170号の当選番号は 009 020 097 139 172 です。
明日に向かって売れ
二月です。
そして二月と言えばバレンタイン。
そんなわけで今年もまたバレンタインフェアに行ってきました。
今年の目的地は名古屋高島屋のアムール・デュ・ショコラ。
以前行った時にはほとんど試食させて貰えなかったので、ここ数年避けていたイベントです。
たった一粒で板チョコ一枚分どころか昼食代くらいになるものもあるのですから、試食もせず買うには、左右を見ずに横断歩道を渡るほどの度胸か、シールのためだけにビックリマンチョコを段ボール買いできるほどの財力が必要です。
しかし私にはそのどちらもありません。
それで最近はずっと栄方面のバレンタインイベントに行っていたのですが、去年はアムール・デュ・ショコラでも結構試食ができたという噂を聞いたのです。
そんなわけで高島屋に足を運んだのですが、イベント会場に着いて驚きました。
開店してからまだ二十分と経っていないのに、見渡す限りマダムでいっぱいなのです。
バレンタインと言えば、うら若き乙女が放課後の誰もいない教室で手作りチョコを渡すなんて光景が目に浮かぶものですが、そんな幻想は昭和の年号と共に消えていったのでしょう。
とにかくマダムでいっぱいなのです。
うら若きマドモアゼルもいるにはいますが、比率にすれは9:1と少数派。私のようなオッサンに至っては誤差範囲にも入れません。
そんなマダム溢れる会場ですが、私のようなオッサンにもちゃんと試食を差し出してくれます。
しかも一つのお店から何種類も出してくれる気前の良さ。
こちらもつい気前が良くなって、美味しかったお店のチョコを買っていたら結構な量になってしまいました。
しかもそのほとんどはバレンタインまで日持ちしないという不条理さ。
しかし、これこそがこのマダム率の高さの原因なのでしょう。
みんな誰かに渡すより、自分自身のために買っているに違いありません。
そして今年のサロン・デュ・ショコラで感心したのがパティシエ達の意気込み。
地元シェ・シバタの柴田シェフが不思議な髪型をフリフリしながら接客をしているのはともかく、重鎮鎧塚シェフまでも仏の笑みを浮かべつつ一箱一箱丁寧にサインをしてくれています。
バレンタイン商戦が始まったばかりだというのに、それまで開発や制作に全力を尽くしたはずのシェフ達が自ら、しかも先頭に立って販売を行っている。
その意気込みには頭を垂れるばかりですが、体力の方も心配です。
どうか体を大切に、まだまだ美味しいものを作って頂きたい!
さて、人に望みを託してばかりもいられません。
ウチだってバレンタインチョコを作るのです。
例年通り生チョコとテリーヌは出すのですが、今年のお茶はひと味違います。
最近新作ケーキのためにいろんな抹茶を買いあさり、明日にでも茶道部が開けそうなくらい沢山の種類の抹茶を持っているものですから、抹茶の味がそれそれ違うのです。
しかも、生チョコの『濃茶』には上等な製菓用抹茶の十五倍以上もする高級抹茶をふんだんに使うという贅沢さ。
抹茶好きにはぜひ一度食べて頂きたいものです。
そして素材の高級さに頼らず、手間をかけ工夫を凝らしたのが『パテ・ド・ショコラ』。
ベルギーチョコのガナッシュの中にギモーブやパート・フリュイやナッツやビスケットを入れたKURIKURIオリジナルのチョコなのです。
元ネタにしたのは「チョコサラミ」などと呼ばれているガナッシュにドライフルーツやナッツなどを入れたもの。
しかしドライフルーツとチョコの組み合わせは『贅沢ショコラ』で極めています。
そこでもっとフレッシュなフルーツ感を出すために、ギモーブとパート・フリュイを入れることにしたのです。
ちなみにギモーブというのはゼラチンを加えた果汁を煮詰め、ひたすら泡立てて作る果物感溢れるマシュマロのこと。
そしてパート・フリュイというのは果汁で作るハードゼリーの一種なのですが、ゼラチンを使わずペクチンで固めるためにグミよりも遥かにジューシーな噛みごたえになるのです。
と、私のような拙筆が百言を費やしてもイメージを伝えることはできません。
そこで二月前半のデザート『バレンタインプレート』に使うことにしました。
ギモーブはグラスに入ったトライフル風デザートに、そしてパート・フリュイはココットの中のマンゴームースの中に忍ばせていますので、興味のある方は是非ともご賞味頂きたいと思います。
さて、こうして読み返してみると今回のエッセイの半分は宣伝。
しかも14日を過ぎてからこれを読んだ人は指をくわえて味を想像するしかないという非情さです。
しかし、新商品を作り込んでいる内に少しだけ柴田シェフや鎧塚シェフの気持ちが分かったのです。
新しいものを作るには結構お金がかかります。
ウチなんかのような小さなお店でも結構かかるのですから、百貨店に出店するレベルでは莫大な費用がかかるのでしょう。
来年もまた新しいものを作るためには今年たくさん売るしかないのです。
鎧塚シェフの温かな笑顔の奥には来年に向けた熱い闘志がたぎっていたのだと思います。
と・・・いうわけで・・・うちのチョコも、お一ついかがでしょうか?