118号の当選番号は 009 081 113 165 223 です。
頑張れポロタン!
栗きんとんと言えば、この辺ではごく常識として裏ごしした栗を固めた和菓子のことですが、世間一般では芋きんとんに栗の甘露煮が入っているものを指します。
ですから、私が就職して九州からここに来た時、アチラコチラにある「栗きんとん」の看板を見た時に想像していたのも「栗入り芋きんとん」。
その後もしばらくそのまま誤解していたのですが、あるとき九州から来た友人を馬籠に連れて行き「ここらの名物は栗きんとんらしいぜ」とか言いながら、茶店で注文すると出てきたのは予想と違う黄金色の塊。
「へぇ〜これが栗きんとんなんだ」と口に運んだ瞬間に目から吹っ飛んだ鱗が、今も周回軌道を回り続けているほど驚きました。
「く・・・栗ってこんなに美味しいものだったんだ」
それまで食べた栗といえば、甘露煮か栗ご飯に入っているものか天津甘栗。
どれも美味しいと思っていたのですが、栗きんとんの美味しさはケタ違い。
先ほど理系学生しか使わないような表現で示した驚きは、決して大袈裟なものではありません。(ちなみに周回軌道とは、人工衛星などが地球重力と吊り合って回っている軌道のことで、必要な初速度はだいたいマッハ23!)
さて、そんな栗ですが世界にはどのくらいの種類があるかご存知でしょうか?
細かな品種はさておいて、系統としてはヨーロッパ種と中国種と日本種とアメリカ種の四系統のみ。
モンブランなどによく使われているのはほどんどがイタリア産かフランス産のヨーロッパ種。
特徴としては日本種よりも香りが弱い代わりに渋みや苦味があるため味わい深く、ペーストにしてお菓子に使われることが多いようです。
中国種は果肉が硬いためお菓子には向きませんが、甘みが強いため焼き栗として主に使われています。
また、アメリカ種は日本種に次いで香りが強い品種らしいのですが1900年頃に胴枯病の大流行でほぼ全滅し、現在商業的に栽培されているのは日本種や中国種との交雑種がほとんどだそうです。
ちなみに日本種の特徴は、その香りの強さとホックリとした食感。
ヨーロッパ種はその香りの弱さから、殆どの場合バニラなど香料を加えて加工されますし、マロングラッセはひと粒ずつ包んで売られるほどモロモロと崩れやすい食感です。
そして中国種は、天津甘栗でわかるようにねっとりと甘みが強く、殻をむいて袋売りに出来るほど硬い食感を持っています。
また、アメリカ種はほとんど出回っていないのですが、今回入手したチリ産のものはヨーロッパ種に近い味わいを持ちつつ、コルクを甘くしたような香りがありました。
このように栗も系統によって様々な味わいがあるのですが、それをいっぺんに味わえるのが「栗栗パフェ」。
一番上のアイスクリームは、ヨーロッパ種の栗と日本種の栗。
真ん中には天津甘栗がゴロゴロと入っていて、ミルクチョコアイスの下にはチリ産の栗で作った栗ムース。
世の中栗デザートは数あれど、全系統の栗を一度に味わえるデザートはめったにないと思います。
ちなみに、日本種の栗にはもうひとつ他の系統の栗にはない特徴があります。
それは渋皮。
他の系統は渋皮と身の間に結着物質がないために、天津甘栗のように殻をむくだけで渋皮もとれるのですが、日本種だけはそうは行かないのです。
お陰で渋皮煮という、香り高く味わい深い栗菓子も作れるのですが、一般的には渋皮までも丁寧に剥く必要があります。
この工程があるためにどうしてもコストが高くなり、洋菓子界での栗の使用が限られてしまっているのです。
しかし日本には、縄文時代から栗を栽培し続けているという栗栽培8000年のノウハウがあります。
なんと日本種でありながら、渋皮がポロリと剥ける「ぽろたん」という品種の栗ができたとのこと。
ネーミングはなんとも軽いノリなのですが、これが栗業界に与えるインパクトは軽くありません。
まだ量産はされていませんが、一般に出回るようになれば和栗も甘栗のようにポロポロと殻剥きができるようになるのです。
そうなると、私も栗む筋の筋肉痛に悩まされることなく栗のデザートが作れるようになるので、今よりもっと栗沢山のデザートが食べられるようになることでしょう。
美味しいデザートのためにも、頑張れポロタン!