160号の当選番号は 023 030 117 175 202 です。
白い指
世の中には緑の指を持つ人がいます。
むろんシュレックやニコチャン大王のような本当に指の色が緑の人というわけではありません。
緑の指を持つ人というのは植物を育てる天賦の才を持った人のことで、その人が育てればどんな弱った植物もたちどころに元気になると言われています。
また似たような指と言えば、触れたものがすべて金に変わったというミダス王が思い出されますが、さしずめこちらは金の指といったところでしょうか。
そんな話はさておき、先月は店をお休みし、行ってきました大阪へ。大阪といえば言わずと知れた食い倒れの都。
食って喰って食い倒れてやる!と言いたいところですが、我が家のメンバーはそろいもそろって胃袋が赤ちゃん。
美味しいものは大好きなのですが、大量には食べられません。
そこで選んだのが難波周辺での買い食い三昧。
やたらとでかい看板が立ち並び、巨大なオブジェが至る所から突き出している道頓堀では、こちらの王将とは別物の大阪王将の餃子やたこ焼き、そしてカニの甲羅を器にしたカニみそスープなんかを一人前ずつ買ってはちょこちょこと立ち食い。
そして、その後は大須の商店街を三つくらいくっつけたようなカオスな商店街を練り歩き、歩き疲れたのでイートインスペースのあるたこ焼き屋さんでタコ焼き買って一休み。
しかし、このイートインスペースが渋かった。
まるで男子校卓球部の部室みたいな薄暗い部屋(個人的偏見)に机といすを並べただけ。
しかし、そんなアバウト極まりない状態でありながらお客さんの秩序はきれいに保たれています。
テーブルのない壁際ではアベックが並んで仲睦まじくタコせんを食べ、スーツ姿の男二人はアツアツのたこ焼きをまるで飲み物のごとく瞬間で平らげて席を立ち、我々が入った時からすでに風景のようになじんでいた老夫婦は我々が食べ終えた後も半分以上残ったたこ焼きを少しずつ食べていましたが、席の入れ替わりはスムーズでテーブルにごみが残っていることもありません。
混沌としているようで、しっかり浪速のルールがあるのでしょう。
そんなこんなで色々なものをチマチマとたくさん食べたのですが、感心したのが「作りたて」へのこだわり。
タコ焼きが作りたてなのは当然なのでしょうが、大阪王将でも目の前で包んでは焼くというスタイルですから、作り手の心意気まで伝わって、より一層美味しく感じられます。
そして驚いたのが551蓬莱の豚まん。
ここなんか有名店ですし、あちこちに出店しているのですから工場から送ってくるのかと思いきや、目の前で一生懸命包んでいるじゃないですか!
それを目にしたせいかはわかりませんが、ふかふかの皮の美味しいこと!
これを食べてしまったらもうコンビニの肉まんには戻れません。
このつくり手と受け手の距離の近さが生み出す美味しさこそが、食い倒れの街を作っているのではないでしょうか。
さて、そんな食べ歩きの他で印象に残ったのは阪急梅田で行われていた「フランスフェア」。
下調べの段階でフェアが開催されているのは知っていたのですが、行ってみたら驚いた!
栄なんかでよくやっている「北海道フェア」とか「バレンタインフェア」とは規模が全く違います。
見渡しきれないほどの広大な会場には数え切れないほどのフランス人(推定)。
売り子さんにもフランス人と思しき人が数多くいましたし、美しきパリジェンヌ(妄想)から差し出される試食の生ハムの美味しいこと!
そして平日だというのに、メーカーの社長さんや職人さんなんかもいて気軽に記念撮影を引き受けてくれています。
こうして作った人との触れ合いがあると、つい商品の方も美味しそうに見えてしまい、思わず買ってしまった食材の数々。
危うく「食い倒れ」ならぬ「買い倒れ」になってしまうところでした。
やはりここでも、作り手との距離の近さに美味しさを感じてしまったのでしょう。
さて、ここで思い出すのは我がお店。
ランチやケーキやアイスクリームが自家製であるのはもちろん、コーヒーやほうじ茶まで自家焙煎した上に、内装の棚まで自作した手作りの塊のようなお店です。
そんなお店で、作った本人が直接お客さんのもとに運んでいるのですから、作り手との距離は大阪で感じた以上に近いはず。
私は有名店で修業したわけではありませんし、触れたものを何でも美味しくする魔法の指は持ち合わせていません。
しかし、いつも小麦粉で指を真っ白にして頑張っていますので、この距離の近さに免じて思いっきり美味しさを感じていただきたい!