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鍛えてボケる


秋です。
鍛え抜かれた栗ぬ筋が活躍する季節です。
長年このエッセイを愛読している方ならば「栗ぬ筋ではなく栗む筋では?」と思うかもしれません。
実は、去年から栗の使用量が大幅に増え、渋皮煮のために栗を剥いている時間が無くなり、蒸した栗を二つに切って中身をくり抜くようになったのです。
その結果、鍛えられる筋肉は栗を剥く「栗む筋」ではなく二つに切った栗から実をくり抜く「栗ぬ筋」になりました。
字面から見ればたった一文字「む」から「ぬ」に変わっただけ。同じウ段のマ行からナ行に変わったに過ぎません。
しかし、その違いは歴然。
丁寧に剥いていた頃は休日に六時間かけても3キロほどの栗しか処理できませんでしたが、くり抜くようになったら同じ時間で10キロは処理できるのです。
そして最近では、二つに切った栗を親指と人差し指で潰して実を押し出すという荒技を身につけたために更にスピードアップが図れているのです。
おかげで10月のパフェは栗三昧。
新栗の美味しさを目一杯楽しめる秋になったのです。
 
ところで、一文字違いといえば、最近フェイスブックでちょっと変わったバトルを楽しみました。
「桃とブドウのパフェ」を紹介した時のこと。
福岡にいるドラえもん好きの友人が「あああああ…(≧△≦)たべたい!」とコメントをくれたのです。
そこで「私もぜひ食べて欲しいので急遽どこでもドアを作ったのですが、どうもおかしい。。何故かやたらと小さいのです。。。どうやらどこにでも行けるドアを作るつもりが、どこにでも置けるドアを作ってしまったようです。。。」とコメントを返したのです。
「い」と「お」の一文字違いを使った会心の言葉ボケ。
我ながらよくできたわいとパソコンの前でふんぞり返っていたら「ちゃんと、どこででもあけれるドアですか⁈」とのコメント。
「あ」を使ってきたか、と感心したものの字余りですから私の完全勝利と思い「置けることを最重視して作ってしまったため、ノブをつける余地がなく開け閉めは非常に困難です」と深く考えることもなくコメントを返してしまったのです。
すると「そのドア、どこでもウケること請け合いです(´艸`)」との返信。
なんと「う」を使われてしまったのです。
残るア行は「え」のみ。私が東北人なら「どごでもえげるドア」と訛りボケで返すことは可能ですが、あいにく九州生まれで関東育ちの中部人、東北にはまるで縁がありません。
やむを得ず「どこでもウケるドアか・・・どこでも開けられないし、どこにも行けないけど、どこでもウケるしどこでも置けるからいいか。あとはどこでも「え」けないドアの開発が急がれるな。」と悔し紛れのコメントを返したのですが、作った言葉ボケの数は私が一個に対して相手が二個。
完敗です。
長年アホなエッセイを書き続け、言葉ボケには自信があったので、ゆくゆくは「令和一のボケ老人」の座を目指していたのですが、野にはまだまだ優れた言葉ボケの遣い手がいるようです。

  さて、冒頭で「鍛え抜かれた栗ぬ筋」と書きましたが、実は最近「栗ぬ筋」以外の筋肉も結構鍛えています。
中学生の頃までは超絶虚弱体質で、もしブルワーカーの広告漫画を実写化すれば絶対に貧弱少年の役が貰えそうな体格でした。
といっても日ペンの美子ちゃんを知らない世代の人にはわからないでしょうが、中三で握力12キロだったといえばその貧弱さがわかって頂けるでしょうか。
そんなアルファルファの如きひ弱な体格に嫌気がさして鍛えまくったのが高校時代。その結果、子どもキャンプの指導員をやっていた大学時代には、子どもを四・五人抱えたまま走り回れる「人間遊園地」として人気者になれるほどのパワーが身についたのです。
しかしその後、身についた筋肉を使う機会もなくなり、五十を過ぎた頃には「栗む筋」以外の筋肉がすっかり落ちてしまったのです。
そうなるともう身体を動かすことも億劫になり、ジジイに一直線です。
飛ばない豚でもただの豚でいられるように、鍛えない若者だってただの若者ですが、鍛えていないオッサンはただのジジイになってしまうのです(個人の意見です)。
そんなわけで五十を過ぎたあたりから筋トレをはじめたのですが、高校生の時のようにすんなりと鍛えられたわけではありません。
腕を鍛えれば肩を痛め、腹を鍛えれば腰を痛めとその進歩は蝸牛の如し。
それでも何とか筋肉は進歩し、前世が銀座のママさんと思えるほどお世辞上手の我が体組成系計は、私の身体年齢を「23歳」と表示するほど。
実際の筋力としては指でクルミが潰せた大学生の頃には遠く及ばないにせよ、栗を潰せる程度の力は得たのです。
このまま鍛えれば更に栗処理能力はアップし、近い将来和栗オンリーの栗三昧パフェが作れるようになるかもしれません。
しかしそうなってくると、栗を切る時間も惜しいもの。
何とかならないかと考えていたら、昔読んだ「空手バカ一代」という漫画に、空手の達人が湯飲みを指で突いて穴を開けるシーンがあったのを思い出しました。
このように栗を突いて穴を開ければ、いちいち栗を二つに切ることなく中身が取り出せそうです。 よし、これで次に鍛えるべき筋肉が決まりました。  
「栗む筋」「栗ぬ筋」に続いて鍛えるのは「栗つ筋」です。
(`ー´) ドヤッ!



KURIKURI