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修食旅行

先月は一日お休みをいただき、京都に研修に行ってきました。

「また京都に行ってきたの〜」という心の声を上げたお客様が少なくとも39人はいらっしゃるものと推察されますが、いつもの「家族旅行」とは違って今回は「研修」。

まぁ、研修といっても同業者同士のオフ会のようなモノ。

当店のようにデザートも作っている喫茶店やカフェを併設しているケーキ屋さんなどが集うネットフォーラムで、ちょうど娘が授業参観の代休の日(正確にはその前日の夜)に京都で開く会合があったので、参加を決めたのです。

まぁ、要するに家族旅行も兼ねることもできそうだからという不純な動機で出かけたのですが、やはり外に出ればたくさんの収穫がありました。

オフ会研修会の方でもいろいろと収穫もあったのですが、製菓技術の専門的な話や経営に関する生々しい話が多かったので、ここでは割愛しておきましょう。

さて、そんなわけでメインは翌日。

朝は伊右衛門サロンに一番客で乗り込んで、水出し煎茶などを飲みつつ朝食。

和茶の持つポテンシャルを再認識しつつ、デザートのことも考えつつ、残りの九割はおいしく炊かれたご飯を味わうことに集中。

朝からこんなにゆっくりとお米の美味しさを味わうのは本当に久しぶりです。

そしてその後、市内のスーパーなどで食材を見て回ってから、今回の家族旅行研修旅行で一番の目的地である「虎屋菓寮」へ。

ここにも一番客で乗り込むつもりだったのですが、駐車場の場所が少々わかりにくかったので若干で遅れてしまいました。

まぁそれでも紅葉の季節にはまだ早いこともあって並ばずに店内に入ることができ、しかもテラス席に座ることができたのです。

そのテラスも和菓子のお店ですから当然ウッドチェアにパラソルのようなハイカラなものでなく、緋毛氈さえ乗せればそのまま野点の会ができそうなシックなもの。

そんなテラスで、しっとりと落ち着いた日本庭園を眺めながら食べたスイーツはどれも絶品揃い。

その中でも特筆大書して拡大コピーに三回くらいかけたいのが「
栗蜜」。

これは注文した「栗みつ豆」の上に乗っていたもので、要するには栗の甘露煮。

これまで人生で数え切れない位栗の甘露煮を食べたことがありますし、どら焼きの中に栗の甘露煮が入っていれば狂喜乱舞してランバダを踊ってしまうくらい好物ではあるのですが、実際のところ栗の甘露煮だけを食べて「これはうまい」と思ったことは一度もありません。

しかしこの「栗蜜」は別格でした。すっきりとした甘みと共にしっかりと残る栗の香り。

どうすればこんなにおいしいものができるのかと調べてみれば、虎屋の栗蜜は栗を炊いた後に濃度の薄い糖蜜から少しずつ濃い糖蜜に移して作るという手間をかけたものとのこと。ともすれば、タダの飾りとしてしか扱われない食材でも手を抜かない老舗の心意気。

「手間を惜しまない」ことの大切さを改めて感じた次第です。

さて、その後あちらこちらをフラフラし、最後に寄ったのが宇治の中村藤吉本店。

中村藤吉は京都駅内の二店舗と宇治平等院店を制覇して、ついにたどり着いた本丸です。

ここでも色々とおいしいものを食べてきたのですが、今回特に記憶に残ったのが「珈琲ぜんざい」。

平等院店で食べた抹茶の生茶ゼリイもおいしかったので期待していたのですが、もっちりトロプルの珈琲ゼリイが入ったこのぜんざいは予想を超える美味しさ。

上に乗ったミルクアイスは別添えの珈琲シロップを垂らすだけでも十分においしいのですが、舌に絡まる独特の食感を持った珈琲ゼリイと共に食べてると、もうその食感に魅惑されることこの上なし。

我が家ではたくさんのものを味わうために家族三人別々のものを注文して皆で分け合うのですが、そのあまりの美味しさに私一人で三分の二ほども食べてしまい、娘から「次回は一口も分けてあげない」と宣言されてしまったほどです。

日本茶のお店で珈琲?なんて思うかもしれませんが、一通り和茶のデザートを堪能された通の方は是非一度お試しください!

さて、こうやって今回の京都行きを振り返ってみると、どう贔屓目に見てもいつもの家族旅行と変わりありません。

まぁ、学を修めるはずの修学旅行でも思い出に残っているのは「はしゃぎ過ぎて夜中まで正座させられた事」くらいですから、おいしい記憶が残っているだけでも研修の甲斐があったとしておきましょう。

KURIKURI