184号の当選番号は 004 008 040 067 092 です。
忘却のパフェ
人は他人の話を三割しか聞いていないという研究結果があります。
確かに言った言わないはよくある話ですが、三割しか聞いていないとは驚きです。
しかし研究によると、たとえその場で返事をした事であっても数時間後には夢の中の出来事であったかのように思い出せなくなり、平均して三割しか記憶していないそうなのです。
これは脳の情報整理作用によるもので、現代社会のように沢山の情報が入ってくると脳が処理しきれなくなり、優先順位が高いと判断したものだけを長期記憶に回すようにした結果だということです。
すなわち「聞いていない」というのは情報化社会に合わせて人類が獲得した忘却能力なのです。
従って他人が話した事を覚えていない人は、現代社会に適応した新人類であるともいえるでしょう。
さらに私なんか、人の話どころか自分の話したことさえ忘れ去るほどの高い忘却能力を誇っていますから、ミュータント並みの超新人類なのかもしれません。
そしてこの忘却能力を獲得した新人類は新しいスイーツも生み出しました。
それはオレンジキャラメルパフェにも使っているブロンドショコラ。
「ブラック」「ミルク」「ホワイト」に続く第四のチョコと言われるこのキャメル色のチョコレートは、フランスのショコラティエが試作中にホワイトチョコを恒温槽に入れたのをすっかり忘れて帰ってしまった結果、チョコが熱変性して生まれたものだそうです。
さて、話は変わりますが今後KURIKURIの閉店時間は6時半になります。
実は今までも冬季限定で6時半までにしていたのですが、これからは通年で6時半に閉店させていただくことにしたのです。
これまで日の長い時期は7時の閉店となっていたのですがそれを三十分早めることにした訳は、仕込みが間に合わなくなってきたから。
最近パフェは技法だけでなく飾りにまで凝り始めたうえ、ジュエリースコーンという美味しいのだけど作るのに手間のかかる商品を売り始めたので、家庭教師がある日などは仕込みで日をまたいでしまうこともしばしば起きるようになってしまったのです。
「なんだ、それなら家庭教師をやめればいいじゃないか」という声も聞こえてきそうですが、家庭教師は学生時代から三十年以上も続けてきた伝統芸能。
しかも、私は一か月でも途絶えればすべてを忘れ去ることのできる程の超絶忘却能力を誇っているので、一時的にやめておくというわけにはいきません。
それに中学高校と散々勉強に苦労してきた身としては、その苦労を次の世代のために活かしたいのです。
しかしこの忘却能力、家庭教師の際には悩みの種。
懇切丁寧に説明し「うん分かった」と言った生徒が数週間後にはすっかり忘れていることは珍しくないのです。
こんな時素人はつい「キリキリ覚えんかゴルァ」と叱りつけてしまうものですが、これは下の下策。
脳に不快と判断されたその情報の優先順位はますます下がり、長期記憶に移されることはなくなってしまうことでしょう。
ではこんな時プロはどうするか。プロは脳での優先時順位を上げることを考えます。
例えば一流の塾講師でもある林修先生は難しい話やマニアックな話を、多くの人が興味を持ちやすい身近なものに例えるなどしてその情報の優先順位を引き上げます。
そして、一人でも多くの人に興味を持たせる塾に対して家庭教師の場合には目の前にいる生徒だけがターゲットです。
一見塾講師よりも簡単そうに思えますが、これもなかなか大変。思春期の子ども達は興味津々の出来事に無関心を装ったり、興味のないことに目を輝かせてみせるくらいは朝飯前。
そんな姿に何度も騙されつつ、カスタムメイドのプログラムを考えていくのが家庭教師のお仕事なのです。
そしてこの塾講師と家庭教師の違いは、パフェにも同じようなことが言えます。
紅茶パフェやKURIKURIパフェといった定番品は塾のように「一人でも多く」の人に美味しいと思ってもらえるように作っています。
たとえば紅茶パフェは「香り重視派」と「味重視派」の人のために茶葉を微粉砕した紅茶アイスと煮出したロイヤルミルクティアイスの二種類を入れ、相性のいいオレンジをアクセントにしています。
一方KURIKURIパフェは「モンブラン派」にも「栗きんとん派」にも楽しんでもらえるよう洋栗と和栗のアイスを使い、ほうじ茶のアイスは緑茶派の人にも受け入れてもらえるように浅めの焙煎にするなど、とにかく一人でも多くの人に美味しいと思ってもらえるように作っています。
それに対し期間限定のパフェは家庭教師タイプです。
チョコ系のパフェならチョコ好きの人のために、抹茶系のパフェなら抹茶好きの人のためにと、特定のターゲットの人に「めちゃ美味しい」と思ってもらえるように作っているのです。
とはいえ、くどいようですが最近さすがにネタ切れ感が否めません。
持ち前のスーパー忘却力を生かして、何か新しいスイーツでも作れないかと思っているのですが、今のところ私の忘却力が生み出したのはコゲとカビばかり。。。
そこでお願いなのですが、何か新しいパフェのヒントになるようなネタがありましたら、ぜひとも教えてほしいのです。
もっとも・・・
せっかく教えてもらっても、すぐに忘れてしまうかもしれないのですが。。。