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自分を褒める


新年、あけましておめでとうございます。
 今年も、心の底からほっこりとできるお店を目指して頑張っていきますので、よろしくお願い致します。

 
いやぁ去年も様々な種類のパフェを作ったものです。
ざっと数えてその数三十余。
同じパフェを二度と作らないために新たな技法や素材にも色々挑戦したのですが、とりわけ記憶に残っているのが白あん。
我が最愛の和菓子である「千鳥饅頭」のさらさらと涼しげな口溶けを生み出している白あんを、なんで今まで使おうとしなかったのか!
え?千鳥饅頭をご存じない?
ならば一度お手持ちのカントリーマアムのパッケージを見て頂きたい。原材料に「白ねりあん」の文字がくっきりと刻印されているはずです。
このように意外な商品にも使われている白あんは、小豆由来のこしあんなどと違って風味は薄いのですが、その特徴は口溶け感。
千鳥饅頭のさらさら感やカントリーマアムのしっとり感を生み出す白あんは、味覚や嗅覚で味わう美味しさでは無く、触覚で味わう美味しさなのです。
パフェでは白あんをアイスとして使ったのですが、アイスクリームのコクをもちつつシャーベットのようにさらりと溶ける食感は他をもって代えがたい食材。
この食材を得たことで、去年はパフェに新しいベクトルが生まれたものと思います。
 
そして去年のエッセイでも様々な語彙を生み出したのですが、その中でもお気に入りが「自っ賛販売中」という言葉。
このエッセイをまとめたエッセイ本の売り文句として使ったのですが、なかなか日本人に向いた言葉だと思いませんか?
俺様気質の欧米人(偏見)と違って自慢するのが苦手な日本人は自分で作ったものを自分で売り出すのに「絶賛発売中」なんて大袈裟な表現は気が引けるもの。
かといって自画自賛発売中では語呂が悪いじゃ無いですか。
もし自分で作ったものを売る時に絶賛することに気が引けたなら、ゼヒ「自っ賛販売中」という言葉を使って頂きたい。
 
さらにもう一つお気に入りの造語は「献血鬼」。
年に十回以上献血に行っているからといって、その理由が「人の役に立つため」じゃあ善人だと思われちゃいそうですし「僕は献血マニアだから」では若干の変態感が漂います。
それに対して「オレって献血鬼だから」と言われてしまったら、これはもう仕方ないことだと納得するしか無いじゃないですか。
現在コロナの影響もあって献血量が不足しているそうですから、これを機に献血鬼の仲間入りをしてみませんか?
 
こうして長年エッセイを書いていて思うのが国語教育の大切さ。
若かりし頃は日本人に国語教育なんて無駄の極致と考えて、高校時代は授業の三分の二を寝て過ごしていたのですが、今頃になってその意義を痛感しています。
起きていた三分の一で読んでいた教科書は、その道のプロが選んだ文章ばかり。
そして同時に自分が本屋で選ぶなら決して買うことのないようなものばかり。
授業を聞いている感を出すためだけに読んでいた文章は、その後の読書の幅を広げるきっかけになり、結果として今新しい日本語を生み出していると思うのです。
まぁ生まれた直後に消えていくような儚い語彙に過ぎないのですが・・・。
 
さて、儚いといえば当店のパフェも儚いもの。
二週間しか作らないこのパフェはレシピさえも残っていませんから、お客さんにとってその間に食べるチャンスが無かったら二度と出会えない幻のパフェになるのです。
そして私にとっても、気になるのは次に作るパフェであって、以前に作ったパフェではありません。
過去に作ったパフェのことは我が無敵の忘却力によって綺麗に忘れ去られるほど儚きもの。
ただ、しばらく忘れられそうに無いのが「和のクリスマスパフェ」。
なぜ忘れられないかというと、その原価。
クリスマスツリーに見立てて作ったトップの部分に使った抹茶がめちゃめちゃ高かったのです。
抹茶には普段見かけるようなさらさらの「お薄」の他にドロドロの「お濃茶」というものがあるのですが、ドロドロに濃くしても美味しく飲める抹茶は恐ろしくお高いのです。
そして今回使った抹茶はその中でも高級な方で、店で出すなら一杯二千円はするところ。
何でそんな高級品を使ったかというと、クリスマスにふさわしい濃い緑色を出すため。
安い抹茶を沢山使って濃い緑を出すと渋苦くなってしまって全然美味しくないのです。
そんなわけでお高い抹茶をドバドバ使ったのですが、なんか分不相応な贅沢をしてしまったような感じがして、なかなか忘れられそうに無いのです。
 
さてさて、そんなお高いお濃茶ですが、次に使うのはバレンタインチョコ。
毎年恒例のお茶三昧チョコにはこのお茶を使った「お濃茶」とお薄用の抹茶を使った「抹茶」と自家焙煎焙じ茶を使った「焙じ茶」に今年は「煎茶」を加えた四種類の生チョコを入れる予定です。
そして今年の新作は「贅沢抹茶ショコラ」。
白あんと抹茶を練り込んだケーキに抹茶チョコをかけ、柚子などのドライフルーツやパート・ド・フリュイで飾り付けた和風のチョコケーキを作ろうと企んでいます。
他にも毎年恒例の生チョコや三種のチョコテリーヌに去年初登場した「贅沢フルーツショコラ」を作る予定です。
食べたら消えてしまう儚いものではありますが、店頭販売の他に通販でも自っ賛販売予定ですので、ゼヒゼヒご購入頂きたい!




KURIKURI