218号の当選番号は 017 093 094 103 195 です。

熱き心で


先月号のエッセイで『パフェの呼吸を極めてパフェ柱になる』といった感じのことを書いたのですが、鬼滅の刃の世界にパフェはちょっと不自然ではないかと気になっていました。
しかし、あの時のパフェが「お茶と苺のティラミスパフェ」だったからといって『お茶の呼吸』を極めてしまったら、立っているだけで縁起モノ扱いされてしまいそうですし*1、ただの一般人だからといって『人の呼吸』を極めてしまうと生き埋めにされてしまいそうです*2。
やはりなるならパフェ柱になるしかなかったのですが、あの時代にパフェがあるのか気になって調べてみました。
その結果、パフェはフランスで20世紀初頭頃から作られており、鬼殺隊のいた大正時代にパフェが日本に伝わっていてもおかしくないことが分かりました。
鬼殺隊の中には水や炎といった自然現象の呼吸だけでなく、恋の呼吸を極めて恋柱になった隊員もいたわけですから、パフェ柱を目指していた剣士がいた可能性もあるということです。
思いつきで書いたパフェ柱ではありますが、作中に出てきたエキストラ隊員の中にパフェの呼吸を使っていたものがいたかも、と思うのもなかなか楽しいものです。
(*1茶柱:お茶の茎。お茶の中で縦に浮かぶと縁起がいいとされる。 *2人柱:災害を避けるための生け贄として人を埋めること)
 
話は変わりますが、アマゾン川には川の左右が黒と白に分かれた状態で何十キロも流れているところがあります。
黒い部分はネグロ川という温かい川から流れてきた水で、白い部分はソリモンエス川というアンデスの雪解け水が流れる冷たい川から流れてきた水です。
こんな性質の違う水が合流してから何十キロも、土岐川ならここから河口までよりもっと先まで、二色に分かれたまま流れるというのですから不思議な気がします。
しかし、科学の世界では平行に流れる動きは層流と呼ばれるエネルギー損失の少ない流れになり、混じり合わないのが普通なのです。
ですから、ものを混ぜる時には乱流と呼ばれる渦を作る必要があり、この渦の作り方を研究してる人も少なくありません。
 
再び話は変わりますが、当店の窓側のテーブルが少し変わりました。
岐阜県にも緊急事態宣言が発令されたことを受けて、席数を少し減らすためにテーブルを二人がけにして向かい合う距離も少し広くしたのです。
どうせ広くするならもっと派手に1メートル以上あけたらいいじゃないかという意見もありそうですが、あまり広げると会話するために声が大きくなってしまうという問題があるのです。
夜の飲食が問題なのは、つい声が大きくなってしまうこと。
大きな声は大きな飛沫を生み、大きな飛沫はほんの少し吸い込むだけで感染してしまうリスクが高いのです。
そして飛沫さえ小さければ抜群の効果を発揮するのが当店の換気システム。
入り口のドアが常時ちょっと開いているだけなのですが、換気扇と併用することで人の出入りがなくても二十分ほどで店内の空気は入れ替わるのです。
ポイントはその時の空気の流れ。エアコンと二台のサーキュレーターによって空気の流れは乱され、いたる所で炎の呼吸肆ノ型「盛炎のうねり」のごとき渦を作っているのです。
まぁこれは大げさでしたが、とにかく生じた小さな飛沫は相手に届く前に渦の力で拡散し、濃度の高い状態を保つことはないのです。
ですので、大きな声を避け、おしゃべりタイムはマスクをつけていただければゆっくりと過ごしていただいても大丈夫だと思います。
さらに、出入りの際や人の触れたものに触れた後には、おしぼりは抗ウイルス仕様ですしあちこちにアルコールも置いてありますので、こまめに手指の消毒していただけるとよりいっそう安心です。
また、新しく作ったテーブルや寒気防止のための二重窓などは、急ごしらえで作ったので色々微妙に不具合があります。
ヒマをみて徐々に手直ししていくつもりですので、大きな気持ちで細かいところには目をつぶっていただけると嬉しいです。
 
さてさて、こんな話ばかりではしんみりしてしまいますので美味しい話をしましょう。
二月といえばバレンタイン。
当店も世間の流れに乗っかってバレンタインチョコを販売していますが、今年の新作は「贅沢フルーツショコラ」。
フルーツの入ったケーキといえば一般にドライフルーツが入ったものが多いのですが、これにはパート・ド・フリュイが入っているのです。
パート・ド・フリュイとは果汁を煮詰めてペクチンで固めたハードゼリー。
ドライフルーツと違ってみずみずしい食感と香りが楽しめるのです。
そしてもう一つは新作パフェ。
バレンタインパフェの上に乗っているアイスクリームは、金粉をちりばめた漆黒のチョコソースの下には自然の安らぎを感じる緑の抹茶アイス、そしてその中には情熱を感じるピンクの木苺アイスが入っているのです。
何やら哲学的な深い意味がありそうな組み合わせですが、美味しさと美しさを追求したらその組み合わせになっただけで深い意味はありません。
そしてグラスの真ん中には木苺のパート・ド・フリュイで作った真っ赤なハートが飾られて、その下にはダークな色彩のビターチョコアイス。
色々と思わせぶりな構成になっていますが、全ては美味しさのため。
めくるめく恋愛のように次々に現れる味わいで心を燃やし、全集中で恋の呼吸を極めて頂きたい!



KURIKURI