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波平の自慢話


ごく一部マニアの間で使われている言葉に「Namihei Years Old」というものがあります。
ナミヘイとはあの磯野家の波平氏のことで、彼の年齢である五十四歳をさす用語です。
五十四歳の男性が、ど忘れや言い間違いなど加齢に伴うアレコレで気まずい雰囲気になった時に「俺って波平と同い年だからさぁ」と言えば場が和む。
この状況を学術的に分析して生まれたのが、前述の「Namihei Years Old」なのです。
・・・というのは真っ赤な嘘で、私が勝手に作り、流行らせようと目論んでいる造語です。
もし今Namihei Years Oldだったり、これからNamihei Years Oldを迎える方がいらっしゃれば、様々な気まずい場面で「波平と同い年だから」を積極的に使って頂きたい!
とは言え、私がこの台詞を使えるのはあと数ヶ月しかありません。
しかし、五十代に入ってからど忘れやらなんやらで頭の劣化を実感することが多いのもまた事実。
久しぶりに会った友人の名前が思い出せなかったどころか、毎日見ている芸能人の名前が思い出せないことなど日常茶飯事の有様です。
そしてこのど忘れなどの他に気になっているのが、決断に時間がかかるようになってしまったこと。
以前なら多少複雑なことであっても即座に決定できたことが、今ではなかなか決めることができないのです。
パフェ作りにおいても、二週間に一度の新作ですからのんびり悩んでいるヒマなどないはずなのですが、最近ではなかなか「これだ!」と決めることができません。
写真撮りまで済ませておきながら中身を変えてしまうこともしばしば。
新作を出す当日になって中身を変えたこともあるのです。
そのうち新作開始がずれ込んでしまうのではないかと心配です。
なんてオノレの劣化に悩んでいたら、面白い説を見つけました。
「ど忘れや言い間違いは劣化ではない」というのです。
人は歳を重ねるごとに知識や経験値が増し、行動の選択肢が増えた結果がど忘れや言い間違いに繋がっているのだそうです。
確かに子どもの頃を振り返ってみれば、今より知っている人名は少なかったはずです。
たとえば先日家庭教師の時に「陸奥宗光」という名前をど忘れしてしまい話を逸らして誤魔化しましたが、子どもの頃には陸奥という名字があることさえ知らなかったはずです。
そして名前に限らず、物の名前やその使い道などに関する記憶がどんどん増えているのです。
このように選択肢が多すぎるために目的の記憶にたどり着けなくなっている状態が「ど忘れ」だというのです。
また、決断に時間がかかるようになったのも選択肢が増えたからでしょう。
以前は作ることでできるアイスやケーキの数は限られていましたが、今はその気になれば両手両足の指の数どころか全身の関節を駆使しても数え切れない程作れます。
この選択肢の多さが決断の遅れを生んでしまっているのでしょう。
そんなわけで、自分が劣化していないという結論に至ったわけですが、ここで一つ困ったことになりました。
実は今年のパフェ祭りは「週に一回の新作」をやめるつもりで、その言い訳として自分の頭の劣化を使うつもりだったのです。
そしてこのエッセイも自虐ネタで笑いを取るつもりだったのですが、いつの間にやら劣化していないという結論に落ち着いてしまいました。
う~む。。。いいのか悪いのか。
ちなみに今年のパフェ祭りでは、二週に一回の新作パフェに加え「七月のパフェ」「八月のパフェ」「九月のパフェ」と三種類のパフェを出す予定です。
そして何故毎週をやめるかというと、実は去年のパフェ祭りの時に体力の限界を感じたからなのです。
去年は「パフェ本」に載ったこともあってお客さんが多かっただけでなく、一つ一つのパフェを決めるのに時間がかかるようになった上に、ほぼ毎日家庭教師も行っていたので寝る暇も無かったのです。
そのため秋口から体調を崩し、冬までずっと調子が戻りませんでした。
そこで今年は毎週新作を出すことをやめて、家庭教師も教え子の人数をセーブして体調維持に努めることにしたのです。
そんなわけで毎週新作の代わりにパフェの注文が多かった七月から九月までは通常の二週に一度の新作に加えて月替わりのパフェを加えることにしたのです。
まぁ手抜きと言えば手抜きなのですが、これによって新作の楽しみが減るわけではありません。
去年は七月十八日から八月いっぱいパフェ祭りをやったのですが、通常よりも増えた新作は三つだけ。
今年も増える新作はやっぱり三つですから、新作の楽しみは変わらないのです。
しかも、去年までのパターンなら全作食べるためには毎週来店する必要がありましたが、今年は一ヶ月続くパフェがあるので無理なくコンプリート可能です。
なんと、今回のパターンは私の身体のためだけでなく、お客さんにとってもメリットがあるのです。
当初は自分が楽するためだけに考えていたのが、結果としてお客さんのためにもなっている。これを年の功と言わずしてなんというのでしょう。
・・・と、自虐するつもりだったのが、いつの間にやら自慢話になってしまっています。
まぁこれも仕方のないことでしょう。
だって、俺って波平と同い年だからさぁ。。。



KURIKURI