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愛の土鍋
二月といえば泣く子も笑うバレンタイン。
毎年年の瀬が迫ると「バレンタイン」の文字が脳内に占める割合が増え、松が明ける頃には「バレンタイン」の文字が額から浮き出すほどチョコのことを考える毎日。
なんてことは言わずと知れた嘘八百ですが、年末年始はいつも脳みそのかなりの部分を使ってバレンタインで売り出すチョコを考えているのは事実です。
とはいえ今回はあまり考える必要はありませんでした。
なぜなら去年の秋口あたりですでに「チョコのテリーヌ」を出すと決めていたから。
きっかけはテレビで見かけたホワイトチョコで作る「抹茶のテリーヌ」で、放送直後に通販で買おうとするもネットはつながらず、翌日やっとつながったかと思うと「注文多数のためしばらく対応できません」との事。
そこでやむを得ずテレビでやっていた製作工程をヒントに試行錯誤する事しばし。
その結果できたのが9月にやった「秋の和風プレート」の端っこに乗っていた抹茶のテリーヌです。
これは本人的にも大満足の出来でしたし、お客様の評判もよかったので、これをバレンタインの目玉にすることを決めたのです。
そしてホワイトチョコとはいえ抹茶のテリーヌだけではバレンタインっぽくないので普通のチョコのテリーヌを二種類作ることに決め、贈り物用にちょうどいいサイズの小さな焼き型を購入して準備万端。
例年になく余裕でバレンタインの準備が出来たのです。
しかし世の中そんなに甘くはありません。年が明けて試作を始めてみると厄介なことが発覚したのです。
「秋の和風プレート」で使った抹茶のテリーヌはパウンドケーキの型で焼いていたのですが、これと同じものを小さな型で作ると美味しく焼けないのです。
焼成温度や時間を変えてみたのですが、どうしても縁の部分が美味しくないのです。
普通サイズの食パンと五センチ角くらいの小さな食パンを想像してもらうとわかりやすいと思うのですが、大きな型で焼いた時にはごく一部だったので気にならなかったミミの部分が、小さな型で焼くと気にせずにはいられないほど大きな割合を占めてしまうのです。
しかしもう、他のに変えて試作が出来るほどの時間は残されていません。
何とか小さな型で美味しく作る方法はないかと、巨大重箱の隅をミクロの針でつつき倒す意気込みでネットを検索しまくりました。
抹茶のテリーヌの情報はネット上でもほとんど出回っていないので、普通のチョコのテリーヌにまで捜索範囲を広げて探した結果、何とか使えそうな方法が見つかったのです。
普通ならここで万歳三唱して盛り上がるべき所なのですが、素直に喜べないことが一つ。
それは結構手間がかかること。普通お菓子作りと言えば、材料を混ぜ合わせてオーブンで焼いたりカスタードのように鍋で火にかけて熱を通して作るものですが、この方法は湯煎で温めて熱を通すのです。しかもその間ずっと泡立て器でかき混ぜながら。。。。
熱が通るごとに粘性が増す生地を沸騰した湯煎にかけながらかき混ぜ続け、九割がた熱が通ったところで低温のオーブンに入れて表面を乾かすようにじっくりと焼き上げるのです。
何とも右手に厳しい作り方ですが、手間をかけた甲斐あっておいしさの方は保証付き。
プレーン・ビター・抹茶と三種とも全く調合の異なるものなのですが、すべて美味しく作ることが出来ました。
バレンタインの予約限定販売ですが、その前のチョコプレートにも乗っていますので機会があればご賞味ください。
ところで、一体テリーヌって何なのでしょう?
私と同じ年代ならば「あらいぐまラスカル」の次にやっていた世界名作劇場の主人公を思い浮かべるかもしれませんが、それは「ペリーヌ」です。
調べてみるとテリーヌとはフランス語の「土鍋」の意味で、その鍋を使った料理のことらしいのですが、日本では一般には魚のすり身や挽肉などにエビや野菜を入れ、型に入れて蒸し上げた西洋かまぼこのような食材と認識されています。
そしてこの西洋かまぼこが日本では四角い型で作られることが多かったために、四角い型で固めた料理をテリーヌと呼ぶようになったようです。
それにしてもまさかテリーヌが土鍋の事とは・・・・・。。
っと、言うことは・・・チョコのテリーヌってチョコ土鍋?
鍋の季節でもありますし、当店のバレンタインチョコをフランス人に渡す予定がある方は一言申し添えてからお渡しした方がよいかもしれません。