Vol.90 20010.6 この号の当選番号は013と029と071と149と162です。 

実りのマンゴー

君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね〜♪なんて曲がはやったのは今から四半世紀前。

私が大学生の頃の話です。

しかしこんな歌がはやっていながら、当時は1ドル250円もした時代、こんなトロピカルフルーツはなかなか庶民の口に入らなかったのです。


それだけに初めてキウイを食べた時に感じた「毛むくじゃらの外見なのにこんなに爽やかな味なんて反則だ」という驚きや、完熟したパパイヤを食べた瞬間に「これ腐ってるじゃない?」と思って吐き出したことなどを鮮明に覚えています。

ただ、マンゴーだけは初めて食べた時のことは鮮明に覚えているにもかかわらず、その味わいが全く思い出せないのです。


初めて食べたのは、とある高級中華料理のお店。家庭教師の教え子の合格祝いの時のことでした。


教え始めたときには周囲の誰もが合格できると思わず、そして本人も途中で諦めてストライキを起こしたにもかかわらず、希望の大学に見事合格。

一人娘の快挙にご両親の喜びもハンパなく、料理の注文が恐ろしく豪快だったのです。

たった四人のテーブルに溢れんばかりに並ぶ料理の数々。

ひとつの皿を死に物狂いで平らげたかと思うと、次の瞬間には新しい料理が差し出され、まるで中華のわんこそば!!っていうか、もう格闘技の世界です。

口に押し込み→無理やり飲み込み→力を込めて胃袋を圧縮→口に押し込み→・・・・の無限ループを繰り返し、何とかすべての料理を完食し「ヨッシャ〜!」と勝利の雄たけびを心の中であげた次の瞬間。


「じゃあそろそろデザートにしましょうか」orz。。。。。

 
で、ここでマンゴーを食べたんだ、と思われるかもしれませんが、中華料理はそんな甘いものではありません。ゴマをまぶした揚げ団子に桃形の饅頭に杏仁豆腐と続き、やっと最後がマンゴーだったのです。

花切りにされた美しいマンゴーは、今で言うなら宮崎マンゴーのような高級品。

食べないわけにはいきませんが、おなかは破裂寸前。

食べたことは間違いないのですが、どうやって飲み込んだのかさえ今では思い出す事ができないのです。


さて、そんなマンゴーも今ではコンビニデザートにもなるほどポピュラーな果物。

KURIKURIでも今月は「トロピカルパフェ」や「チョコとマンゴーのクレープ」と多用しています。


ちなみに今回使用しているマンゴーは、すべてタイやインドからの輸入品。

かつて頂き物のおすそ分けで「太陽のマンゴー」を食べたことがあるのですが、印象に残っているのは味よりもその値段。

一個で四千円以上もするということでしたので、「この一口で500円もするんだぁ」と思うと、まともに味わってはいられません。

とても美味しかったのは事実なんですが、その美味しさの何割かは「こんなに高いものは美味しいに違いない」という小市民的な思い込み(ビンボー性とも言う)があったのもまた事実。


そんな訳で国産品には手が出なかったのですが、輸入モノにも美味しいマンゴーはたくさんあります。

アイスクリームに使っているインド産のアルフォンソマンゴーは、マンゴーの王様と称されるほど品のある甘い香りがありますし、カットして生で入っているタイ産のアップルマンゴーはフィリピン産のペリカンマンゴーに比べて甘みが強く滑らかにとろけます。

そしておまけはヨーグルトの中のマンゴー。

これはドライフルーツにしたマンゴーをヨーグルトで戻したものなんですが、生のものとは一味違う複雑な美味しさが生まれています。

ただ、たくさん入れるとヨーグルトがコテコテになってしまうので少ししか入っていません(予算の都合といううわさも少しありますが)。

見つけたらすぐに飲み込まずじっくりと味わってください。


ちなみのこのマンゴーという植物。果実はとても甘い香りがするのですが、その花はもの凄い腐臭がするそうです。

蜂が少ない南国で、蜂の代わりに蝿に花粉を運んでもらおうと進化した結果だそうですが、日本で栽培が始まった初期の頃はこの腐臭のために木を切り倒してしまった農家もあったと言われています。


家庭教師先の女の子も途中で諦めてしまっていたなら合格の果実は得られなかったでしょうから、途中がどんな状態であろうと先に希望を持つことが大切だということなのでしょう。


と、いうわけで人生は長いのですから、「太っちゃうかも」なんて言ってデザートを諦めないでください。

ランチを何人前も食べるなんて無茶さえしなければ、きっと将来美味しい思い出として心に実を結びますから・・・。


KURIKURI