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明るくなったろう


最近お気に入りのブロンドショコラのアイスクリーム。
ビスケットとキャラメルを足して二で割ったような香りが特徴なのですが、まずはブロンドショコラとは何者なのかという所から話しましょう。
ブロンドショコラは正確にはブロンドチョコレートと呼ばれる新種のチョコレートで十年ほど前にフランスのヴァローナ社から初めて発売されました。
作り方はホワイトチョコを加熱するだけのシンプルなものですが、それだけに加熱方法や加熱時間によって香りやコクが大きく変わり、作り手としてはとても面白い素材なのです。
私が初めて作ったときは加熱しすぎて焦がしてしまいましたが、最近は熱暴走のギリギリで止める事ができるまで上達しました。
おかげで、より香ばしいブロンドショコラが作れるようになり、一層美味しいアイスクリームが作れるようになったのです。

そして「ブロンド」と紛らわしいのが「ブロンズ」。
私も最初その違いをあまり意識していなくて、ブロンドショコラアイスを入れるタッパーに「ブロンズ」と書いたこともあるほどなのですが、たった一字違いでも意味は全く違います。
ブロンドはブロンドヘアに代表されるように明るい黄色をさす言葉で、現代では金髪そのものを意味することが一般的です。
対してブロンズは「青銅」と呼ばれる銅と亜鉛の合金をさす言葉。日本でブロンズといえば、「平和の像」のブロンズ像みたいな青緑色を思い浮かべますが、本来のブロンズは十円玉や銅メダルの色。
色彩的には「赤茶色」とか「赤銅色」だと思うのですが、最初にブロンズを翻訳をした人はきっと青緑にさびたブロンズ像あたりを見て「青銅」と決めたのでしょう。

そして一字違いといえば、最近驚愕したのがハッピーエンドを表す「大団円」。
これを私はず~と「大円団」と思い込んでいたのです。
ところが最近読んだお気に入り漫画の最終巻の帯にでかでかと「大団円!!」と書いてあったので、誤植じゃないかと調べてみた所、誤植だったのは私の脳みその方だと判明したのです。
いやぁ思い込みとはオソロシイもの。
しかし、語感的には「だいだんえん」よりも「だいえんだん」のほうが御曹司との結婚話みたいで、ハッピーエンドにふさわしいと思いませんか?
まぁ縁談話だけでは破談の可能性もあるので、大団円にはならないかも知れませんが。。

そしてハッピーエンドといえば、ず~と気になっているのが「白雪姫」や「眠れる森の美女」のエンディング。
「目覚めた姫は王子様と幸せに暮らしましたとさ」とありますが、この王子様は寝ているおなごの唇を奪うような男。
結婚生活に不穏な影を感じるのは私だけではないでしょう。
トシとってくると、この「目覚めた~幸せに暮らしましたとさ」の文言は蛇足だと思えて仕方ないのです。
姫が長い眠りから目覚めて最初に見た光景がイケメンの王子様。
これだけで十分にハッピーなエンディングと言えるのではないでしょうか。

そもそも幸せというものは「暮らし」のように全体にあるものじゃないと思うのです。
例えば宮殿の如き屋敷に住み、札束風呂に入り、暗がりで一万円札に火をつけ「どうだ、明るくなったろう」なんて言うような豪奢な暮らしをしていたとしても、当人にとってみればそれは単なる日常。
その日常の中でどれだけ多くの心を満たす出来事に出会えるのか、いや数多くでなくとも深く心を満たすものに出会えるか。
そこに幸せがあるのではないでしょうか。
とにかく、幸せというものは暮らし全体にあるものはなく、そこにある小さな出来事や出会いの中にあるものだと思うのです。
ちなみに「どうだ、明るくなったろう」の風刺画のモデルになった山本唯三郎氏は、先に挙げた例がかすむほどの豪奢な暮らしをおくったそうですが十年と続かずに没落し、晩年はかなりわびしい生活だったようです。
とはいえ、これほどの波瀾万丈な人生はきっと楽しかったことでしょう。
しかし、どれだけの幸せに出会えたのか。
同じ台詞を言うにしても、芸者さんに自分の靴を探させるために百円札(現在価値約30万円)に火をつけるようなことをせず、そのマッチのあかりで一緒に靴を探すような生活を送っていれば、きっと多くの幸せに出会えただろうと思うのです。

そんな話はさておいて、今年のバレンタイン。
先月号にも書いたように今年の新作は「台湾カステラスクチョコ」。
まぁ注文時に発音するのが恥ずかしいかもしれないので、注文用紙の方には「台湾カステラのラスクチョコ」としましたが・・・。
ともあれこのラスクチョコはそんじょそこらのラスクチョコとは違います。
スポンジケーキのようにきめ細かく、スポンジケーキよりも歯切れのよい台湾カステラは、ラスクにするとサックサックのホロホロでチョコと一緒にとろけていくのです。
つかっているチョコレートはベルギー産の高級クーベルチュールチョコや、高級宇治抹茶をふんだんに練り込んだクーベルチュールホワイトチョコレート。
しかも表面にはマンディアンのようにナッツやドライフルーツで飾り付け、味や食感にアクセントを加えているという贅沢さ。
これをお気に入りのお茶なんか飲みながら食べれば心が満たされること請け合い。
きっと幸せな気持ちになれるハズです。
そして私は、そんなお客さんの姿を想像しながらこう呟くのです。
「どうだ。(気持ちが)明るくなったろう」と。




KURIKURI