Vol.48 2006.12.1 この号の当選番号は003と090です。
聖なる夜の贈り物
いつの間にやらもう12月、街にクリスマスソングが溢れる時期がやってきました。
KURIKURI一家のクリスマスの定番はローストチキン。
この手のワイルドな料理は私・マスターが担当です。
丸ごとチキンを買ってきて、お腹の中に香味野菜やジャガイモをたっぷり詰めて凧糸で縫いあわせ、赤ワインと醤油とハチミツで作ったソースを塗りながらオーブンで焼くこと約一時間、芳ばしい香りとともに焼き上がりです。
このローストチキンのおいしさは香ばしく焼けた鶏肉もさることながら、お腹の中の野菜にあります。
鶏肉のエキスをたっぷり吸った野菜は言葉を忘れるほどおいしく、この時ばかりは楽しいクリスマスも沈黙に包まれます。
そして食後のケーキタイム。
これに定番はないのですが、今年は「栗のプリンケーキ」にするつもりです。
今年はおいしい栗を大量に頂いたおかげで年末年始も栗のパフェをデザートとしてお出しする事になっているのですが、少しくらいうちの分に回しても大丈夫なくらいの量が冷凍庫に眠っています。
きっととびきりのケーキができることでしょう。
さて、クリスマスと言えば思い出すのが会社員時代のクリスマス。
独身寮の私の部屋に男女十数人の後輩連中が集まって行った、すし詰めクリスマスパーティーです。
普段から毎週五・六人の後輩を呼んだ食事会を開いてはいたのですが、十人を超えるとさすがに圧巻です。
三日間かけて作ったオックステールのシチューは三分間で消滅し、それぞれが持ち寄ったフライドチキンやらコンビニ弁当やら寿司に刺身といった雑多の食料も三十分と保たずどこかに消えてなくなっていったのです。
普通ならこの辺で満腹で苦しむものや、妙な食い合わせで腹をこわすものがでそうなものですが、二十代の集団は底なしで無敵です。
誰かが持ち込んだポテトチップやポッキーで軽く胃を整えると、ここからが本番のケーキタイム。
真っ赤なラズベリーチーズケーキと深い緑の抹茶タルトを極細から特大までランダムに切り分けると「ケーキ争奪ゲーム大会」の始まりです。
ゲーム大会とは言ったものの、やったゲームは至って地味。
机の端から十円玉をはじき、向こうに落とさずギリギリでもう一端に近づけたものが勝ちになる「十円チキンレース」という単純なゲームです。
しかしゲームとは単純なほど燃えるもの。しかも勝った人から順に好きなのを好きなだけとっていいというルールにしたものだからみんな真剣です。
予選本戦と火花を散らし、最終勝者が決まるまで一時間近くも熱闘を繰り広げたのでした。
かくして私が会社を早退して作ったケーキは、ものの一分ほどで皆の胃に収まり(ビリにもちゃんとお裾分けがあったので)、楽しいクリスマス会は終わったのです。
しかし、よくよく考えてみると私の開く食事会やパーティーは、私が飲めないことや車で来る連中が多いこともあってアルコールが出ません。
にもかかわらず、二十歳を超えたいい大人達(しかも半数は三十路に近い)が異様なハイテンションで盛り上がったのは何故でしょう。
それはクリスマスの夜が特別だから。
サンタさんはよい子にしていた子ども達にはおもちゃを与え、よい子?にしていた大人達には楽しい夜を与えてくれるのです。
皆さんにも楽しいクリスマスが訪れますように。