Vol.30 2005.6.1
この号の当選番号は023と096です。
味覚vsアルコール
六月となると世の中はもうすっかりと衣替えを済ませ、本格的な夏モードに入っている時期です。
KURIKURIでも本格的な夏に備え、珈琲や紅茶の氷のストックを増やしアイスメニューの注文増に備えています。
また、暑くなると苦みが美味しく感じられるため、珈琲豆の焙煎も煎りが少しだけ深くなり、ガトーショコラもチョコの配合が少し変わってきます。
さらに、去年から紅茶のアイスクリームの配合もかなり凝り始め、気温の予想に応じて微妙に配合を変え「その気温で最も美味しく感じられるブレンド」作りに熱中しています。
六月現在ではヌワラエリヤの配合が増えていますが、梅雨明けあたりからはダージリンの配合が増え、秋口からはウバの配合が増えていく予定です。
ただ、これも暫定的なもので「これは美味い!」と思えるものがあれば次々に変えていこうと思っています。
さて、これを読んで「そんな微妙な違いがわかるの?」と思った方もおられるかも知れませんが、人間の味覚というものは結構あなどれません。
先日、とある団体の依頼で「紅茶教室」を開きました。私の紅茶教室はいつも前半が紅茶の歴史や淹れ方についてのお話で、後半はケーキを食べながら紅茶の種類を当てる「闘茶」になります。
紅茶教室に参加される方は大抵、そこまで紅茶に詳しくない方ですから、ヌワラエリヤだとかキャンディなんていう紅茶は始めて口にする方が殆どです。
その方々が闘茶では私が自分の感覚で書いた「紅茶の特徴表」だけを頼りに紅茶の種類を当てていくわけですから、そうそう簡単に当たるはずはありません。
実際今のところ全問正解はいないのですが、それでも前回はダージリンの春摘みを夏摘みと間違えただけ、とかディンブラとアッサムを間違えただけなど微妙なところもあり、文章だけを頼りにして当てているとはとても思えないところもあるのです。
これがもし、前もって全ての種類を飲んでいたのなら、きっと沢山の全問正解者が出たことでしょう。
全問正解者には「デザートセット券」をお渡しいたしますので、味覚に自信のある方は是非挑戦してみてください。(紅茶教室は二十〜四十名程度のグループが対象で、参加費用はお一人千〜千二百円程度になります)
かくいう私も、食べ物のプロとしてそこそこ味覚には自信があるのですが、かつて痛恨のミスを犯してしまったことがあります。
あれは二十代後半、友人の結婚式の二次会でのことです。イベントで利き酒大会があったのです。
利き酒は中身が見えない容器に入ったお酒をストローで飲んで、三種類連続で当てれば抜けることができるのですが、言い換えると最低三種類は飲まなければならないのです。
私はかつてブランデーの効いたカスタードクリームが入ったシュークリーム一個でハイになった事があるくらいお酒に弱いので、このイベントは結構命がけでした。
一つ目は赤ワインだったためごく少量飲むだけで判り、二杯目もウイスキーというところまではすぐに判りました。
しかしそこからが問題でした。ウイスキーにはスコッチとバーボンがあったのです。
お酒が飲めない私の味覚ではスコッチとバーボンの区別がつきません、唯一知っているのは飲み込んだ後あがってくる香りがパンならばスコッチ、トウモロコシならばバーボンという事だけでした。
意を決して一口飲み込み、あがってきた香りは「トウモロコシ」。
見事正解して三つ目に進むことができました。三つ目は薬っぽい香りが特徴のジン。
ホンの数滴ですぐにわかったので、勢いよく手を挙げてこう答えました。
「ウォッカ!」
・・・すでに酔いが回り、脳は舌を置き去りにして遠い世界をさまよっていたのです。
その後どれだけ飲む羽目になり、何が起こったのか。
友人達は口をつぐみ、語ってはくれません。