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猿を笑うものは


「朝三暮四」という言葉があります。

猿に餌を与えていた老人が、餌の量を減らすために「これからは餌のドングリを朝に三個、夕方に四個にしたい」と言ったところ、猿たちは激怒したので「朝に四個、夕方に三個にする」と言ったら喜んだという中国の故事です。

結果は同じなのだから、アホな猿のように目先にとらわれてはならないという話なのでしょう。

話は変わりますが、今月初めのデザートは予告とちょっと違います。

先月に出した予告では「初夏のフルーツパフェ」となっていたものが、実際には「チョコとアメリカンチェリーのパフェ」。

予告を出した時点では、去年やったメロンのシャーベットを中心に他の果物を組み合わせていくつもりだったのですが、気まぐれで作ったアメリカンチェリーのコンポートが美味しくて、ついこれを中心に作ってみたくなってのです。

そうなると個性が強すぎるメロンはもう使えません。

他のフルーツも色々使ってみたのですが、相性が今ひとつ。やっぱりメロンに戻ろうかとも思ったのですが、メロンなんか夏でも売っています。

一方チェリーは旬を逃せばほとんど出回ることはありません。

そんなわけでメロンはパフェ祭りに回すことにして、今回はアメリカンチェリーと相性のいいチョコやマスカルポーネを使ったパフェにしたのです。

いやぁ、悩んだ悩んだ。今まで400種類ほどの新作デザートを作ってきましたが、予告と異なるものを出したのはこれが初めて。

色々作りすぎたので、そろそろネタの泉が枯れてきたのではないかと心配です。

来月にはパフェ祭りも始まることですし、何とかして新たなネタの鉱脈を発掘しなければなりません。

今月は14日にお休みを頂いて、京都にネタ探しに行く予定なのですが、もう京都には何十回も行っているのですから、新たなネタが見つかるか不安です。

先月人気だったお茶三昧パフェは「マウンテン」の激甘スパから生まれましたから、キワモノのお店に行くのもいいかもしれませんが家族が猛反対しそうです。

ま、これまでの経験上、京都に行けば何らかのインスピレーションを得て帰ってきてますから、きっと何かいいアイデアが浮かんでくることでしょう(希望的観測)。

ところで、キワモノといえば今「東京喰種CAFE」のまずいサンドイッチが話題です。

原作である東京喰種(グール)という漫画に出てくる「まずいサンドイッチ」を忠実に再現したものだそうですが、あまりのまずさに悶絶する人が続出。

どうやら本気で気持ち悪くなるまずさのようです。

しかし、そこまでまずいものをちゃんとした食品だけで作るのは大変な創意工夫が必要なはず。

開発者の(主に試食した人の)苦労が忍ばれます。

そこまでの努力を重ねたものなら、何かインスピレーションが得られるような気がしなくもありませんが、場所は東京。

残念ながら食べる機会はないようです。

いやぁ、残念・残念(微笑)。

ちなみに、私が食べたマウンテンの激甘スパは、凄まじく甘くどいだけでまずいものではありません。

興味のある方は話のネタに行ってみるのもよろしかと思います(薄笑)。

さてさて、デザートでは悩み多き日々を過ごしていますが、基本的に私は悩まない性格です。

やるかやらないかだけのことならば、たいていすぐに決められます。

会社員になったばかりの頃、ふらりと立ち寄った中古車屋さんで車を買った時も、あまりの即断即決に車屋さんの方も戸惑ったほどの即決力を持っているのです。

世の中には「決められない」という人も多く、そんな方から見ると即決力は羨ましい力かもしれませんが、そんなことはありません。

先の話に出てきた車はイタリアのファミリーカーで見た目に惹かれて買ったのですが、不慣れな土地で左ハンドル車は運転しづらいことこの上なし。

しかも当時のイタ車は故障が多い上に燃費も悪い金食い虫。

車検に出した時には、部品が届かないとかで二ヶ月近くもかかったあげく、二十万円以上の請求書が来た時には本気で捨てようかと思ったほど。

他にも私の持ち物には、一度も使ったことのないものや一度使ったきりのものなどが死屍累々。

買い物に行ってもすぐに買ってしまうので、買い物を楽しむ時間もごくわずか。

決して羨むようなものではないのです。

しかも、こうやって見てみると私の決断力はやるかやらないかを決めるのではなく、考えも無しに「やる(買う)」を決めているだけ。

決断力があるというよりも、考えが足りないだけといえるでしょう。

そして考えが足りなかったから、何をするかも決めずにパフェ祭りをやることを決めてしまい、毎年こうやって何を作るか悩んでいるに違いありません。

ただ、もう決まっていることなのですから、せめてもう少し早くパフェの内容を考えた方がいいかもしれません。

いや、よくよく考えてみれば、やるのが決まっている以上、早く考えてもギリギリに考えても考える量は同じはず。

先ほどは猿をアホ呼ばわりしましたが、どうやら私に猿を笑う資格はないようです。

いやいや、さらに深く考えてみると、餌の量が減らされるという非常事態に、少しでも先に多く貰っておいた方が安全だと考えた猿の方が危機管理能力に優れているとも言えるでしょう。

パフェだって早く考えておいた方が、準備に余裕が生まれるはずです。

これからは猿に笑われぬよう、できるだけ早めにパフェの内容を考えることにしましょうか。



KURIKURI