? パフェ仕舞い

164号の当選番号は 050 051 126 160 192 です。

パフェ仕舞い


最近フェイスブックを見ると、福岡にいる中学時代の同級生たちが集まって食事会なんかをやっている姿をよく目にします。

懐かしい面々も今や年相応にオッサン化しているのですが、楽しそうにはしゃいでいる姿を見ると当時の思い出が色々とよみがえってきます。

そう、何も考えずアホを極めていたあの頃の。

中学時代の夏休み、ふと海水浴に行きたくなったのです。

しかし、当時は福岡県に住んでいたものの、内陸部だったので海水浴場に行くだけでも結構交通費がかかります。

一方、夏休みの中学生に余分なお金など一円だってありません。

しかし、地図を取り出して最寄りの海水浴場までの距離を測ると30キロほどしかないじゃないですか!

自転車なら二時間程で行けそうです。

海の家などを使わなければタダで海水浴が楽しめます。

今ならナノ秒のためらいもなく却下するようなアイデアですが、当時の私にはとてもいい考えに思えてしまったのです。

そこで早速友人二名を誘ったところ、類に呼ばれた友たちですから深く考えることもなく大賛成。翌日決行と相成りました。

弁当と水筒は持参。海の家を使わずにすむように海パン着用。

暑くなるまえに着くように早朝出発。

我ながら完璧な計画でした。

少なくとも行きは…。

地図で見る限り完全な平地だったはずの道に起伏があったり、定規で測ったよりも距離があったりしたため三時間近くかかりましたが、行きはほぼ計画通り志賀島海水浴場に到着。

この海水浴場は通りを挟んで外海の玄界灘と内海の博多湾が一度に楽しめるという全国でも珍しいスポットです。

お昼までは玄界灘の荒海で波と戯れ、午後は博多湾の静かな海でプカプカと漂っていたら、あっという間に帰る時間です。

さてここで誤算その一は潮。

泳いだ後は乾かせばそのまま服を着て帰れるだろうと思っていたのですが、潮を浴びた体は乾いてもベタベタします。

こんな状態で自転車をこいで汗にまみれたら、きっと全身にもずくを貼り付けたような不快感に襲われるに違いありません。

しかし、お金なんか一円も持ってきてませんから有料シャワーは使えません。

どこかに公共の水場はないかと探したら、道ばたの崖から清水が湧いてるじゃないですか。

車が通らない隙を突いてすっぽんぽんになって体を洗い、潮の問題は何とかクリアしました。

そして誤算その二は暑さ。

朝は涼しいうちに出発できても、帰りは暑い時間に帰るしかなっかたのです。

おかげで濡れた海パンはすぐに乾いたのですが、乾いたという実感もないうちに汗まみれになってしまいました。

そして誤算その三は疲れ。

朝は元気いっぱいでしたが、泳いだ後に元気なんか残っていません。

朝は気にもならなかった微かな起伏が、まるで砂丘越えをしているように感じられるほどペダルが重いのです。

そして誤算その四は逆箱根駅伝状態。

平地から出発する箱根駅伝では往路が主に登りで復路が下りですが、内陸から海に向かった場合、往路が下りで復路が登りです。

行きがけにヒャッホーと下った長い坂道は、帰りには心臓破りの地獄坂と化すのです。

そんなこんなで煮しめたボロ雑巾の如くヘロヘロに疲れ切って家にたどり着いたのは夜の八時過ぎ。

さんざんお説教を浴びたと思うのですが、それすら記憶にありません。

「家に帰るまでが遠足」と言いますが、行きのことだけでなく帰りのこともしっかり考えて行動しなければならないと思い知った中学生の夏でした。

そしてこれだけの体験をしたのですから、その後の人生は後先を考えた堅実な道を歩みそうなもの。

しかし、持って生まれた性格というものは、簡単には変わらないようです。

例えば今回のパフェ祭り。

毎年やっているのですから、何をすればどうなるかくらいはわかっているはずです。

しかし、試作を重ねているうちについ夢中になってしまうのです。

今やっている「ハイカラ和風パフェ」も、最初は「抹茶にチョコ寒天を合わせてみよう」としか考えていませんでした。

しかし、最初は出来損ないの水ようかんのような食感だったチョコ寒天が生チョコのような食感に作れるようになると欲が出たのです。

これにはもっと寒天らしい食感のミルク寒天を合わせよう・・・

それなら食感のアクセントに小豆のケーキも・・・

味のアクセントには甘夏なんかいいんじゃないかな・・・・

しっとりばかりじゃ飽きるからラスクなんかも添えてみよう。

そんなことをやったがために、冷蔵庫は様々なパフェ材料で奥が見えないほどぎっしり。

前のをどかさないと奥のが取れないために、何種類かのパフェ注文が同時に入った後には、もう何がどこに仕舞ってあるかさえも定かでなくなるのです。

次のパフェの試作をするときにはちゃんと先のことまで考え、「仕舞うまでがパフェ」と肝に銘じて作ることにしましょう。



KURIKURI