Vol.33 2005.9.1
この号の当選番号は065と090です。
過ぎたるは
今月のデザートはたまごたっぷりのプリンアイスと焼きプリンの入ったプリンパフェから始まりますが、皆さんプリンはお好きでしょうか?
そして、子どもの頃にプッチンプリンを見ながら「お皿にのりきれないほど巨大なプリンにでっかいスプーンを突き立てて豪快に食い尽くしたい!!」と思ったことはないでしょうか?
実は私、中学校の頃にその野望に挑戦したことがあります。
それは確か、中二の夏休みの出来事です。
その日、友達の両親が出かけるという事でその子の家にもう一人の友達と泊まりに行きました。そこで発見したのが大量のプリンミックスの箱。
当時家庭で作るおやつが流行っており、プリンだけでなくゼリーやシャーベットなどの様々なインスタントミックスが売り出されていたのですが、それにしても異常な量があったのです。
友達にわけを聞くと、たまたま買ったプリンミックスが不良品だったので母親が製造元に厳重な抗議文と共に送りつけたところ、丁寧な詫び状と共に段ボールいっぱいのプリンミックスが送られてきたそうなのです。
そこで思いついたのが冒頭の巨大プリン。
友達にそのアイデアを話すと二人とも大いに乗り気になり、早速「巨大プリンプロジェクト」が始動したのです。
もっともプロジェクトといっても、たかがプリンミックス。
足りない牛乳を買ってくれば、後はでっかい鍋で牛乳を温めてプリンミックスを溶かすだけ。
できたプリン液をバスケットボールが丸洗いできそうなくらいのでっかいボウルに流し込み、冷やせば完成です。
しかし、一言に冷やすといってもそれが一番大変でした。
まずはシンクに水を張って冷凍庫にあるだけの氷と、ひっぺがした霜(昔の冷凍庫には結構分厚い霜が張っていたのです)を放り込んでボウルを冷やしたのですが、あっという間にぬるくなってしまいました。
次は冷蔵庫に入れたのですが、当時(二十五年以上昔)の冷蔵庫はまだまだ小さく、巨大ボウルを入れるためには中にしまってあるものを寄せ木細工の緻密さで詰め直す必要があったのです。
まぁその辺は無茶な中学生の手に掛かれば何とかなったのですが、冷え固まるには相当の時間がかかりました。
だいたい当時の冷蔵庫の冷却能力も低かったのでしょうが、三十分おきに冷蔵庫を全開にしては三人が頭をつっこんで固まっていないか確認していたわけですから、そのたびに相当温度も上がっていたことでしょう。
結局固まったのは夜中の三時。
夕方の四時頃に作り始めたことを考えるとほぼ半日がかりの大仕事でした。
そして仕上げはお皿にのせるだけ。
ふちに一周ぐるりと竹串を回したら、ボウルよりも一回り大きなお皿をかぶせ、エイヤっとばかりにひっくり返しました。
「ブモッ!」という鈍い音と共にプリンが皿に落ちる感触があり、後はボウルをどければ夢のプリンの完成です。
三人が注目する中、ボウルをさっと取り去るとそこには小山のようなプリンがプルンと一揺れし・・・・そして潰れていったのです。
プリンが固まっていなかったわけではありません。
ただ、プリンのプルンとした固さでは四キロ以上もの自重を支えることができなかったのです。
専門用語で自重圧壊という現象を、大学で学ぶ五年も前に体験したのです。
皆さんがもし、巨大プリン作りに挑戦したときには、固めた容器に入れたまま食べることをおすすめします。
そうでないと私のように泣きながら机の上に広がったプリンの破片を食べる羽目になってしまいますから。