188号の当選番号は 069 079 220 224 239  です。

熱の功名


当店では平日朝、パフェを注文頂くとお飲み物が200円引きになる「朝パフェ」というサービスを実施しています。
このため、特に今のような暑い時期には朝からパフェを注文頂くことも多いのですが、先日ちょっと変わったお客さんがやってきました。
開店早々にやって来て、紅茶パフェと紅茶を注文されたところまでは普通なのですが、なんと食べ終わるとすぐにオレンジレモンパフェも追加されたのです。
朝一番にパフェ二つ!
これまでもパフェを二つ注文された方は何人もいらっしゃいましたが、それは大抵午後にゆったりと時間をかけて食べられた方ばかり。
朝から矢継ぎ早の注文は流石に初めてだったのです。
とは言え熱心に写真を撮ったりメモをとりながら召し上がっていましたので、かなりのパフェ好きの方なのだろうと思っていたのですが、そんな単純な話ではありませんでした。
実は「斧屋」さんという東京のパフェ評論家の方で、愛知・京都遠征の目的地の一つとして寄って頂いたそうなのです。
さて、そんな話はさておいて、熱"い夏です。
普通の「暑い」じゃ表現しきれないこの暑さ。
仕方がないので漢字を変えた上に濁点を入れてみましたので、発音の際には「あ」と「つ」に濁点を入れて発音して頂きたい。
とにかく今年の暑さは尋常ではありません。
しかも梅雨が終わった瞬間に、スイッチを切り替えたがごとく真夏がやってくるという情緒のなさ。
40度を超える気温の中では、岩に染み入るはずの蝉の声も文字通りの虫の息。
こんな風情のない夏に芭蕉先生がご存命なら、一句ひねり出す前に熱中症に倒れてしまったことでしょう。
いくらデジタル時代とは言え、季節の変化くらいにはアナログ感覚を残しておいて欲しいところです。
そんな熱"い夏ではありますが、当店の冷房温度は少し高めです。
客席温度がだいたい28度になるように調節しているのですが、これは別に省エネのためではありません。
これはお客さんにゆっくり過ごして頂くため。
28度はちょっと動くと暑く感じる温度ですが、おしゃべりや読書をするには快適な温度なのです。
とは言え、話が弾みまくると若干暑く感じるかもしれません。
しかし、パフェを美味しく食べて頂くにはこれ以上下げるわけにはいかないのです。
会社員時代、あまりの暑さに耐えかねて飛び込んだ喫茶店で大きなかき氷を注文したところ、出来上がるまでに汗が冷え切ってしまい、かき氷を食べ終える頃には凍死寸前になってしまったことがあるのです。
とは言え、パフェをさらに美味しく食べて頂くためにと、いっそ冷房を切ってしまうわけにもいきません。
かつて38度を超える灼熱の伊勢で、間口を開け放した冷房のない赤福茶屋で赤福氷を食べた時、かき氷としては人生最高の美味しさを味わうことができました。
しかし、かき氷を一息にかき込んだ後、ヨメさんや娘が食べ終わるまでに水芸のごとく汗をかく羽目になったのです。
もし、40度を超える多治見で冷房を切れば、床にたまったお客さんの汗で金魚が飼える程になりかねません。
そんなわけで、設定温度は28度にしているのですが、やっぱりランチを食べるには少し暑いような気もします。
しかも当店のオススメは他では食べることのできない独特なソースを使った「焼きハヤシライス」です。
このアツアツでハフハフなランチを食べるとなると、働かずして額に汗をかくことになるでしょう。
しかし大丈夫!デザートにパフェを食べて頂ければ、ほどよく冷えて気分は高原リゾート♪
・・・などと書くと、結局パフェを食べて貰うために28度にしてるんじゃないかとの指摘もありそうですが、ゆっくり過ごして頂きたいというのもまた事実。
ここはお客さんの回転率で利益を上げる激安店ではありません。 美味しいものやいい香りでゆったりとした幸せな時間を過ごして頂くところなのです。
そのために気兼ねなく店にいられるように飲み終わった後でもカップをお下げすることはしませんし、極力外で待っているお客様を作らないようにしているのです。
さて、話を戻しましょう。
冒頭に書いたパフェ評論家の方は、何故当店に来られたのでしょう?
パフェ本の取材で愛知・京都遠征に来られたついでであることは間違いありませんが、ここは岐阜県。
愛知県にはまだまだパフェの美味しいお店がいっぱいあるハズです。
しかもこの方が紹介しているお店のほとんどはパフェ専門店だったりパティシエのいる大型のカフェです。
それに対し当店はパフェも作ってはいますが、専門のパティシエなんていない小さな喫茶店です。
たぶん、それは多治見が「熱"い街」だったからではないでしょうか。
7月下旬、多治見は何度も全国放送で取り上げられる程暑い日が続きました。
斧屋さんはそれを見て「メチャ暑い街で冷たいパフェを食べたらメチャ美味しいに違いない!」と思ったのではないでしょうか。
当店は、全国的には無名ですが「多治見 パフェ」で検索すればトップにきます。
「3年2組で俺のことを知らねえヤツはいないぜ」的なローカル有名ではありますが、多治見に限定すればそこそこの有名店ではあるのです。
そんなわけで、たぶん暑さのおかげで来て頂いたとおもうのですが、その後ツイッターで何度も取り上げて頂いたので、結構気に入ってもらえたようです。
もしかすると、斧屋さんが次に出版する本に当店のパフェが紹介されるかもしれません。
熱"いばかりでかなわんな、と思っていましたが、熱"さもたまには良いことがあるようです。



KURIKURI