Vol.36 2005.12.1
この号の当選番号は021と0096です。
ハンドパワー
先月はヨメさんのおかげでケーキがおいしくなっているという話をしましたが、それだけだと思われるのも悔しいので今月は「私のおかげ」の話をしましょう。
ケーキをおいしくするには「素材のおいしさ」や、甘みや香りなどを決める「調合」、そして泡立ちや混合具合をケーキに合わせて調節する「ワザ」が大切なのは言うまでもありません。
しかしKURIKURIのケーキにはもう一つ大切な要素があります。
それは私のハンドパワーです。
同じ調合で同じになるように作っても、機械ばかりに頼るより私が実際に手を触れる「手作業」が入った方が確実においしくなるのです。
無論私は理系の人間であり、鉄腕アトムを白黒時代から愛し、科学特捜隊に入隊したいと本気で願っていた科学の子です。
だから手に触れたから美味しくなるなんてそう簡単には信じません。
しかし、手を怪我して手作業をやめた時に「カボチャのタルトのおいしさが落ちた」と指摘されたお客様は一人や二人ではないのです。
ミダス王のように手に触れたものを全て金に変えるならともかく、手作りの方がちょっと美味しくなるくらいの力なら信じてもいいような気がしませんか。
それに私は科学の子とはいえ、大槻教授やDr.猫柳田のように全てが科学で割り切れるとまでは信じていません。
なぜならばこの「おいしさハンドパワー」以外にも私は科学の力では説明できない力を持っているのです。
それは「蜂に刺される力」です。
蚊に刺されやすい体質ならあるでしょうが、アウトドア派でも養蜂家でもない一般市民がやたらと蜂に刺されるというのはあまりに非科学的な現象です。
しかし、どう考えても私は人よりも蜂に刺されやすいのです。
確かに幼少の頃、ミツバチを素手で捕まえたり茂みに飛び込んだボールと間違えてアシナガバチの巣をつかんで刺されたのは刺されやすいからというよりも愚かさ故の過ちでしょう。
しかし長じてからも靴下をはけば中に入り込んでいた蜂に刺され、雨合羽を着れば脇のあたりに巣を作っていたアシナガバチの集中砲火を浴び、バイクで走って首に何か当たったなと思えば胸まで真っ赤に腫れ上がり、また別の日は走行中に服の中に蜂が入り込んで上半身を無数に刺され、そして靴をはけば中にスズメバチが潜んでいて小指が親指大に腫れ上がるという体験は「蜂に刺される力」を持った人間以外には不可能なワザではないでしょうか。
人生マイナスがあれば必ずプラスがある。
こんな悲しい「力」を持っている以上、ちょっとぐらいものを美味しくする「力」があってもいいと思いませんか?
そしてこのパワーをフル注入した「KURIKURIのたまご」も販売再開です。
温めて召し上がっていただくケーキ故に冬季限定商品ですので、この機会にぜひご賞味下さい。
ついでにもう一つ、珈琲もおいしくなりました。
ブラジルサントスはとても香りのいい珈琲なのですが微かに残る苦みが苦手という方もいらっしゃいました。
そしてその苦みを解消する焙煎機がドイツで売り出されたのですが、あまりに高価で手がでません。そこで我が家の焙煎機を無理矢理改造し、サントス独特の苦みを和らげることに成功しました。
えっ、どうやって改造したのかですって?
それは私の「手力」です。