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ジャンプよさらば


ふと気がつけば年の瀬です。

「今年も色々大変じゃったのう」と縁側に腰を下ろして渋茶をすすりながら、若かりし頃の思い出に浸るのはまだ置いておいて、カウンターに腰掛けて珈琲を飲みつつこのエッセイのバックナンバーを読み返してみると、去年も結構大変だったようです。

今年は夏休みに入る前からパフェ祭りを始めて大変だったと思っていたら、去年も同じように早めに始めていましたし、栗まつりも去年から始めていたようです。

そして今年は小説の新人賞に応募したので締め切りに間に合わせるのが大変だったなぁと思っていたら、去年もやっぱり応募していました。

大変だったことはすぐに忘れてしまう性格なのですが、ここまで忘れてしまうとさすがに脳の老化が心配です。

しかし、よくよく比べてみるとパフェ祭りはほぼ同じようなものですが、栗まつりは今年の方が毎週新作を出している分大変そうです。

そして去年は小説だけの応募でしたが今年は懸賞論文にも応募しています。

その上厨房を改装し、持ち帰り用の新商品の開発にまで手を出しているのですから去年よりやっていることは多いのです。

大変だったなぁと思っていながら、より大変なことについ手を出してしまう。

この性格はどこからやって来たのかと、つらつら考えてみた結果、思い至ったのは「少年ジャンプ」。

中学校入学以来、大学卒業まで愛読していたこの漫画雑誌こそが諸悪の根源に他なりません。

強い相手を倒したらより強い相手が現れるというのはよくある話なのですが、ジャンプの場合そのパターンが極端なのです。

例えば有名なドラゴンボールも最初は世界一レベルの相手だったものが宇宙一の相手と戦い、勝利すると次は神の世界で修行して魔界の怪物と戦うのです。

ゴルゴ13が今でも地球人をターゲットとし、ドカベンがほぼ実在のプロ野球の世界で戦っているのと比べるとその差は一目瞭然。

こんな漫画ばかりを読んでいたから、大変なことを終わらせたらもっと大変なことをやらなければならないと思い込んでしまっているのでしょう。

来年からは愛読書を「パタリロ」にしてマンネリズムを極めるしかありません。

そんな話はさておいて、今月中に発売予定のお持ち帰り用ケーキの話をしましょう。

先月号でネタに詰まって京都に行く・・というところまでは書きました。

その京都で真っ先に行ったのは宇治の「辻利兵衛宇治本店」。

住宅地の中にある隠れ家的なお店ですが、隠れすぎててナビも当てになりません。

先に電車で来ていた娘の案内で何とかたどり着くことができたのですが、ナビだけならたどり着けなかったのではないかと思うほど。

さて、そんな隠密性に富んだお店ではありますが古民家を改築したと思われる店内はとても広くて落ち着いています。

そんな中でパフェやら色々食べたのですが、一番感動したのが「濃茶」。

一般的な薄茶(お薄)と違ってどろりと濃いのですが、苦みよりも遥かに旨味を強く感じ、何よりも香りが鮮烈です。

うちで使っている抹茶は製菓用と違って薄茶で使う本抹茶ですが、試しに同じくらいに濃く作ってみたら苦くて飲めたものではありませんでした。

十分においしいお茶を使っていると思っていただけに、上には上があるもんだと深く感心した次第です。 次に行ったのは一乗寺の「タンドレス」。

週に三日しか営業しておらず、行列必至の上に行列したからといって食べられるとは限らない幻系のお店です。

ですから我々も食べに行ったと言うよりもどんなお店なのかを見に行ったのですが、たまたまその時一人も並んでいなかったのです。

そこで店内に入ると満席ではありましたが、空けば次には入れるとのこと。

十分ほどで座ることができました。

ショーケースの中は残りわずかではありましたが、まだ選 ぶ余地あり。

選んだケーキ一つ一つが食べる時の温度にまで気を配ってあり、ケーキを極めるとはこのようなものかと深く感心した次第です。

ちなみに、私たちが注文した品を待っている間にケーキは全て売り切れ。

まさに間一髪というか、奇跡的に出会えたケーキです。

さて、そんなこんなで美味しいものに出会い、新しいケーキのヒントも十分に掴んだぞと意気軒昂として帰ってきたのですが、この原稿を書いている時点で全てができあがっているわけではありません。

美味しいものを食べすぎて、自分の中のハードルが上がってしまったのです。

十分に美味しいケーキができたぞと思っていたら、さらに美味しいものに打ちのめされる。またしてもジャンプの世界です。

しかし、このままジャンプの世界に突入してしまったら、宇宙一のケーキ職人と対決しなければならなくなってしまいます。

ここはまずジャンプの世界から卒業し、KURIKURIの世界の中で美味しいケーキを目指しましょう。

非日常の極上ではなく、日常の至福。お茶を飲みながらちょっとだけ贅沢な時間を過ごす。

そんなケーキがもう少しでできあがるはずです。

お楽しみに!



KURIKURI