Vol.6  2002.6.1  この号の当選番号は010と092です。

正しい食べ方? 

石炭の採掘方法には、露天掘りといって地表に大きな穴を開けて上から掘り進む方法と、坑道堀りといってまず縦穴を掘って石炭の層に当たるとそこから横に掘り進んでいく方法があります。

日本では石炭層が深いところにあったため坑道堀りが主に行われていましたが、単純に上から掘り進む露天掘りに比べ落盤などが起こりやすいため大変危険な作業だったようです。

話は変わりますが、私は高校二年の頃から二十歳くらいまで異常なほどの食欲に支配されていました。

例えば朝食は毎朝玉子五個のスーパー目玉焼きに四枚切りのパン二枚を牛乳一リットルで流し込んでいたほどです。 

そんな状態ですから「食べ放題」とか「特大盛り」というフレーズには異常に弱く、大学時代はバイト代が入るとまずは食べ放題の店に飛び込んでいたものです。

そんなある日、大学近くの喫茶店に「マジでびっくり!パフェマウンテン!」という幟を発見したのです。

早速聞き込みを開始したところ、三人がかりでも食べきれなかっただの、130kgの巨漢で大食漢のO先輩が完食したものの翌日大学を休んだだのと、さすがに一人では何とも出来なさそうな代物で、しかも値段が五千円もするという事が判明しました。

当時は焼き肉の食べ放題でも千円以下という所もあった位ですからさすがに五千円は大金です。

しかし「マジでびっくり!」のフレーズには抗し難く、結局甘いもの系大食漢の友人を誘って二人で食べに行くことにしたのです。

まずは当日、引っ越し手伝いのバイトをいれてお腹をすかせると共に軍資金を手に入れ、そして二人で意気揚々と乗り込みパフェマウンテンを注文したのです。

待つこと十数分。

そのパフェがでてきたときには「マジでびっくり!」しました。

白とピンクのソフトクリームが充填された金魚鉢のような巨大なブランデーグラスには黄桃や真っ赤なチェリーが泳ぎ回り、その上を直径二十センチ近いスポンジケーキがふたをして、更にその上に赤や緑のアイスクリームやシュークリームにチョコレートケーキがバベルの塔のように積み重ねられ、頂上には冗談のように巨大なソフトクリームがとぐろを巻いた、高さ六十センチ以上はある化け物だったのです。

パフェの食べ方は一般的には露天掘り方式で食べるものす。

KURIKURI の紅茶のパフェもまずは紅茶のアイスを味わったらシフォンケーキとオレンジで口の中をさっぱりとさせた後、濃厚なバニラブランデーのアイスを食べて最後はさっぱりと甘みを抑えた紅茶のゼリーでしめるといった具合です。

しかしこの巨大パフェにその方法は不向きです。

ひたすらソフトクリームを食べて、次には生クリームで固められたチョコレートケーキを食べ続け・・・・では、どう考えても飽きそうです。

そこで我々は坑道堀り方式で縦方向に掘り進むことにしました。

縦方向に食べ進め、下のスポンジケーキまでいったらもう一度上から食べていく方法です。

これならばいろいろな味を次々に食べていくので飽きることはありません。

しかしこの方法には重大な欠陥があったのです。

何往復か食べ、さしものバベルの塔もだいぶ薄っぺらくなってきたので下のスポンジを食べ始めたその時・・・「やべぇ崩れるぞ!!」の声に前を見ると、微妙なバランスを保っていたパフェがシュークリームのあたりから崩れ始め、私の方に向かって傾いてきていたのです。

これで逃げれば良かったものを、つい押し戻そうとしたためにグラスまで倒してしまい、あたりは収拾がつかない惨状になってしまいました。

その後店内は店員さんと一緒に30分がかりできれいにしたものの、得体の知れない模様で染まったごわごわの服で、甘い香りを漂わせながら帰るのは相当に恥ずかしいものでした。

教訓:巨大パフェは落盤の危険があるので露天掘り方式で食べるのが正しい!


KURIKURI