141号の当選番号は 016 059 082 108 146 です。
衝撃のサービス
先月の夏休み、京都のリッツカールトンホテルに行ってきました。
リッツカールトンと聞いてナビスコと明治製菓が共同開発した新種の豚と思う人はいないでしょうが、そこまでメジャーな名前ではありません。
知る人ぞ知るといった感じの高級ホテルなのです。
どのくらい高級かというと、一番高い「ザ・リッツ・カールトン・スイート」が一泊百万円!
まぁこれは極端にしても、普通のスイートが二・三十万で一番安いツインだと七万円といったところでしょうか。
しかし高級なことを金額で表すのは品がありませんし芸もありません。
そこで金額を使わずに何とかこの高級感を表すことにしてみましょう。
まずホテルに着き、正面の車止めから側面にある玄関まで、左脇に鴨川を模したせせらぎのある小路を二十メートルほど下っていくのですが、右手には東山如意ヶ嶽、正面に和風庭園、と雅な空間を一足進むごとに街の喧騒を忘れていきます。
そしてハイテクを駆使した格子戸のような玄関を入ると・・・しっとりと落ち着いていながらも、何もない空間です。
正面はすぐに花柄のような幾何学模様にタイルを埋め込んだ壁。左手少し奥はカウンターで行き止まり。
右手は十メートルほどで黒壁のどん詰まり。
戸惑っているとカンターの女性が「そのまま奥にお進み下さい」と黒壁の方を指さすではありませんか。
一面壁にしか見えませんが、どこかに扉があるのだろうと近づいてみると…
何と壁全体が音もなく横にスライドしたのです。
このような仕掛けはかつてフォルティッシモHで体験したことがあるのですが、あのときはあくまでも壁の一部がスライドしただけ。
今回は壁全体です。
まるでハリウッド映画に出てくる忍者屋敷の如き大仕掛けなのです。
その壁を抜けた先がいわゆるロビーラウンジになるのですが、ここもまた通常のロビーとはひと味違います。
意外なほどにこぢんまりしたロビーには源氏物語をモチーフにしたアートが随所にあるのですが、本来あるべきものが見当たりません。
それはチェックインカウンター。
このホテルは各部屋でチェックインを行うために、必要ないのだそうです。
まぁ私たちも宿泊ではないので必要はなかったのですが・・・。
私たちの目当てはピエール・エルメ。
今まで国内ではマカロンしか扱っていなかったのが、ここでは生ケーキが買えるのです。
しかもすぐ横のロビーラウンジで、ベストの状態で食べることもできるのです。
ケーキ類はラウンジでも選ぶことができるそうなのですが、じっくりと選ぶためにまずはショップへ・・・と思ったらまだ開店していません。
そこで時間つぶしもかねてちょっとトイレに・・・と思ったら、新たな衝撃が!
まずはトイレの表示がどこにも無い!
いや、あったのかもしれないのですが一般人がすぐに識別できるような表示はしてありません。
キョロキョロとしていると音も無くにこやかな女性が現れて、優しく案内してくれるのです。
そして一部上場企業の社長室の如き扉を開けてトイレに入ると、四十歳未満は立ち入り禁止にした方がいいのではないかと思えるくらいの重厚な空間。
重役室のドアの如き個室の扉を開けると、便座の蓋がしずしずと立ち上がり、淡いブルーの光が便器の中に灯ります。
そして洗面所もまたかっこいい。
五十過ぎの渋いハリウッドスターがポケットチーフの位置を直す姿を映すのがふさわしい上質な鏡は、計算し尽くされた照明の効果か、私のような凡顔でさえ二階級特進レベルで男前が上がって見える程。
そしてそこにはペーパータオルや温風乾燥機などといった野暮なものはありません。
小さく折りたたまれた上質なハンドタオルがきちんと並べられているのです。
そんなトイレを後にして、やっとオープンしたエルメのショーケースを覗き込んだのですが、どれも芸術的と思えるほど品がいいケーキの数々。
容易に選べるものではありません。
そこで店の方に色々と質問したのですが、その答え方が素晴らしい!
甘さや酸味などの味のことだけで無く、香りの方向性やどのような方に好まれているのかなど、まるでこのケーキを開発し自分で作ったかの如くスラスラとわかりやすく答えてくれるのです。
いや、今容易に「作ったかの如く」などと言いましたが、私自身自分で開発して作ったケーキをあのように答えることができません。
まだまだ私には一流のサービスが提供できていないという事でしょう。
さてさてこんな事を書いていたら、この後にあった驚愕の美味しさを伝えるスペースがもうありません。
というわけで今回は「衝撃のサービス編」とし、次回を「驚愕の美味しさ編」としましょう。お楽しみに!