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いたずらか…

この原稿を書いている時点で、世間はハロウィンに満ちています。

まだクリスマスほどの盛り上がりではないのですが、ここ十年ほどでずいぶんと市民権を得たようです。

私が子供の頃はハロウィンといえばライナス君が「カボチャ大王がやってくる」と連呼しているのをスヌーピーの漫画で読んだ覚えがあるくらいで、実際にはカボチャ大王どころかカボチャランタンを飾っているところすら見たことはありません。

それが今では一ヶ月以上もハロウィン仕様になっている店まであるほどの盛り上がり。

キリスト教徒でもないのにクリスマスを祝う国民性ですから、きっとそのうちハロウィンも季節行事として根付いていくことでしょう。

と、ごく普通の言葉としてハロウィンと書いてきましたが、ハロウィンとはいったい何なのでしょう?

子供たちが仮装して「いたずらかおごりか」と言ってお菓子をねだるのはほほえましい光景ですが、よくよく考えると「お菓子くれなきゃいたずらするぞ」と脅迫しているようなもの。

将来変装して「お金くれなきゃ火をつけるぞ」なんて言う人間に育ちはしないかと心配です。

そして仮装も欧米では悪霊やゾンビなどが多いのですが、知らずに夜道で会えば夜中にトイレに行けなくなるほどグロテスクなものが多く、明るく楽しいクリスマスとはだいぶ趣が異なります。

調べてみるとハロウィンはアジアからヨーロッパに移住した古代ケルト人の習俗で、ケルト人の年末である10月末日に先祖の霊が帰ってくるのを迎えるお祭りのようなものだったようです。

そしてその時に先祖の霊と一緒に悪霊や魔女がやってくるので、ジャック・オ・ランタンと呼ばれるカブをくり抜いて作ったランタンで魔除けの焚き火をしていたそうです。

要は日本のお盆と節分が一緒になったようなもの。

それがキリスト教の普及に伴って11月1日の「諸聖人の日」の前祝い的な意味合いが加わって広まったそうですが、あくまでも諸聖人の日のおまけ。

今でもハロウィンはキリスト教の祭日ではありません。


そしてこれがアメリカに渡ると、日本のクリスマスのように宗教性の薄い民間行事になり、巨大カボチャのランタンや奇抜なコスプレを競い合う盛大なイベントに発展してきたようです。

以前テレビでアメリカ人が「日本人はキリスト教徒でもないのにクリスマスを祝うなんて変!」と揶揄しているのを見た覚えがあるのですが、アメリカ人も人のことはいえません。

本来の意義に関係なくイベントとして楽しもうという精神は日本のクリスマスと一緒です。

そんなアメリカ版「ハロウィン」で生まれたのがカボチャのランタン。

ヨーロッパでは絵本「大きなカブ」にあるようにカブがメジャーな作物だったのでカブのランタンだったのですが、気候の異なるアメリカではあまり栽培されていませんでした。

そこでアメリカ原産で栽培が簡単であり、中身をくり抜く手間もかからないカボチャが使われるようになったようです。

このアメリカ式のハロウィンは漫画や映画などを通して外国にも広がり、日本でもハロウィンといえばカボチャというイメージが定着しています。

ただ、日本のカボチャはアメリカのに比べると皮が固い上に身も厚くランタンに加工するのが難しいのでジャック・オ・ランタンはほとんどが陶器やプラスチックの人工品。

カボチャはもっぱらスイーツとしてハロウィンを彩っているようです。

そしてこのカボチャスイーツこそが日本のハロウィンの特徴です。

実は欧米のカボチャは日本のものと異なって甘みがない上に水っぽいために素材のおいしさを生かしたデザートとしてはあまり使われていません。

一方日本のカボチャは甘み食感のみならず香りに至るまでおいしくなるように品種改良されたものばかり。

ハロウィン人気に目をつけた日本中のパティシエたちがこの時期カボチャを前に腕をふるっているようです。

KURIKURIでは特にハロウィンイベントはないのですが、デパ地下やネット画像で出会う様々なカボチャデザートを見ると黙ってはいられません。

ハロウィンには全く乗り遅れてしまったのですが、今月はカボチャのデザートを作ることに決めました。

どんなデザートにするかはまだ全く決まっていないのですが、お盆と間違えて帰ってきたご先祖様たちがきっといい知恵を授けてくれることでしょう。

あ、でも魔除けのランタンをつけておかなかったから悪霊がいたずらして変なレシピを授けていくかもしれませんが・・・。

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