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変わらぬ変化
先月半ばから始まった栗まつり、去年も同じ名前の企画をやっていたのですが、今年はひと味違います。
それは、毎週新作を出すこと。夏のパフェ祭りでもできたのだから、栗まつりも同じようにできるだろうと思ったのです。
しかしそれは甘かった。
まず最初に直面したのは、冷蔵庫の問題。
常に二種類の新作デザートがあるために、パフェ祭りの時も結構冷蔵庫がパンパンになっていたのですが、栗々茶々プレートが始まるとパンパンどころじゃ済まなくなってしまったのです。
パフェの材料は割とひとまとめにしてしまっておけるものが多いのですが、プレートには栗プリンや栗のムースケーキなど場所をとる素材が結構あるのです。
パフェ祭りの時にはドアが膨らんでいるような気がした程度で済んでいたのですが、今や横にも膨らんでいるような気がするほど。
四角いはずの冷蔵庫が、気持ち的には三段重ねの雪だるまのように見えるのです。
やむを得ず、冷蔵庫の中身を一部上の自宅の方へ移し、必要となったら上に取りに走ることにして何とかしのいでいるのですが、不便なことこの上ありません。
そしてもう一つの、そして最大の問題は時間です。
栗をデザートにするには下ごしらえが必要です。
栗を蒸し、剥き、裏ごしをする。地味きわまりない作業ですが、鍛え抜かれた我が「栗む筋」をもってしても結構時間を食われてしまいます。
毎年やっていることですから、そのくらい分かっていそうなものなのですが、いつも始めてみるまですっかり忘れているのです。
そう、まるで夏休みの宿題のように。
小学生の頃、夏休みの終わり頃になると古新聞の山を引っ張り出して天気を調べながら日記をねつ造し、あまりの大変さに来年こそは毎日日記をつけると誓ったものですが、結局六年間同じ誓いを繰り返したもの。
百まで続くと言われている三つ子の魂は、当然五十じゃ消えないものなのです。
さらりと年齢を二つほどサバ読みしましたが、そんなことを気にしている暇が無いほど時間がありません。
毎週新作を出すためには、新作を作り終えたらすぐに次の試作を始める必要があるのですが、なかなかそうもいかないのです。
このため新作デザートは前半と後半でちょっぴり盛りつけや味付けが変わっていることがあります。
いやいや、だからといって前半が美味しくないわけじゃありません。
ちゃんと納得できるまで仕上げてから提供しているので美味しいのは間違いないのです。
ただ、脳内でじっくり寝かせている時間が無かったために、ちょっと手を加えてみたくなっただけ。
ボージョレー・ヌーボーと寝かせたワインの違いのようなもので、どちらにもその持ち味があるのです。
気になるのでしたら、前半と後半に食べ比べて頂くといいかとも思うのですが、毎週新作が出ていることを鑑みると体重計から苦情が来る恐れもあります。
細かいことは考えずに、食べたいと思った時に食べるのが一番ではないでしょうか。
さてさて、こんな具合にワラワラと大騒ぎしながらデザートを作っているのですが、さすがに厨房が手狭です。
19年前に店をオープンした時には「自家焙煎珈琲と焼きたてケーキの店」がコンセプトだったので、ちっちゃな厨房で十分だったのですが、これだけランチやデザートが増えると創意工夫や根性だけでは手に負えません。
そこで12日にお休みを頂いて、11・12日で少々厨房を改装します。
まぁ一日二日で終わるようなものではないので、徐々に使い勝手よく仕上げていくつもりなのですが、とりあえず少しは作業しやすくなるはずです。
店を始めて19年。
変わらずにやってきたつもりなのですが、こうしてみると徐々に変わってきているようです。
メニューもそうですし、カップも開店当初からあるものはほんの数点ほど。
カウンターには文字が書けないほどデコボコになった場所もありますし、店の備品もずいぶんと古びてきました。
壁に貼った珈琲や紅茶の産地の地図なんか、もう字が見えません。
そして、当時三十代だった私も今や五十代。隠しようもなくオッサン化が進行しています。
しかし、古くなったからといって悪くなったわけじゃありません。
たしかに大工さんがピカピカに仕上げてくれたカウンターは、所々ニスも剥げてみすぼらしくなってきました。
しかし、私がオイルを塗って仕上げただけのテーブルは、少々へこんだり落書きされてもいつの間にか元に戻っているだけじゃなく、年を重ねるごとにしっとりと落ち着いてきているのです。
KURIKURIはピカピカに派手なお店ではありません。
地味な手作りのお店です。
でも、だからこそ年月を重ねるごとに少しずつ良くなっていくと思いますので、これからもよろしくお願いいたします