Vol.5 2002.5.1 この号の当選番号は128と159です。
単純が好き
真理は単純を求める」と言ったのはロシアの作家ゴーリキーだっただろうか。
確かにアインュタインの求めた真理はe=mc2と極めてシンプルな式で表され、シッダールタが悟って仏陀となった真理は「色即是空、空即是色」と極めて単純な言葉に集約されています。
と、高尚に書き出してみたものの、今回の話はアイスクリームです。
KURIKURIのアイスクリームは調合が実にシンプルです。イチゴのアイスはイチゴとヨーグルトと生クリームが1:1:1ですし、紅茶のアイスも三種類の茶葉が1:1:1で入っています。
何故こんなにシンプルなのかというと・・・単に忙しいからなのです。
朝の厨房は戦争です。珈琲豆の焙煎やムースは秒単位の勝負ですし、ケーキものんびり作っていては食感が変わってしまいます。
そして全てを娘を保育園に連れて行く八時二十分までに終わらせなければならないのです。この一つ間違えば「オーマイガッ!」の状態ではSimple is
THE BEST! なのです。
まぁこんなに毎朝慌てなくてもすむように、もっと朝早く起きればいいのですが、凡人はそれが難しくて、いつもぎりぎりまで寝てしまうのです。
と、いうわけで単純を求めるのは真理だけではなく、凡夫もまた単純を求めるのです。
弁解:でもちゃんと単純な調合でおいしくなるように、生クリームの種類や茶葉の選定には十分に気を遣っているから・・・手抜きじゃないよ・・・たぶん・・・・。
繊維
綿花の繊維の長さを知っていますか?
高級といわれるエジプト綿で3〜4cm、普及品のアメリカ綿で2〜3cmと意外に短いのです。
私は、繊維というと絹やナイロンのように一本一本が長いものから出来ていると思いこんでいたものですから、この話を知った時、こんなに短いものからでも縒り合わせればあんなに長い糸が出来るのかと不思議な気がしました。
話は変わりますが、KURIKURIのマンゴーアイスを食べたことがありますか?
KURIKURIではあの南国果実特有のトロリとした食感を出すために、果肉をあまり細かくつぶさず、出来上がりの段階でも果肉の塊が残るようにして作っています。
最初の試作では裏ごしをして滑らかさを求めていたのですが、何か物足りない気がしたのです。
そこでスライスしたマンゴーを手でグシャッと潰しただけで混ぜて作ったのが今のアイスの原形になるのですが、この時意外なものを発見しました。
アイスができあがってアイスクリームマシンを止め、攪拌用の羽根をはずすと、なんとごつい麻糸が絡みついていたのです。
しかし、凧糸はともかく麻糸なんかは厨房にはありません。
まさか珈琲豆の袋から?と思いながらよく見ると、それはなんとマンゴーの繊維だったのです。
縦方向にスライスしただけのマンゴーの繊維は意外に長くて一本5cmほどもあるものもあり、これがマシンの回転で縒り合わされてごっつい糸になっていたのです。
以来、マンゴーはちゃんと5mm角ぐらいの賽の目に切ってから他の材料と混ぜる様にし、お客様の口に麻糸モドキが入らないようにしています・・・当然か・・・。
邪心:
デザート抽選券のくじ引き担当はウチの娘(五才)です。
一桁ずつ数が書いてある紙をひいて当選を決めるのですが、大人はつい感触なんかで選んでしまうので無邪気にくじ引きを楽しんでいる娘に任せることにしたのです。
しかし娘ももうじき知恵がついてくるはず、近い内に新しい抽選方法を考えなければ・・・・。