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人と人の間に
スポンジ界は奥が深い。
先日「春のフルーツショートパフェ」を作るにあたって頭の悩ませたのが、ショートケーキの主役ともいえる「スポンジ」部分。
最近多用している台湾カステラは、抹茶やチョコタイプはともかく、プレーンとなるとちょっと個性が足りません。
かつて使っていた「ジェノワーズ」と呼ばれるスポンジは、ケーキには最適ですが、パフェにはちょっと優しすぎる歯ごたえです。
そこで米粉を使ったジェノワーズを作ってみたところ、歯ごたえはとても気に入ったのですが、お米の香りがフルーツの香りと合わないのです。
そこで台湾カステラの小麦粉を強力粉に変えてみたところ、これがビンゴ!
国産の「キタノカオリ」という品種を使ったのですが、香りがいいのはもちろん、食感にもちもち感が加わっただけでなく、鮮やかな黄色に焼きあがるので見た目もとっても美味しそうになったのです。
しかし残念なところが一点だけ。
この台湾カステラが一番美味しそうなのは、焼いている途中。
オーブンから立ち上る香りが、とてつもなく美味しそうなのです。
もうこの香りを嗅ぎながら苺ミルクを飲むだけで、極上のイチゴショートケーキ食べている気分になれそうなほど。
この香りをパフェにまで持っていけないのが残念で仕方ありません。
さて、先月号で「パフェの名前に悩んでいる」という話をしたのですが、先日ついに人工知能(AI)に手を出してしまいました。
と言っても最新型のAIではなく、ChatGPTという誰でも使える簡単な奴。
そこでいろいろ条件を変えながらパフェの名前を提案してもらったのですが、なんか今一つ心に響かない。
例えば今月の「柑橘カスタードパイパフェ」は「柑橘とカスタードの」にするか「柑橘の」にするか「かんきつ」にするか「オレンジ」にするかなどと散々悩んだ末に、自分が一番食べたい名前を選んだもの。
しかしコイツが提案するパフェの名前は、なんかあるものを組み合わせただけっぽくて「お前ホントはパフェ好きじゃねえだろう」と言いたくなるようなものばかりなのです。
AIと呼ばれているくせに、コイツにはちょっと愛が足りないようです。
(念のため補足しておくとAIをエーアイと読まずアイと読んだダジャレのつもり・・)
そしてChatGPTを使ったついでに色々試してみたのですが、コイツは結構いい加減です。
たとえば「多治見市のクリクリについて教えて」というと「クリクリは石川健太氏(誰?)創業の多治見市に本店をおくアイスクリーム専門店」と答えますし、私の名前について質問すれば、私は栗山窯の代表であり、私の作品が世界中の美術館に展示されていると答える始末。
アイスクリーム専門店はまだしも、小学校時代粘土で作った子犬に先生から「カバ」とタイトルをつけられたほど不器用な私の作品が美術館に展示されることはあり得ません。
知らないなら知らないと答えればいいものを…。
まぁしかし、コイツの気持ちもわからないではありません。
私も副業の家庭教師で教え子から知らないことについて聞かれると、持ってる知識をフル活用してそれっぽい答えをさも世界の真実であるが如く言ってしまいますから…。
人工であれ、天然であれ、知能には「知ったかぶり」という機能が標準装備されているものなのでしょう。
また、人工知能といえば、車の自動運転について面白い記事を読みました。
自動運転に必要なAI技術はほぼ完成しているのですが、完成しきれていない問題が非常事態における倫理の問題だというのです。
例えば子供が飛び出してきたとき、避けた先にお年寄りがいればどちらを救うべきなのか。
日本なら年少者を救うべきでしょうが、韓国などの儒教国では年長者を救うべきだとなるのです。
この文化的背景を持った倫理問題をAIがどう判断するかがネックになっているというのです。
またAIの悪用対策にも倫理が必要だと言われています。
それにしても最先端の技術の課題が倫理とは意外です。
私が倫理を学んだのは大学入試の時くらい。
しかもマークシート用を独学でやっただけなので「アレテー」や「イドラ」といった単語をひたすら覚えた程度。
もう少しちゃんとテキストを読んでおけばAIのことも、もう少し理解できたことでしょう。
ともあれAIの進化には倫理が大きくかかわっているというのです。
ただ、もう一つ気になるのが職業問題。
AIが進化すると様々な職業が無くなってしまうというのです。
そこで、AIに奪われる職業リストを見たところ、幸いトップ100に喫茶店は含まれてはいませんでした。
しかし、飲食業界にも着々とAIの波は押し寄せてきています。
近い将来AIパティシエが究極のパフェをポコポコ作る日が来るかもしれません。
そんなことされた日には、私の商売も上がったり・・・なんて心配はしていません。
私がお客さんの笑顔のために日々パフェを進化させているのと同時に、お客さんもまた日々進化していくパフェを楽しみにしていると思うのです。
倫理の「倫」の字は人と人とのきちんとしたつながりをさす言葉。
毎日人と人とのつながりの中で進化している生身の人間が、テキストデータだけで倫理を学んだようなAIに負けるわけがないのです。
馬鹿な子ほどかわいいというように、人間は欠点すら愛するもの。
究極のパフェには程遠いかもしれませんが、日々ちょっとずつ進化していきますので、末永くお付き合いいただきたい!