Vol.73 2009.1この号の当選番号は023と058と092と109と169です。


小心者の太っ腹

 

新年、明けましておめでとうございます

 
今年も精一杯「美味しさ」と「くつろぎ」を追求していきますので、よろしくお願いいたします。

 
と、新年の決意を新たにしたところで去年を振り返ってみると・・・・・お、覚えていない・・・

 
子供の頃はやたらを過去を引きずってウジウジしていたのですが、歳を重ねるに従ってだんだん過去を振り返ることがなくなり、最近ではきれいさっぱり過去のことを忘れています。

 
過去を振り返らないといえばかっこいいのですが、これは単なる健忘症というヤツでしょう。

 
そんなわけで過去のことはすっかり忘れているのですが、忘れようにも忘れられないのがハラの肉。

 
大学時代から数えること四半世紀、不動を誇っていたウエストサイズが去年ついにワンサイズアップしたのです。

しかも、かつては男物の一番細いサイズがベルトなしではずり落ちていたのに、今ではその一つ上のサイズがベルト無しではけてしまうのです。


なぜそうなってしまったかと言えば、やっぱりそれはチョコのせい。


思い起こせば去年の後半はチョコに明け暮れていました。

このエッセイで振り返ってみても7月8月11月12月とチョコネタばかり。

半年で十s単位のチョコを食べたのは過去最高記録に間違いありません。


で、なぜそこまで食べてしまったのかというと、それはたぶん気が小さいから。

中学時代、自動販売機で拾ってしまった百円玉を、どうしてもネコババできず翌日こっそり
自販機に返しに行ったほどの小心者。

自信作として売り出した生チョコが本当にそこまで美味しいのか気になって仕方がないのです。


そんなわけで「売り出そうとかなぁ」と考え始めてからは他のチョコが気になって気になって・・と食べた結果、やっぱりウチの生チョコは美味しいんだという自信と・・・・ハラ周りの肉がついたのです。


で、そこまで自信をもって売り始めたのですが、やっぱりよそのチョコが気になるので、結局チョコチョコと食べ歩き、年末も名古屋までチョコを食べに行ってきました。


名古屋といっても名駅近くは夏に行っているので(詳しくは店内バックナンバー8月号「ちょこまか論」で)その日一番の目的地は栄松坂屋にあるベルギー王室御用達のヴィタメール。

当店でメインに使っているチョコはベルギー産ですし、かつて東京でやたらと美味しいショコラショーを飲んだのは同じくベルギー王室御用達のガレーでしたから、いやがうえにも期待が高まります。


そこで注文したのもやっぱりショコラショー。

ちなみにショコラショーは、単にココアの意味でも使いますが、ココアバターを絞ったあとのココアはいわば「おから」のようなもの、本格的な所ではちゃんとチョコレートを溶かして作るので香りの膨らみが違います(ただ値段の方もそれなりに膨らむのですが)。

ヴィタメールのショコラショーも店員さんの気配を感じる前に、ふわりと香りが届きました。


そして、その豊かな香りを楽しみながら店名を冠したチョコレートを頂いたのですが、これは私には少しお酒の香りがきつすぎました。

チョコの香りを楽しむ前にお酒の香りが鼻にきてしまうのです。

まぁこれは私が極端にお酒に弱いからだけなので(詳しくは12月号「酒の香りと恋の味」で)、チョコレートとしては「さすが王室御用達」と唸らせるほど美味しいものでした。


そしてその後はあちこちのチョコを試食したりしたのですが、それを上回るほどのものはなく「やっぱりウチのチョコは美味しいじゃん」と安心して帰ってきたのですが・・・・家に帰り、お土産に買ってきたヴィタメールの「純生チョコ」を食べると、目からウロコが飛び出しました。 


お酒をまったく使っていないこの生チョコ、口に入れた瞬間は香りが弱いなと思うのですが、驚くほどに強く余韻が残るのです。

秘密は多分バター。

味にコクを加えるだけでなく、口解けを微妙にコントロールしているのだと思います。

お酒を使わなくても、こんな手段で美味しさを引き出せるとは!


生チョコの奥義を極めたと思ったら、まだまだ深いチョコの道。

ハラの肉はまだまだ増えそうです。


KURIKURI