237号の当選番号は 087 143 149 170 192 です。
モモのチカラで
う~む、桃はうまい。
先月「桃と木苺のパフェ」を作るにあたって色々試作したのですが、その時つくづく再確認したのが桃の美味しさ。
そのまま生で食べてももちろん美味しいし、果汁に砂糖を加えてシャーベットにしても、ミルクも加えてジェラートにしても、生クリームを加えてアイスクリームにしてもやっぱり美味しい。
スライスして砂糖を振ってバーナーでカラメリゼしても美味しいし、軽く煮てコンポートにしても煮詰めてコンフィチュールにしてもやっぱり美味しい!
そんなわけで今年の夏は桃のパフェをちょっと多めに作る予定ですので、よろしくご了承いただきたい。
さて、話は全く変わりますが先月号のエッセイにも書いたように私は筋金入りの乱筆です。
学生時代の友達に会えば、たいてい話題になるのが私の字の汚さ。
私が板書した文字があまりに難解なため指名しなくなった先生もいますし、テスト解答が読めないという理由で減点されたこと数知れず。
世界史の先生からは「今度からは現代日本語で書くように」と注意され、皆からは「あいつは象形文字で解答したらしいぜ」と噂された程。
そして何故延々と字下手自慢をしたかというと、サインの言い訳がしたかったから。
先月号で、このエッセイをまとめた書籍の販売を始めたという話を書き、その流れて「超絶乱筆でよろしかったらサインもします」的なことを書いた結果、本を買ってくれた人の半数近くからサインを求められるという予想以上の効果。
そこで約束通りサインをしたわけですが、あるお客さんから「あら、別に下手じゃないじゃない!」と言われたのです。
イヤイヤ立派に下手なことは間違いありません。ただ、字下手人間を半世紀以上も続ければ、それなりにごまかし技も身に付くというもの。
私の字が下手な原因は「バランス感覚が欠如している」という点にあります。漢字と平仮名の大きさのバランスがとれませんし、漢字の中で「へん」と「つくり」のバランスもとれません。
文字の重心の位置が分かりませんから縦にも横にもまっすぐ書くことができません。
しかし言い換えれば、仮名漢字交じりでなく、まっすぐに書く必要が無ければそれなりに見られる文字が書けるということ。
そこで選んだのが漢字を含まない「kurikuriよリパフェをこめて」という言葉。
これを斜めに書き、それに書き慣れた自分の名前を加えれば、それなりに見れるサインになります。
そしてあらかじめ「超絶乱筆」と宣言してハードルを下げておけば、さほど下手には見えないだろうという作戦だったのです。
そんな策略の甲斐あって「下手じゃない」と思ってもらえているようだと安心していたら、思いがけない刺客が現れたのです。
サインを頼まれ、いつものようにサインペンを取り出したら「これで書いてください」と、相手が取り出したのが筆ペンだったのです。
ふ・・筆・・ペン。。。
そんな高度な筆記具は昭和以来使ったことがありません。
何とかやっとサインペンで読める字が書けるようになったのに。。。
つかまり立ちができるようになったばかりの子どもに自転車に乗れというようなものです。
しかし我が座右の銘は「なんとかなる」。
筆ペン如きに負けるわけにはいきません。
臍下丹田に気を集中して書き始めたものの、こやつはわずかな力のいれ具合の違いで線の太さがころころ変わるじゃありませんか!
それでも何とか平仮名部分を完走し、後は名前の漢字を残すのみ。
自分の名前「栗山隆治」ならば習字の時間にさんざん書いたはずですから問題あるまい。
と、思ったのが甘かった。
栗の字の下にある「木」がなぜか「大」になってしまったのです。
最後にちょいと書き足してごまかしてはみたものの、明らかに不自然な漢字。
穴の位置がずれた五円玉のように、将来価値が出ればいいのですが・・・。
誠に申し訳ない次第です。
そして再び桃の話に戻すと、桃は美味しいだけじゃなく、非常に縁起のいい果物なのです。
桃は古代中国において仙木と呼ばれ、あらゆる邪気を払うだけでなく不老不死まで得られたりと、現代日本では怪しげな通販でないと見かけないような効能をもつスーパーツリーと考えられていました。
私の記憶が確かなら、孫悟空(元祖)が超人的いや超猿的なパワーを手に入れたのも桃の実を食べたからだったハズ。
そして日本ではイザナギノミコトが死者の国から脱出する際に追っ手をうち払うの使ったことから、桃の実に「意富加牟豆美命(おおかむづみのみこと)」という神名を授けたとの故事があります。
たぶん桃太郎もこの故事に出来する物語でしょうし、私の好きな晴明神社にある厄除けの桃も同様の由来があるのでしょう。
そして先に書きましたように今年の夏は桃のパフェが続々登場する予定。
これを食べてウイルスやら夏バテやらの邪気をどしどし払って頂きたい。
そしてこの桃パワーは、お客さんのみならず毎日調理している私にだって効果があるに違いありません。
毎年パフェ祭りの時期には新作パフェのネタが決まらず悶絶する日々を送ってきましたが、きっと今年はスルスルと新しいパフェのアイデアが浮かぶことでしょう。
そして、買って頂いたエッセイ本に書くサインも、より上手っぽくなっているはずなので是非ともお買い上げ頂きたい!
あ・・・ハードルを上げてしまったか。。.。