138号の当選番号は 028 114 147 160 162 です。
粉から始まる優雅な午後
最近ちょっと凝っているのは「魅惑の白い粉」。
などと書くと芸能界の黒い噂を思い出して「ええっ!もしかしてKURIKURIって怪しいお店だったの!?」なんて疑惑が真夏の積乱雲のごとくモクモクと脳内に湧きあがるかもしれませんが、それは誤解です。
私が凝っている白い粉とはお菓子作りに欠かせないアレ。
小麦粉やコーンスターチなどの粉類のことなんです。
きっかけになったのは甥っ子。
福岡にいるため滅多に会うことはないのですが、私のブログのデザート写真を見て涎をザーザーと滝のように流しているというカワイイ奴です。
しかし、小麦粉アレルギーなので伯父さん(私)自慢のケーキをほとんど食べることができず、唯一食べられるのは小麦粉を使っていないガトーショコラだけ。
本体に小麦粉を使っていないニューヨークチーズケーキを送ったこともあったのですが、底の黒い部分に小麦粉を使っていたので万が一を考えると気軽に食べてくれとは言えません。
そんなわけで小麦フリーのケーキを検討したのですが、コーンスターチなどのデンプン類には腰がなく、小麦粉並に腰のある米粉は食感の劣化が早い上に焼き上がりの香ばしさに欠けます。
腰がなければ食感が悪いですし、ウチのケーキは香りを重視してるのでそう簡単に切り替えられそうにありません。
しかし、ニューヨークチーズケーキの底の部分ならば香りはココアですし、食感も特に関係ありませんから米粉に変えても問題なさそうです。
そんな感じで甥っ子のために小麦粉フリーのケーキを作って送ったのですが、それだけで終わるのももったいない話。
それ以降ニューヨークチーズケーキは小麦粉フリーになっていますので、小麦アレルギーの方でも食べられるケーキになっています。
ただし、小麦と米粉の収納を分けているとはいえ、同じ厨房内で小麦粉を使っているので重度の小麦粉アレルギーの方は避けた方がいいかと思いますが。
さて、そんなこんなで米粉をはじめとした様々な粉類を入手していたのですが、その過程で知ったのが「ハルユタカ」100%の粉を売っているお店があるということ。
ハルユタカというのは国産小麦の品種で、とても良い香りが特徴なのですが、その生産量が少ないことから「幻の粉」とも呼ばれ、たまに目にしても「ハルユタカブレンド」しかなかったのです。
それが100%で手に入る!さっそく購入ボタンを連打し、どっさりと届いたのはいいのですが、その大袋を前にした時にふと疑問が浮かんだのです。
「いったい何に使うのだろう?」
通常ケーキに使う小麦粉は粘りの少ない薄力粉なのですが、ハルユタカはパンによく使われる強力粉。
いくら香りが良かろうともケーキに使うには無理があります。そこで私は考えました。
両の人差し指をぺろりとなめて頭にくるりと円を描いて結跏趺坐する事しばし、ポク・ポク・ポク・チーン!これだぁ!(この記述の意味がわからない人はYOUTUBEで『一休さん』を検索してみよう)。
まぁ実際にはパソコンに向かってgoogleで色々検索していただけなのですが、ともかくそれで思いついたのはスコーン。
当店のスコーンは薄力粉の全粒粉を使ったタイプなのですが、スコーンには強力粉を使うレシピもあるのです。
しかも、ウチの調合だと温かい状態で食べるのが前提なので冷めると固くなってしまうのですが、強力粉だと冷めても美味しいレシピがあるのです。
思い返してみると、以前フォートナム&メイソンで食べたスコーンはまさにそのタイプ。
冷めても固くならないのは、延々とおしゃべりを楽しむ本場英国淑女にとって重要な要素です。
これまで作っていたスコーンは、温かい状態での美味しさばかりを考えていたのですから、配慮が足らないと言われても反論の余地はありません。
そこで「冷めても美味しい」をテーマに調合を練り直し、そしてかむほどに美味しいハルユタカの個性を生かすために中に入れる具も厳選しました。
プレーンには温かいとトロリと溶け冷めるとプルンととろけるフィールハニーを入れ、レーズンは噛むごとに味わい深くなるように五種類のレーズンをブレンドし、もう一種類はベリーをメインに酸味のあるドライフルーツの組み合わせ。
そしてジャムなどをつけても美味しいように甘さは控えめ。
そうやってスコーンができてしまうと、午後のお茶セットのパウンドケーキが貧弱に思えてきます。
そこでスコーンの具を探している時に見つけたセミドライのアプリコットをガトーショコラに入れたミニケーキを作り、それに合わせてお皿も替えて・・・。
そんなわけで「午後のお茶セット」が新しくなってしまいました。
ちょっとアレルギー用のケーキを作るだけのつもりだったのですが、何がどうなるか世の中わからないものです。