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変わらぬ変化
先月半ばに店を二日ほどお休みさせていただいて厨房の改装を行いました。
メインは業務用大型冷蔵庫の導入だったのですが、「たかが冷蔵庫を入れるくらいで二日も休むなんて」と思われるかもしれません。
しかし、これがホント大変だったのです。
まずは進入路の確保。幅120センチもある巨大な箱を運び入れるには通り道にあるあらゆる物を撤去せねばなりません。
ガス台、作業台、棚、食洗器…これらの物を店舗側に移動するだけでも一仕事。
これだけでも改装を始めたことを後悔し始めたのですが、これはまだ序の口。
当然、最後には移動したものを元に戻す仕事も待ってます。
ヨメさんは別の任務で遠方に行ってもらっていたので、この地味な作業を一人でこなしていたのです。
次に大変だったのは元の冷蔵庫の移動。
二台ある家庭用大型冷蔵庫をどかすことで業務用冷蔵庫を置くスペースを作ることにして、古い方は廃棄業者に引き取りに来てもらい、新しい方は隣の小部屋に移すことにしたのです。
でかいとはいえ家庭用、たかだか八十キロくらいの物です。
隣の小部屋との間には十センチほどの段差はありますが、意地と根性と執念があれば一人で運べるだろう・・・。
と思ったら意外な伏兵がいたのです。
それは間口の広さ。
隣は物置部屋で三畳ほどしかないため入口も小さく、幅が68センチしかありません。
それに対して冷蔵庫の幅は70センチ。
漫画なら無理やり押し込めば、ムギュ~・・・スッポンってな感じで通り抜けることもできるでしょうが、現実世界では無理。
もう少し広い間口にしておけば・・・と悔やみつつ、心に浮かんだのは野比家の間取り。
三年ほど前、実物大ドラえもんのぬいぐるみが発売された時に話題になったのが、その大きさです。
横幅92センチで奥行72センチ。
それこそムギュッと押し縮めなければウチの小部屋に入れることはできません。
こんな横幅のある猫型ロボットがドタバタと駆け抜けることのできた野比家の間取りは、どれほどのゆとりをもって作られていたことか。
大らかな少年が育ったのもむべなるかなである。
と、妙なところで納得している場合ではありません。
冷蔵庫をムギュッと縮められないのなら、間口を広げるしかないのです。
戸口の木枠を外せば三センチは広げられそうです。
ドライバーで外せるものはすべて外し、接着されているものはメリメリはがし、むき出しになった間口の広さは70.5センチ。
ぎりぎりセーフではありますが、ぎりぎり過ぎて一人では運べません。
段差を超えるため冷蔵庫にロープを巻き付けて引き上げるつもりだったのですが、そのロープが通らないのです。
で、結局廃棄業者の方にお手伝いただいて、何とか移動することができたのですが、ほんとにギリギリ。
何というか、昔の上等なたんすの引き出しを押し込んだ時にその空気圧で上の引き出しが出て来たように、冷蔵庫が部屋に入った時にその圧力で窓が開くのではないかと思ったほどです。
あとはまぁ、冷蔵庫に入っていたものを一時的にしまうための仮設冷蔵庫を段ボールで作ったり、移動したあとなどを掃除したりというのが地味に大変だったくらいでしょうか。
さて、ではなぜこんなに大変な思いをしてまでデカい冷蔵庫を導入したのか。
それは新しい商品を作るため。
この街に店を開いて19年。
毎日コーヒー豆を焙煎し、ケーキを焼き、デザートを作ってきた経験を、何かの形にできないかと思ったのです。
多治見をイメージできるもので、ウチにしかできないもの。
多治見といえば「うながっぱ」も有名かもしれませんが、オリベストリートにも名前が使われている古田織部もゆかりの人です。
千利休が自然の中に美を見出した人ならば、古田織部は自然にない美を作り上げた人。
また「へうげもの」(「ひょうげもの」と読む)という漫画に描かれているように、既成概念を打ち壊す美学を持った人でもあります。
そんな古田織部に敬意を表し、そしてまた多治見に生きる「へうげもの」の一人として「織部焼」にちなんだケーキを作ることにしました。
「織部」「黒織部」「織部黒」。
織部焼の代表的な三種にちなんで三種類作ることにし、二種類までは浮かんだのですが、もう一種類がどうしても浮かびません。
こんな時は「助けてドラえもん」と言いたいところですが、奴はウチの間口を通れません。
ならば困ったときの京都頼み。
今まで数多くのインスピレーションを与えてくれた京都に行けば、きっと何かがつかめるに違いありません。
アイデアが浮かばないのは、最近京都に行っていないため血中京都濃度が下がったからに違いない!
先月末に三連休をとったのは、そんな理由だったのですが、これを書いている時点ではまだ出発前。
結果はどうなったのでしょうか?