244号の当選番号は 013 025 127 136 205 です。

フロンティアスピリッツ


これまで何度かここでも書いたのでご存じの方も多いと思うのですが、当店のパフェはまず名前だけが決まります。
月の始めにこのKURIKURI通信が発行されるので、直前の月末ごろに季節に合わせた「美味しそうな名前」だけが決まるのです。
そして試作を重ねて最終的な形が決まるのは発売日の前日か前々日。
これを二週間(夏場は毎週)ごとに繰り返すというギリギリの綱渡りを成功させているのは、たぶん私の前世が「分福(ぶんぶく)茶釜」のタヌキだったから。
綱渡り芸で福をもたらしたタヌキの魂が、ギリギリのところで美味しいパフェを生み出し、みんなに幸福な時間を分け与えていると思うのです。

そんな感じで名前だけを先に決めているわけですが、先月失敗したのが「紅茶とリンゴのパフェ」。
果物売り場に並ぶ様々な品種のリンゴをみて「リンゴと紅茶を組み合わせたパフェなんて美味しそう」と思って名前を決めたのですが、後にオソロシイ事実に気がついたのです。
何と、秋に全く同じ名前のパフェをやってるじゃないですが!
恐るべき我が忘却力!
どうりで美味しそうなパフェの構成がスルスルと浮かぶハズです。
美味しそうどころか、実際に美味しかったのですから…。
何とか頭をリセットして全く別のパフェを作り上げたのですが、危うく同じパフェを作ってしまうところでした。

話変わって副業の家庭教師。
年末に引き受けた中学受験の生徒ですが、先日ついに志望校に合格したとの知らせを受けました。
いやぁめでたいめでたい。
通常ならば小学校3・4年の頃から受験用の塾に通って何とか合格するようなところに受かったのですからたいしたものです。
私の受験指導の賜・・・と言いたい所ですが、私がやったのは勉強を一緒に楽しんだだけ。
中学受験の厳しさを知っているだけに、そう簡単に合格するとは思えず、もし合格できなくても勉強を続けられることを主眼にしていたのです。
ですから、これはもう本人の努力の賜。
なんせ私の指導風景を客観的に見れば「オッサンと男子小学生がじゃれあってる」だけ。
親御さんに見られたら「指導料を返してください」と言われること必至のおちゃらけた授業だったのです。
しかし合格したとなると、もう一つやらねばならぬことがあります。
おちゃらけた勉強で受かったことで慢心したり、入学後に厳しい勉強をしてきた者達との競争に破れて傷心したりせぬようアフターサービスが必要なのです。
そこで私が「一週間で読破するように!」と宿題に渡したのが漫画「暗殺教室」全21巻。
タコ型超生物の担任教師を卒業までに暗殺しなければならない生徒達の成長を描いた愛と友情のギャグ漫画です。
この紹介文だけでは単なる荒唐無稽な物語にしか思えませんが、本当にいい話なのです。
主人公であるタコ型超生物の「殺せんせー」は私の理想の教師像ですし、知識を得ることの大切さやその使い方についても深く考えさせられる漫画なのです。
これから中学生になるということは、まだ大いなる知識の海の水際に立っただけということ。
そんな所で慢心したり傷心したりせず、大海原を存分に泳ぎ回って欲しいのです。ヌルフフフ・・・

なんて偉そうなこと言っていますが、この小学生の家庭教師を通じて実感したのがオノレの知識の浅さ。
なんか色んなことを「当たり前」と思ってしまっていて、深く考える習慣がすっかり薄れてしまっていることに気がついたのです。
高校受験や大学受験ではこの「当たり前」を前提に教えても何の問題も無かったのですが、小学生にとって「当たり前」は当たり前じゃありません。
それを伝えるには知識を小学生の目線の高さまで掘り下げる必要があったのです。
いやぁ、知識の大海を泳いでいるつもりが、実は浅瀬でチャプチャプしていただけだというのを思い知りました。

「暗殺教室」の中に、「優れた殺し屋ほど万(よろず)に通じる」というセリフがありましたが、優れた家庭教師、そして優れたパフェ職人も万に通じる必要があるのでしょう。
通じるということは、知っているというだけではありません。
一見バラバラに見える知識を結び付けて活用するのが通じるということ。
今後はあらゆる方向に触手を伸ばし、様々な知識をしっかりと吸収して活用していかねばなりますまい。
そんなわけでつらつら考えていたのですが、ちょっとした新説を思いつきました。
もしかすると当店で、人類にとって新しい生活習慣が生まれたのかもしれません。
それはパフェを食べる習慣。
イヤイヤそんなものは都会に行けば毎日のごとくパフェを食べ歩く人がゴロゴロいるのではないか、と思われるかもしれません。
しかしそのような人はパフェの探究者であって、習慣として食べてるわけではありません。
一方当店には新作ごとに常に来られるお客さんが結構います。
同じ店で同じ人が作ったパフェを一定周期で食べに行く。
このリズムは立派に習慣と呼べるものではないでしょうか?
ただ、当店は小さい店ですので、せっかく来たのに駐車場がいっぱいで入れなかったり、売り切れになってて食べられなかったりでリズムを崩されることも多々あるかもしれません。
しかし、茶釜タヌキの魂が生み出した人類初の生活習慣(諸説あり)の開拓者として、このパフェ習慣をゼヒとも続けていただきたい。




KURIKURI