248号の当選番号は 047 078 083 139 191 です。
前々々世
パフェで大事なのは起承転結。
目にした瞬間からストーリーが始まって、どんな感じで食べ始めて、どんな感じで食べ終えるのか。
いつもは流れるようなストーリーにするのですが、つい先ほど完成した「初夏のフルーツレアチーズパフェ」はちょっと「転」で躓くようにイタズラしました。
このパフェの上半分はサワークリームトップで紅茶シフォンを敷いた三層構造のレアチーズケーキ。
これに三種のフルーツアイスとチェリーをのせてフルーツレアチーズケーキに仕立てたのです。
これだけでもう十分にフルーツレアチーズパフェの完成形。
映画だったらもうエンドロールを流し始めてもいいくらいです。
ここからどうやってストーリーを紡いでいくのか。
映画なら舞台を変えてPARTⅡを作ればいいのですが、パフェはまだ道半ば。
ここで残りをエンドロール代わりのコーンフレークだけにするわけにもいきませんし、すぐにレアチーズPARTⅡじゃ前半の感動が薄れてしまいます。
しかもパフェの場合、上から順に食べ進める露天掘り方式の人だけでなく、一気に下まで掘り進める坑道堀りタイプの方までいるのですから両方を満足させねばなりません。
そこで今回はここを運任せ、お客さん任せにしたのです。
中段のアクセントに入れたのはザクザクのハードビスケットとホロホロのポルボロンとサクサクのレモンメレンゲと数種のフルーツなどで食感の宝箱状態。
ザクザクホロホロフルーティになるのか、サクサクフルーティホロホロになるのか。
はたまた上のチーズケーキとミックスしたり下のカシスヨーグルトアイスと一緒に食べるのか。
ストーリーを作るのは自分自身であるという仕掛けなのです。
しかし、どんな経路を辿ろうとも、ラストはきっちりと美味しくフィニッシュできますので、安心してお召し上がり頂きたい!
話変わって副業の家庭教師。
今年中学受験の指導をした教え子を、中学入学後もそのまま継続して教えているのですが、この子がなかなか面白い。
細かいことを知りたがったと思ったら妙にスケールがでっかかったりするのです。
あるとき「山を越えた空気が下界に降りるときに元の温度より高くなる」というフェーン現象の話をしたら「もし山が一兆メートルあったらどうなるの」と聞いてきたのです。
四千メートル位なら実在するし、意外にも計算はめちゃ簡単です。
しかし一兆(百万の百万倍)メートルとは・・・。
現実的には不可能なので、無理矢理いろんな条件を当てはめて計算してみましたが、どう頑張って最後は太陽系が破滅するいう結論に達してしまうのです。
それほど一兆とはとてつもない数。
しかし、それで終わらないところが彼のすごさ。
「ねえ、無量大数ってどのくらいの数なの」・・・・無量大数(0が88個!)ときたもんです。
それでは、と計算してみると無量大数とは全宇宙の原子の数を足してもまだ足りないという、とてつもない数。
しかし、彼がスマホでちょいと調べると隣町に行く程度の距離でも、あらゆる経路を計算に入れると軽く無量大数を超える組み合わせがあるというのです。
これにはちょっと感動。
実在する数の限度をはるかに超えた選択肢が存在しているということは、私達はいつも無限の可能性の中にいるということ。
多少道を誤ろうが、遠回りをしようが可能性は決して消えないというのは、なかなか楽しい発見じゃないですか!
とまぁこのように脱線ばかりして、授業料を頂くには少なからずためらいがあるようなカテキョを楽しんでいるワケですが、これが誰にだって成立するわけじゃありません。
単純に知っていることを教えるだけでなく、想定外の質問にも正面から向き合って、脳みその限りをふり絞って相手の要求に応えるには、その行為を「楽しい」と思える相手が必要なのです。
そして、そんな相手には滅多に出会えるものじゃありません。
たぶん前世あたりでも彼と師弟関係にあったのでしょう。
いやいや、もしかすると前々々世あたりで二人が同一人物だったから、脳みそに同じ知識を取り入れていくことが楽しくて仕方ないのかもしれません。
そして再びパフェの話に戻すと、パフェのために脳みその限りを振り絞って手間を惜しまないのは、その行為が「楽しい」と思えるお客さんがたくさんいるから。
単に美味しいパフェだったら、中段の「転」は砕いたビスケットと果物だけでも十分合格点だったのです。
それをわざわざ仕込みに手間のかかる三種類もの焼き菓子を入れたのは、それが私にとって楽しいことだったから。
当店にいらっしゃるお客さんの反応は様々。
一心不乱に食べ進める方もいらっしゃれば、食べ終わったあとに目を閉じて余韻に浸る方、帰りがけにガッツポーズを取りながらいかに美味しかったかを力説してくださる方、etc...。
そんな方々の姿を思い浮かべれば、つい楽しくて手間をかけてしまうのです。
まぁ、もしかしたら前々々世あたりで同一人物だったために、おなかの脂肪を同じパフェ成分で作ろうとしているだけなのかも知れませんが・・。
と、いろんなことを目一杯楽しんでいるワケではありますが、いろいろ疲れがたまるお年頃であるのもまた事実。
去年は夏の終わりから体調を崩してしまいましたので、今年はシーズンパフェを一つ減らした上に、お休みもちょっと多めにとらせて頂きますので悪しからず御了承願います!