Vol.55 2007.7 この号の当選番号は063と088です。
隊長!
巷で流行りのビリーズブートキャンプ。
先日テレビで見て初めてどんなものか知りました。
知り合いが一週間やってかなり引き締まったとか自慢していたので、どんなものかと思っていたのですが恐ろしくハード。
確かにこんな運動を一週間続けることができれば十分引き締まりそうですが、私には一週間どころか、十分も続ける体力はなさそうです。
しかし、今でこそハンドミキサーより重いものをもてないほどの青瓢箪ですが、高校から大学のころは無駄にマッチョな生活を送っていたものです。
朝は起きぬけに2キロのジョギングと家の前の坂道で10本ほどのダッシュ。
テレビを見ててもCM中はダンベルもって腹筋、夕食前には腕立て百回みたいにむやみなトレーニング生活を送っていました。
まぁ、この位は男にはよくある暴走行為なのですが、支える家族は大変です。
朝ごはんは卵5個のスーパー目玉焼きに牛乳一リットルにその他モロモロ。
晩御飯はおかずが山盛り。しかも困ったことに大食漢の癖に味覚は敏感。
冷麦なんかでも特売品を混ぜると即座に味が落ちたと文句を言うようなわがまま者でしたから家計の負担も大変なものだったのではないかと思います。
しかし何より問題なのは、このトレーニングに何の目的もないこと。
何かスポーツをやっていてそのためのトレーニングなら納得もできようものですが、ただの筋肉バカ。
ひたすら体力をつけることだけが目的という何の生産性もない代物だったのです。
まぁ始めた当初はあまりにも貧弱な体を何とかしたいという程度でしたから、使うダンベルも三キロくらいの小さなもので、あまり邪魔にもならず、家族への迷惑もそんなにたいしたものではなかったことと思います。
これが、ある程度筋肉がつくと無駄な体力は一般家庭にとってはた迷惑なものに変わってきます。
二十キロものダンベルや得体の知れないトレーニング器機が居間に転がり、部屋には百キロ近いバーベルセット。
早朝夜間には「フンッフンッ」と謎の声に不気味な足音。
むやみに重いバーベルは一度落として床の根太を折り、引越しの際に友達に譲るときには庭で落として池のコンクリートにヒビを入れる始末です。
これに前記の食費の問題が加わると、実家にかけた損害は計り知れません。
しかもそれだけの損害をかけておきながら、ブームが去った今はむやみに作った筋肉はどこにも見当たりません。
ではまったくの無駄だったのか。
いやいや神様はそこまでの無駄を許しません。
むやみについた筋肉が引き起こす無駄な食欲は、バブル絶頂期に社会人になったという幸運も手伝って、やたらめったらとおいしいものを食べまくることができたのです。
しかも入社当初から三十過ぎに見られたというおっさん顔と、幸運にも任された高額な研究器機の選定という仕事柄もあって、あちこちで接待三昧。その上私はお酒が飲めないものだから、先方は気を使っておいしい料理の店を選んでくれることも多かったのです。
こうして食べまくったおかげで、今の味覚が生まれ、KURIKURIの料理へと生かすことができているのだと思います。
ただ、筋肉の落ちた今はほんとに少食。
たぶんフルコースの料理は食べ切れません。
時々味覚を磨くためにおいしいものを食べに行くのですが、量の多いお店は避けてしまう情けなさ。
このままではおいしさの質を落としかねません。
やっぱり、ビリー隊長の世話になるか…