192号の当選番号は 046 145 160 168 178 です。

AKB型喫茶店


昔、「おやこ劇場」という所で指導員をしていた時に「指導員を探せ」という即興ゲームを作って遊んだことがあります。
場所は名古屋郊外のとあるデパート。
そのデパート内の人混みに十人程の指導員が紛れ込み、それをグループ分けした子ども達が探しだし、何人見つけられるかを競うゲームです。
このゲームのポイントは二つ。指導員は隠れたり逃げたりしてはいけないことと、子ども達は指導員を見つけたらサインペンとノートを振りかざし大きな声で「サインしてくださ~い!」と駆け寄ることです。
運悪く見つかった指導員は、子ども達に取り囲まれてサインをせがまれる羽目になるのです。
私なんかは恥という概念が薄いので「ハイハイ慌てないで一列に並んで~」などと余裕をかまして楽しんでいたのですが、近くの大学に通っていた大学生の指導員は「知り合いに見つかったら・・・」と気が気ではなかったようです。
さて、そんな話はさておいてパフェのネタが品切れ寸前です。
先月号も同じようなことを書いたので「狼少年」のごとく誰も信じてくれなくなりそうなのですが、ホントなんだから仕方ありません。。。
これを書いている時点での新作パフェは「お茶とマスカルポーネのパフェ」なのですが、これもギリギリまで決まらずに苦労しました。
名前を決めた時点では「ほうじ茶を使ったティラミスっぽい感じで」とざっくりイメージしていたのですが、ほうじ茶を使ったティラミスっぽいパフェは既に以前作っています。
何か新しいものを・・・と悩んだ末に思い至ったのが「柚子寒天」。
そう、先月号のエッセイに書いた八翠の柚子あんみつに入っていたアレです。
あの鮮烈な香りをお茶やマスカルポーネに合わせるには・・・いきなり上に持ってきては全体が柚子風味になってしまいますから、下に行くに従って柚子を強くして・・・と組み立てていき、何とかギリギリで間に合わせたのです。
そしてこれで前回仕込んだネタを使ってしまったので、次のクリスマスパフェのネタがもうありません。
そんなわけで、先日訪れたのが名古屋の「タカノフルーツパーラ-」。
一般的にフルーツパーラー系やフルーツを売りにしているパフェはフルーツがド~ンと入っていて、パフェを食べているのか果物の合間にアイスを食べているのかわからないようなものが多いのですが、ここのパフェは違います。
フルーツもしっかり入っているのですが、決してそれ一つが突出することはなく全体の美味しさの一部として溶け込んでいるのです。
そして何より見た目も華やか。
私が座った席は前が鏡張りになっていて、鏡越しに店内が見渡せたのですが、あちこちの席にパフェが運び込まれるたびにその席が華やかに明るくなって見えるほど。
もちろんそれはパフェの華やかさだけでなく、パフェを前にしたお客さんの笑顔の明るさも加わってのことなのですが、パフェというものは幸せを生む食べ物なんだとつくづく実感しました。
 と、人ごとのように言っていますが、自分もまたパフェを作る身。私が作ったパフェは、果たして幸せを生んでいるのでしょうか?
確かにパフェを運んだ時、テーブルに置くと「わぁ」という歓声が上がることも多いのですが、自分で作ったものだけに客観的な評価ができないのです。
見た目もタカノフルーツパーラーに比べると地味だし・・・。
なんて、少し自信を失いかけていたら、うちのパフェを食べたお客さんがフェイスブックに「この時間がほんとにしあわせで元気が出ます」と書いてくれてるじゃないですか!いやぁ良かった良かった♪
さて、そんなタカノフルーツパーラーで何を頼んだのか。
本来ならばクリスマスパフェの参考になるような苺のパフェを頼まなくてはいけないのですが、メニューを見ると洋梨のシャーベットを使ったデザートプレートがあるじゃないですか。
洋梨のシャーベットは「秋のフルーツショコラパフェ」の時に使おうと何回も試作したのに美味しく作ることができなかった因縁があります。
もしここのシャーベットが私の試作レベルならそれが洋梨の限界と諦めもつきますし、美味しいならば来年リベンジしなければなりません。
そんなわけで、苺を諦めて洋梨デザートにしたのですが、これがまた美味しかった。
洋梨の食感を残しつつも滑らかに溶け、飲み込んだ後に華やかな香りが湧き上がってくるのです。
やはり洋梨の熟れ具合の見極めが大切なようです。来年またチャレンジしなければなりません。
さて、再びサインの話なのですが、最近三人のお客さんからサインを求められました。
「パフェ本」という本に当店のパフェが載っているのですが、その写真の横にサインして欲しいというのです。
一度でも私の書いた伝票を見た人ならご存じのように、私は字が超絶下手なのですが、お客さんの頼みとあっては断れません。
というか、根っからのお調子者なので、ちょっと芸能人気分で嬉しかったりします。
しかし何故私のような無名人のサインを・・・と聞いたところ「作ってる人に会えるお店なんかめったにないから」とのこと。
確かに外でパフェを食べる時、パティシエがテーブルまで運んできたことはありませんし、パティシエの姿を見たことさえめったにありません。
そう考えると当店は、パティシエとお客さんの距離が近い、いわばAKBタイプのお店なのかもしれません。
ま、握手会を開いても誰も来ないでしょうが。。。



KURIKURI