157号の当選番号は 031 084 108 159 171 です。
隠れた関係
新年、あけましておめでとうございます。
今年も、心の底からほっこりとできるお店を目指して頑張っていきますので、よろしくお願い致します。
ここ数年、まったく同じあいさつの使いまわしなのですが、常に同じ気持ちで迎える新年もまた良いもの。
KURIKURIも開店から十八年以上たちますが、当初から今に至るまでほぼ同じ内装。クッションこそ変わりましたが、カーテンは昔のままですし、カップでさえも開店以来使い続けているものがあるのです。
そして希望的観測ではありますが、私も昔と変わらぬ笑顔でお迎えしているはずですから、久しぶりに訪れた方でも、足を踏み入れた瞬間に昔の気持ちに戻れるのではないかと思います。
変わらないのがある一方で変わり続けているのがデザート。
二週間ごとに新作を出し、同じものは作らないというルールを課しているために常に進化し続けています。
と・・・威勢よく豪語はしたものの、そんなにホイホイと新しいものが生み出せるわけもなく、たいていは今まで作ってきたものの組み合わせを変えてみたり、ちょっと材料を変えてみるくらいのマイナーチェンジがほとんどです。
しかし、そんな小手先の技だけで年間二十五種類ものデザートを生み出せるわけがありません。
時には作ったことのないスイーツに手を出し、失敗を繰り返しながら新しいデザートに組み入れていくのです。
今回新たに手を出したのはギモーブ。
ギモーブと聞いても、たいていの人にとっては「?」が頭に浮かぶだけでしょう。
私にとって何より気になるのは、一行前に隠された高度な駄洒落、すなわち「ギモーブ」と「?(ぎもんふ)」の関係に気が付いた人がどれだけいるかということなのですが、ほかの人にとって気になるのは「ギモーブとはいったい何なのか?」ということでしょう。
お答えしましょう。
ギモーブとはフランス語でマシュマロのことです。
しかしマシュマロといってもただのマシュマロじゃありません。
普通のマシュマロは泡立てた卵白をゼラチンで固めて作ります。
一方フランスのマシュマロ、すなわちギモーブは煮詰めた果汁にゼラチンを加え、ひたすら泡立てて作るのです。
ただ、この「ひたすら泡立てて」という工程が非常に面倒なため、最近では卵白仕立てのマシュマロにちょっと果汁を加えたり、下手をすれば香料でフルーツの香りをつけただけのものをギモーブということもあるようです。
しかし、ここで作る以上そんな手抜きは許されません。
そもそも、このギモーブを作ってみようというきっかけになったのがお客さんからいただいた「コミナセマコ」のギモーブのおいしさに感動したから。
このギモーブ、触った感触は普通のマシュマロだったのですが、口に入れた瞬間にまるで綿菓子のように溶けていき、パッションフルーツの強烈な酸味と濃厚な香りだけを残して消えていったのです。
そこでさっそく作り方を調べていろいろ試作したのですが、これがまた面白い。
ゼラチンの量、果汁の煮詰め具合、砂糖の種類、などで食感が次々に変わっていくのです。
ただ、すべてに共通しているのが泡立て工程の大変さ。
時間がかかるのももちろんなのですが、泡立てるときの温度がちょっと低すぎたりするとすぐに固まってしまって「ハイチュウ®」のような食感になってしまいますし、高すぎるといつまで混ぜてもきれいな泡になりません。
しかし、逆に泡立てさえうまくいけば、かなり硬めに作っても数回噛むだけでスルスルと溶けていくのです。
この「硬めスルスル」の食感は、パフェのアクセントにぴったりだろうということで、年末年始の「プレミアムパフェ」の具材として何種類か入れています。
時には「柔めシュワシュワ」のギモーブも混ぜつつ、常に何種類かのギモーブが入っていますので、もしまだ間に合えばぜひお試しください。
ところで「ギモーブ」について調べていたとき、もう一つ分かったのがギモーブとはもともと薄紅立葵という植物の名前だったということ。
昔はギモーブをこの植物の根からとったでんぷんを使って作っていたようです。
そしてこの植物の英語名が「マシュー・マロウ」。
そう、マシュマロの語源でもあるのです。
ちなみにこの「マロウ」という名前で気が付いた人もいるかもしれませんが、この植物はハーブティー「マロウ・ラベンダー」などで使っているブルー・マロウの親戚です。
まさかマシュマロとハーブティーがつながるとは思ってもみませんでしたが、世の中にはまだまだいろんな関係が隠れていそうです。