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完全に完成された


先日、ついに資生堂パーラーの「コンソメスープ」を頂いてまいりました。
前々から「あれはうまいぞ!」という噂は聞いていたのですが、そもそも資生堂パーラーに行く機会など滅多にありません。
行くとしてもお昼時ですからついランチを頼んでしまい、それには標準で他のスープが付いてくるのです。
しかもコンソメスープは、何一つ具が入つていないにもかかわらず昼マックならビッグマックセットにナゲットをつけられる程のお値段。
しかし友人が激推しする以上、いつかは食さねばなるまい。
と、いうわけでキヨミズバンジーの覚悟で注文したのですが、それはそれは素晴らしかった。
かつてバブルの頃に接待で、お数1個しか入つていないのに1600円もするお吸い物を頂いたことがあるのですが、このコンソメはそれに勝るとも劣らぬ美味しさ。
お吸い物の方がストラディヴァリウスのバイオリンソロとするとコチラはフルオーケストラのようなもの。
一点の曇りもない黄金色の液体は、なんの味かと聞かれても何一つ答えることができない程複雑な味でありながら、間違いな<美味しかったのです。

話は変わりますが、先月末に始まった「チェリーパイパフェ」には苦労しました。
たいていのパフェは試作に入る前から何らかの「美味しいイメージ」があるもの。
しかし私は未だかつて「美味しいチェリーパイ」を食べたことがないのです。
それどころかチェリーバイと名の付くものを食べたのも中学生の頃に一回だけ。
まだ三葉虫がいてもおかしくない程昔の話です。
そしてそのチェリーパイは、パイ生地の中にアメリカンチェリーのコンポートがみっちりと詰まつているアメリカンタイプのシンプルなもの。
パイを食べてると言うよりも、ひたすら甘いチェリーを食べて、たまにシトシトになってしまったパイ皮を舌体めに食べているといった感じだったのです。
それなのになぜ「チェリーパイパフェ」なんていう名前をつけたかというと、「チェリー」と付いた適当なパフェの名前が浮かばなかったから。
時期的にチェリーのパフェをすることは決まつていたのですが、ここ何年も「チョコとチェリー」と名前が付いたパフェを作つていたので他の名前をつける必要があったのです。
そして何となく美味しそうなこの名前をつけた後になって、美味しいチェリーパイを求めて名古屋に行ったのですが、まだ時期が早かったせいか手に入らず。
結局脳内シミュレーターをフル稼働させギリギリで美味しい組み合わせを見つけたのです。
 
さて、格好をつけて脳内シミュレーターと言いましたが、やってることは超原始的。
まずアメリカンチェリーの生とコンポートとコンフィチュールの味や食感を思いだし、それに今まで作つたことのあるソースやクリームやアイスクリームを総当たり戦の勢いで組み合わせていくのです。
そしてその勝者達で頂上決戦を行うのですが、その決勝戦会場に口休めのケーキやアクセント的に使うアイスクリームなどが多数乱入して<るのです。
頭の中には異形の者達が満ちあふれ、妖怪大戦争の如し。
仕事中はオーダーを間違えるし、夜には寝オチして悪夢にうなされる有様です。
 
そして苦労したもう一つの要因が、その一週間前に定番パフェの切り替えがあったこと。
定番パフェの一つである「KURIKURIパフェ」に使っていた和栗が底をついてしまったので、新しい定番パフェを作る必要があったのです。
この和栗は去年栗塚ができるレベルで大量に剥いたのを冷凍していて、次の栗が手に入る秋までもたせるつもりでした。 ところが思いの外好評で、ゴールデンウィークまでもつかも怪しくなつてしまったのです。
しかし、それでなくても忙しいGWに余分に新作パフェを考えられるような優秀な脳みそは持ち合わせていません。
そこで数量制限で何とか延命して、「初夏のレアチーズパフェ」と「チェリーパイパフェ」の狭間に新定番の「お茶パフェ」をもってきたのですが、結果として三週連続で新作パフェを作る羽目になってしまったのです。。。
とまぁこんな感じでドタバタと作り上げたのですが、仕上がりの方は万全です。生のチェリーにはキルシュ香るマスカルポーネクリームをあわせ、コンポートにはオレンジカスタードを、そしてコンフィチュールにはヨーグルトクリームを、そしてさらにコンポートをサワークリームと合わせてアイスクリームにと、チェリーの美味しさをとことん楽しめるパフエに仕上げました。
…と、よくよく見てみると使っている素材が結構「初夏のレアチーズパフェ」と被っています。
もちろん調合などは全く異なるのですが、どうやら私の脳内シミュレーターはフル稼働してるふりをして近い記憶ばかりからネタを拾つてきた模様。
今後は気をつけますので、今回は気がつかなかったことにして頂きたい。   ちなみにコンソメというのはフランス語で「完成された」という意味。
一方パフェは「完全な」を意味するパルフェから来ています。
様々な素材を組み合わせて元の味が分からない程複雑な味わいを生み出すコンソメと、様々な素材のもつ美味しさを引き出すパフェ。
全く異なる方向性でありながら目指すものは共に美味しさ。
いつか何の素材で作ったか分からないようなパフェを作ってみたい気もしますが…とりあえずは次回のパフェを全力で考えねばっ!




KURIKURI