Vol.34  2005.10.1  この号の当選番号は004と133です。

破壊と創造


秋の訪れと共に街には新作のデザートが目白押しです。そして私は職業柄、

それらのデザートをよく食べるのですが、その食べ方が一般の方とは少し違います。


ふつうはケーキを食べる時、例えば苺のショートケーキならばフォークで縦に切って表面のクリームとスポンジと中のクリームや苺を同時に味わいます。

それに対して私の場合、まずは一つ一つバラバラに味わうのです。


先日食べた栗のタルトも、まずは一番上のマロンペーストだけを慎重にすくい取って栗の種類や使っているお酒の種類などを細かく分析しながら味わい、底のタルト生地まで一つ一つバラバラにして食べていきました。

そして一通り食べ終わると、頭の中でその味や食感を組み合わせ、完成品の味わいを想像してからやっとまとめて味わったのです。


はたから見ると何とも美味しくなさそうな食べ方で、悲しい職業病のようにも思えます。


確かに食べ物をバラバラに味わうのはケーキ作りを始めてからの習慣なのですが、私の場合この「バラバラにする」という行為は子どもの頃から慣れ親しんだ行為でもあるのです。


私が小さい頃、「ドライバー」という工具の使い方を覚えて以来、私の持ち物は大抵一度はバラされる運命にありました。

おもちゃは言うに及ばず、時計やラジオなどあらゆるものを分解しては組み立てていたものです。

そして成長に伴って「はんだごて」なる工具の使い方を憶えると、バラすだけでなく「修理する」という 楽しみも加わり、様々なものが分解されました。


さすがに大人になってからはむやみに物をバラさなくなりましたが、それでも電化製品などが壊れると大抵一度は分解しています。

最近の電化製品はマイコンなどの電子部品を使っていることが多く、その部分が壊れるとさすがに手の打ちようもないのですが、大抵の故障は接触不良だったり可動部のきしみが原因なので結構修理に成功することも多いのです。

最近も店の食器洗浄機が壊れた時、メーカーの修理見積もりでは一万五千円以上はかかるといわれたものを、ネットオークションで激安のパーツを購入し、千円足らずで修理に成功しています。


しかし、いいことばかりではありません・


私は、バラすのは好きなのですが、組み立てるのは苦手なのです。

なぜか私が組み立て終わった後にはネジがいくつか余り、私の工具箱には出所不明のネジが大量に残されているのです。


先に書いた食器洗浄機も修理完了後には四つほどネジが余り、そのせいかフロントパネルがぐらついていますし、心なしか音も大きくなったような気がします。

また、何度も修理や改造を繰り返したパソコンはネジだけでなく間仕切りやハードディスクを固定する台座などの様々なパーツがガラクタ箱に取り残され、下手に移動させることもできない有様です。


さて、振り返ってみるとケーキをバラして食べるのは、美味しいデザートを作るため。


はたして、組み立て下手の私が組み立てたデザートは、ちゃんと美味しく組み上がっているのだろうか?

先日バラして修理したばかりのCDはすぐに壊れてしまったし・・・ちょっと不安・・・・。


KURIKURI