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あとの祭り

今年の夏はキツかった。

毎年七月下旬に始めるパフェまつりを、今年は前倒しにして七月上旬から始めたのはご存じの通り。

毎週毎週新作を出し続け、今年は新定番のKURIKURIパフェに加えて七種類の新作パフェを出したのです。

毎週新作ということは、新作パフェを作ったら、すぐに次の新作の試作に入らなければならないペース。

十分美味しいパフェになってから商品にしてきたつもりですが、やはりこのペースでは多少工夫の余地が残るもの。

同じ名前のパフェでありながら一週目と二週目で、シャーベットやゼリーの食感を変えていることは珍しくなく、時には中に入っているケーキのレシピをがらりと変えたことすらあったのです。

もしかすると、最初の方に食べたお客さんと最後の方に食べたお客さんが知り合いで、お互いの感想がかみ合わないことがあったかもしれません。

それはお互いの味覚に原因があったわけでなく、私のウデの問題です。

もしまだ遺恨が残っているようであれば、このエッセイを持っていって早急に和解頂けるようお願い致します。

ともあれ、毎週新作を出すとなるともう一つ困るのがネタがなくなること。

世の中美味しいものは数あれど、パフェにして美味しい組み合わせとなると限られてきます。

ネットを使って古今東西あらゆるパフェを見たりもするのですが、匂いもない二次元画像ではイメージもそんなには湧きません。

世の中には実物よりも二次元映像に萌える方も多いそうですが、私にはそこまでのイメージ力がないのです。

そこで毎週休みのたびに、名古屋周辺でネットの口コミ評価の高いケーキ屋さんなどを中心にヒントを探しに行ったのですが、これもなかなか難しいもの。

メチャメチャ評判のいいお店に並んで、期待に胸をGカップ程まで膨らませて食べたものの、がっくりと肩を落として店を出ることもしばしば。

評判はいいのですから美味しいことは間違いないのでしょうが、私が求めている方向と全く異なるために参考にならないことも多いのです。

こうして休日はただひたすら食べ歩くことになるのですが、この程度の苦労なら例年通りのこと。

今年のパフェまつりがキツかったのには、もう一つワケがあったのです。

それは小説の新人賞の締め切りが重なったこと。

決め手になるネタが思いつかないために長いこと放置していたストーリーがあったのですが、パフェまつりの新作を考えている時にふと、とびっきりのネタを思いついてしまったのです。

その時点で締め切りまで一ヶ月少々。

手直しを考えると一日に原稿用紙十枚くらいのペースで書かなければ間に合いません。

昼には集中できないので夜に書くことになるのですが、朝は早くから仕事ですから睡眠時間は四時間少々。

四当五落といわれていた昔の受験ならギリギリ合格できそうな睡眠時間です。五十を過ぎたオッサンが、寝不足の鈍い頭でパフェの組み合わせを考えつつ、小説の展開を考える。

エッセイの冒頭一行目から愚痴をこぼすのも仕方がないと思うのです(ちなみに四当五落とは、睡眠時間が四時間になるほど勉強すれば合格できて、五時間も寝るようじゃ合格できないという当時の恐ろしい受験地獄を一言で表した名言です)。

そんな怒濤の夏ももう終わり。

終わってみれば良い思い出だったというオチにつなげようと思って一旦筆を置いたのが昨日の話。

しかし…まだ夏は終わっていなかった。

今日、八月三十日はパフェまつり最後の日曜日。

パフェの注文が相次ぎ、三時頃には新作のカフェオレショコラパフェが品切れになり、五時頃にはあらゆるパフェの材料がフーテンの寅さん・・もとい風前の灯火です。

最後の方のお客さんには事情を説明してAのパフェにBのパフェの素材を組み合わせてもらうなどして何とかしのいだのですが、閉店時にはあらゆるパフェ素材が欠品状態。
これがパフェまつり最終日ならば「良かったね」の一言で終わりですが、最終日は明日。「パフェはありません」じゃ済まされません。

そんなわけで店を閉めてから焙じ茶を焙煎してアイスを作ってコンポートを作ってケーキを焼いて…現在十一時を回ったところですが、あと十五分ほどで最後のケーキが焼き上がり、残りは明日朝仕込む予定です。

そんなこんなで大変だったパフェまつりでしたが、お客さんからの評価はこれまで以上に大好評。

調子に乗って10月には「栗まつり」をする事にしたのですが、内容は例によってまだ決まっていません。

これもまた色々大変そうではありますが、十月に新人賞の締め切りはないですから、そんなにつらいことにはならないでしょう

・・・と、いいながら気がついた。栗のデザートには栗剥きがつきもの…。

例年の栗デザートでも結構大量の栗を剥かねばならないのに「まつり」とは…。

寝不足にはならないでしょうが、栗む筋にはキツいことになりそうです。




KURIKURI