Vol.11 2002.11.1
この号の当選番号は051と133と145です。
こいは甘い方が好き?
秋といえば・・・という書き出しもこれで三回目ですが、ともあれ秋といえばお芋の季節です。
これを書いている十月半ば過ぎの現在、スーパーの店先には「たった今、畑よりやって参りました!」といわんばかりの元気なサツマイモが山のように積まれ、価格では勝ち目のない松茸相手にお客さんの目を引こうとがんばっています。
しかしこの元気いっぱいのサツマイモ、KURIKURIの温かい「お芋とリンゴのケーキ」には少し向きません。
元気いっぱいのサツマイモでは、全粒粉をたっぷり使ったケーキの生地と馴染まず、生地やリンゴをさしおいて「おいどんは薩摩の芋でごわす」と主張してしまうのです。
そこでこのケーキに使うのは、ちょっと疲れのみえた十一月も半ば過ぎの、しかも出来ることなら鹿児島産の「ベニアズマ」。
これを弱火でじっくり一時間ほどかけて蒸すと、生地によ〜く馴染むねっとりとしたお芋に仕上がり、ケーキの中でほどよく調和するのです。
寒い時期限定のこのケーキ、見かけたら是非おためし下さい。
さて、お芋といえば今はケーキの材料とまず考えてしまうのですが、小学校時代の私にとってはもっぱら「釣りの餌」として活用していました。
当時は多摩川の近くに住んでいたのですがそれでも川までの電車賃が往復で60円ほどかかっていたので、少ない小遣いでやりくりしている身としては一袋50円もする市販の餌を買うような贅沢は滅多な事では出来ず、たいていはウチにあるものか現地の土の中にいるもので済ませていたのです。
そんなある日の夕方、翌日の釣りに備えて芋を蒸かしておこうと台所に行ったところ、母親がなにやら作っていました。
のぞき込んでみると、それは大学芋でした。
ナンと明日の釣りに使うはずのお芋が全て大学芋に使われてしまっていたのです。
泣いて抗議はしたものの「台所にあるもので名前が書いていないものは全て私のもの」という母の主張には勝てず、更に「魚だって大学芋を食べるかもしれないじゃないの」と説得され、結局あきらめてその大学芋を釣りに持っていく事にしたのです。
そして翌日、いつものポイントに子供用の一本300円なりの竹竿を担いで出かけ、釣りを始めました。
少し離れたところでは大人達がリールのついた投げ竿で30cm以上の大物を狙っているのですが、ちゃちな竹竿しか持っていない私はいつも10〜15cmの小物ばかりを釣っていました。
ところがその日はいつもと違いました。20cmクラスの大物?が次々と掛かるのです。
どうやら鯉はただ蒸かしただけのお芋よりも甘い大学芋の方が気に入ったみたいなのです。
亀の甲より年の功、親の意見も聞いてみるモンだと感心しながらも、次々掛かる大物に気をよくして、針や糸をより大物用にして更に大物を狙い始めたのです。
しかしこれが良くなかった。
いつもは小魚しか釣っていなかったので見逃してくれていた漁業組合のおじさんが「これだけ釣ったのなら入漁料を払って貰わなきゃな」と言って50円を徴収されて帰りの電車賃がなくなってしまった上、最後にかかった大物に竿をへし折られてしまったのです。
お小遣いを節約するつもりだったにもかかわらず余計な出費をしてしまい、たくさん魚が釣れたのに足取りは重く、家までの長い道のりをとぼとぼと歩いて帰りました。
今でも大学芋を見るとその時の思い出がよみがえり、ちょっと複雑な気分になります。
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