並みの日射量でありながら5月が爽やかなのは、シベリア気団の運んでくる北からの乾いた涼しい風が吹くから。

それに対して5月と同程度の日射量である8月が蒸し暑いのは、太平洋気団の運んでくる南からの暖かい南風が、海からの湿気をたっぷり含んでやってくるから(ちなみに多治見の街が異常に暑いのは、この南風が名古屋からの熱気も一緒に運んでくるから)。

そしてこの冬に勢力を伸ばすシベリア気団と、夏に勢力を伸ばす太平洋気団の力関係が入れ替わる時期に、日本の真上で勢力争いを繰り広げ、一進一退でせめぎ合いながら常に雲を産み出している状態が梅雨なのです。

「そんなところでゴチャゴチャやってるから洗濯物が干せないじゃないの」という声も聞こえてきそうですが、 先進国でありながら森林面積が七割り近くも占める豊かな自然があるのは、この梅雨のおかげです。

もし6月のせめぎあいの主戦場が、秋雨前線のように日本から少しそれていたならば、木々は夏の暑さに耐えられず、きっと日本の風景は今より寂しいものになっていたことでしょう。

春に芽生えた植物が思いっきり成長できるようにタップリと水やりをしてくれる梅雨は、大自然にとって神の恵みにも等しいものなのです。 

また、それでなくとも耕作可能面積が狭いこの日本で、主食であるお米の自給率がほぼ100%でいられるのも、水田耕作を可能にする梅雨の恵みがあったから。

これがなければ一億二千万人もの人間が食べるお米を栽培することは不可能なのです。

と、さんざん持ち上げてはみたものの、やっぱり人間にとって梅雨は鬱陶しいモノ。

独身時代は洗濯物が部屋中に吊るされて狭苦しくなった上になかなか乾かず、部屋の中がカビ臭くなってしまったものです。

今ではヨメさんが色々工夫をしているようですが、各家庭でもいろんな苦労があることでしょう。

そんな鬱陶しい季節を何とか晴れやかにしようと考えて、6月のデザートはグレープフルーツムースとトロピカルパフェにしました。

ふつうの白いグレープフルーツだけでなくピンクグレープフルーツを使って見た目も鮮やかな爽やかデザートと夏に向けての気分を盛り上げるトロピカルなフルーツパフェ。

外は雨でもちょっとだけ晴れやかな気分になれるのではないでしょうか?

ただ誤算だったのは、今年の梅雨入りが異常に早かったこと。

よもや5月に梅雨入りするとは思わなかったので、6月初めまでのデザートは「チョコとマンゴーのクレープ」にしてしまったのです。

そこで急遽クレープの中を変更して、チョコレートアイスを若干軽めの配合にし、クリームをオレンジカスタードにしてみました。

そしてマンゴーも多めに入れることでちょっぴり梅雨向けのバージョンになりました。

とまぁ色々工夫をしたデザートですが、これから薄着の夏に向かってダイエットをしようと思っている人にとっては辛い誘惑になったかもしれません。

梅雨の気晴らしにデザートを食べるか、夏に向かってダイエットに励むか。

心のなかでいろんな気持ちがせめぎ合ってしまうことでしょう。
しかし気団のせめぎ合いが豊かな自然を育んだように、心のせめぎ合いもまた豊かな生活を作るモノ。

買い物でも一番楽しいのは「買おうか、やめようか」と迷っているときですから、ゆっくりと悩んで、梅雨の生活に少しでも潤いを与えてやってください。

まぁ製作者としては食べて欲しいのはやまやまですし、そのためにあちこちに写真を置いて誘惑もしているわけなのですが、お客様のダイエットの邪魔をしても申し訳ないですし。

さて、このせめぎ合い、勝つのはどちらでしょうか?


KURIKURI