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パフェをパクリ

先月夏休みを頂いて、行ってきたのは京都。

このエッセイの愛読者なら深いため息と共に「またか・・・」という文字が走馬燈のごとく脳内を駆け巡るところでしょうが、事実なので仕方ありません。

またしても京都なのです。

さて今回の京都旅行、いつもなら泊まりがけで行くところなのですが諸般の事情により日帰りの強行軍となりました。

のんびりとした日程ならば、老松とか鍵善良房とか確実に美味しい店に立ち寄るところですが、そんな余裕はありません。

京都の甘味処は11時開店の店が多いのですが、一軒でも多くのお店で食べるためにガイドブックに透かしができるほどにめくり倒し、ネット情報とオノレの勘の限りを尽くして決めたのが、朝の九時から営業している一乗寺の中谷というお店。

一乗寺といえば、ひらがなで書いてもローマ字で書いても東京の吉祥寺と一字違いでよく似ているのですが、老若男女でごった返す吉祥寺と違ってこちらは閑静な住宅街。

お寺と見まごうばかりの一軒家があったり、道行く老婦人がやたらと凝ったデザインの日傘をさしていたりするところから察すると、たぶん高級住宅街だと思います。

中谷はそんな中にあるこぢんまりとした老舗和菓子店なのですが、お店の中に入るとちょっと意外な光景が・・・。

ドドンと宮本武蔵の絵があるのはゆかりの地なのでいいのですが、老舗和菓子店でありながら洋菓子が多い・・・。

ショーケースの中はロールケーキだのパイだのティラミスだのと、洋菓子のオンパレード。

しかしよくよく見ると、ロールケーキにはあんこやわらび餅が入っているし、大福パイだし、絹ごし緑茶てぃらみすだし、洋菓子と言うには余りにも和菓子な洋菓子ばかりです(意味不明)。

さて、そんな和洋折衷菓子のお店ですが、店内はしっとりと落ち着いた純和風の雰囲気。

食事なども出来る席が左手にあるのですが、南蛮渡来のテーブル席ながらも枯山水のごとく静かな佇まいを感じさせます。

まぁ、これは朝一番で貸し切り状態だったから言えるのでしょうが・・・。

ともあれ手入れの行き届いたテーブル席について迷うことしばし。

何せ、ここで食べ過ぎては次が食べられなくなってしまいますから、慎重に選ばなくてはなりません。

そして、驚いたのがそのお値段。

ちゃんとした材料を使って店内で調理したとおぼしきパフェが950円!!祇園や嵐山でこのレベルなら1300円は超えるはず!

「なんちゅう良心的な値段なんだ」と感涙に咽びつつ、結局選んだのは私がその「中谷パフェ」であと二人が「わらび餅パフェ」と「緑茶てぃらみす+抹茶」で計三種類。

焙じ茶を使った和風チャイにもかなり心惹かれたのですが、焙じ茶そのものでさえまだ修行中の身なので、変化球は後回しにすることにしたのです。

さて、運ばれてきたのを見てまず驚いたのがその大きさ。

値段が値段ですから、もしかしたら特撮技術の粋を尽くして小さなパフェを大きく見せかけているのではないかと危惧していたのですが、それは杞憂でした。

大きなグラスに入っていたのは、名物の丁稚羊羹に豆腐羊羹に豆乳プリンにほうじ茶ゼリーに白玉にあられに抹茶アイス。

和のテイストに洋の技術を加えた、まさに現代日本らしいパフェと言えるでしょう。

そしてその一つ一つがまた美味しい!

甘みは控えめなのですが、それぞれの食感が独特で、丁稚羊羹は正統派の田舎羊羹なのですが、豆腐羊羹は羊羹というよりゼリーのようであり、豆乳プリンはプリンというよりとろみのある豆腐のようであり、焙じ茶ゼリーは粘り腰のある寒天といった言った感じで、一口食べるごとに新しい美味しさが生まれるのです。

さて、ここまで読んで気づいた方は気づかれたかもしれませんが、先日のパフェ祭りでやっていた「京抹茶パフェ」は、かなりこの中谷パフェの影響を受けています。

豆乳プリンに田舎風羊羹に焙じ茶寒天の組み合わせは今回の京都旅行がなければ生まれなかったことでしょう。

ただ、たった一週間の準備期間しかなかったので一つ一つの完成度は中谷パフェに負けてます。

そこを何とか負けない美味しさにしようと工夫したしたのが「きなこ」。

香ばしい黒豆きなこをアイスやパウンドケーキにすることで香りや食感のアクセントをつけ、トータルとしてはそんなに遜色ない仕上がりにしたつもりです。

そして、今月後半にやる予定の「秋の和風プレート」もこの中谷のパフェを参考にして、独自のデザートに仕上げる予定なんですが、果たしてどんな仕上がりになることやら。

さて、今回は旅行のことはほとんど書けませんでしたが、中谷の他にも色々美味しい物を食べてきたので、これからのデザートやランチに活かしていこうと思います(これを世間ではパクリとも言うのですが・・・)。

KURIKURI