145号の当選番号は 007 020 128 155 174 です。

神の与えし

 新年、あけましておめでとうございます。
 今年も、心の底からほっこりとできるお店を目指して頑張っていきますので、よろしくお願い致します。


と、去年と全く同じ挨拶をしつつ、去年の新年号を読み返してみると「小説家デビューするぞ~!」と調子こいたフォントを使って中学生の卒業文集にでもあるような目標が書いてあるじゃないですか。
一昨年に書いた小説が最終選考まで残って有頂天になり「ひゃっほ~!これなら次は楽勝で入選できるんじゃない?」とノリノリになっていた姿が目に浮かぶようです。

しかし現実の壁は巨人の進撃を防ぐ程に高くそびえ、いくら調子に乗ったところで簡単に乗り越えさせてはもらえません。。。。

一応四編の小説を書き上げて応募したのですが、三編は既に玉砕済。

特にその内の一編はかなり気に入った作品に仕上がり、受賞する気満々で著者近影のポーズはおろか続編まで書き始めていた程だったのですから落胆もひとしお。

落選の報を聞いた後に次の小説を書く気力を絞り出すには、真夏日に一日干したタオルから水を絞り出すくらいの根性が必要だったほど。

そしてその一編はまだ結果待ちなのですが、応募総数の多いメジャーな賞なので殆ど期待はできません。

そんな感じで年末に最後の小説を書き終えたところで、昨年正月の浮かれた気分はすっかりしぼみ、小説どころかもう日本語なんて書いてやるものかとすっかり投げやりな気分です。

しかしよくよく考えてみると私が書ける言語は日本語のみ。

やむを得ず今日もこのエッセイを書いている次第です。 

さて、浮かれまくって立てた去年の目標と違い、今年の目標は先月号に書いたように「ちゃんとレシピを書き残すこと」と至って地味なもの。

これなら楽に達成できることでしょう。

そんなわけでさっそく昨年末からあちこちに書き散らかしたメモを集め、暗号の如き文字を何とか解読し、ノートにまとめる作業を始めました。

とはいえ、今まで数百のデザートを作っていながらメモとして残っていたのは両手にちょっと余る程しかなく、あっという間に書き終えてしまいました。

ただ、レシピの扱いで困ったのは焙じ茶。

最初の頃は京都で買ってきた焙じ茶を使っていたので、そのまま○○グラム使用と書けば良かったのですが、今はほぼ百%自家焙煎、緑茶を自分で焙じて作っているので茶葉の大きさなどが異なり、同じ重さでも濃さが変わってしまうのです。

そしてさらに問題なのが、使う茶葉の種類や焙じ具合がいまだに定まっていないこと。

例えば焙じ茶アイスのメモに「焙じ茶40グラム」と書いてあっても、それが浅めに焙煎した物なのか深めに焙煎した物なのか、煎茶を焙煎した物なのか番茶を焙煎した物なのかはわからないのです。

しかも、これから作る焙じ茶デザートを「深めに煎茶を焙煎した焙じ茶25グラム」とレシピに残したとしても、今後メッチャ深めの焙煎が標準になって、かつての「深め」は「浅め」になっているかもしれないのです。

そんなことを考えている内に、すっかりレシピを書き残すのが嫌になってしまっているのですが、せっかく立てた目標ですからせめて上半期ぐらいはもたせるように頑張りましょう。

と、新年早々目標値を下方修正ものの、デザートの美味しさだけは妥協しません。

今年一番最初の新デザート「茶々々クレープ」は抹茶・ほうじ茶・紅茶の三種のお茶のデザートですが、どんなデザートができるのかはまだ決まっていません。

味も香りも異なるお茶からどんなデザートが生まれるのか。

ほうじ茶を抹茶と紅茶の間になるように焙煎して調和させるのか、それとも両者から離れたところになるように焙煎してそれぞれの個性を光らせるか。

昔の私なら高いハードルでしたが、経験を積んだ今となっては乗り越えられないようなハードルではありません。

神は乗り越えられる試練しか与えないという噂がありますが、どんな試練も経験を踏み台にすれば乗り越えることができるという教えでもあるのでしょう。

私もしっかり経験を積んで、下半期までレシピを残せるようにがんばりましょう・・・あ、もう一つの方もね。

ともあれ、これからもしっかり努力していきますので、今年もよろしくお願いいたします。

KURIKURI