252号の当選番号は 112 114 134 148 160  です。

イグアナに訊け


先月のパフェで地味に苦労したのが「栗粉」。
蒸し上げた栗を裏ごしし、砂糖を加えて炊き上げ、再び裏ごしするだけの簡単なモノのハズでした。
しかし実際に作ってみるとしっくりいきません。
確かに、栗粉というモノは本来団子などの上からふんわり振りかけるもの。
栗粉界においては、アイスクリームの下敷きにされるなんて前代未聞の出来事であったに違いありません。
とにかく、細かく裏漉せばつぶれてしまい、荒く裏漉せば口当たりが悪くなる、といった具合でなかなか最適解が見つからなかったのです。
結局超細かく裏ごしたものをぎゅっと押し固めから、荒く裏ごすという力技で何とか美味しいパフェに仕上げることができました。
 
とまぁパフェ作りにはこの手の地味な苦労がつきものなのですが、一度こうやって苦労しておくと、次からは苦労しなくてよくなるのが理系人。
たとえば今の「栗とリンゴのパフェ」に使っている練りパイ。
練りパイを初めて使ったのは今年の初夏の「柑橘カスタードパイパフェ」。
このときはザックザクの食感を出すために何度も試作を繰り返したのですが、今回のザクザク食感は一発でOK。
きちんと実験計画を立てて試作しておけば二回目からは、赤ちゃんでも食べられるホロホロから入れ歯クラッシャーのゴリゴリまで、様々な歯ごたえが脳内だけで調合可能なのです。
 
このように理系人の脳みそはパフェ作りに何かと便利なモノなのではありますが、私には致命的な欠陥があるのです。
それは字が下手すぎて記録を残せないこと。
一応試作の時にメモ紙にざっと調合などは書いておき、終わった後には引き出しに突っ込んでおくのですが、恐ろしいほどの乱筆故に次に作るときにはもう何が書いてあるのか判別不能。
先ほどの練りパイのように半年以内ならば、記憶を頼りに調合することもできるのですが、一年も経てば記憶はすっかりリセットされてしまいます。
そうなるとメモ紙はロゼッタストーンのようなもの。
再びネットで調合を探して、その調合を元にベースとなる文字列を探し出すなど、暗号解読の如き手間がかかってしまうのです。
 
この記録を残せないというか残さない習慣は高校生時代からあって、高校三年生の時に使ったノートは全教科で一冊だけ。
どうせ読み返そうと思っても読み返せないのだから、ノートには記憶を引き出すときのヒントになりそうな記号や文字だけを記し、計算などは全て教科書の余白で済ませていたのです。
また、大学時代のグループ研究では一番楽な記録係をさせてもらえなかったので、ひたすら実験手順を組むことを担当していたのです。
そして、卒論研究では、あまりの難読故に教授が肉筆を一切許さず、当時やっと実用レベルになったばかりのワープロソフトで書くことを強制される有様。
しかしそのおかげで数少ないパソコンを占有でき、学部内でただ一人ノートを使うことなく卒論を仕上げるという偉業?を成し遂げたのです。
こうして文字から遠い生活を続けた結果、乱筆はいっこうに改善されることなく現在に至り、読むに読まれぬメモを書くようになってしまったのです。
 
話は変わりますが、私はときどきお客さんから「先生」と呼ばれています。
基本的にはお子さんの家庭教師をしたことがある方なのですが、もう十年以上昔に一年程やっただけの方からも、ずっと「先生」と呼ばれ続けているのです。
まぁそんな具合で色んな方から先生と呼ばれているのですが、よくよく考えてみると、私の先生人生の始まりは高校時代にさかのぼります。
高校時代、数学が超絶苦手だったために文化系クラスに進んでいたのですが、私の脳は理系の塊。
まるでコアラ舎に紛れ込んだイグアナの如き異端者だったのです。
しかし見方を変えれば、それはオノレの才能を役立てるには絶好の場を与えられたようなもの。
理科が苦手な友人に教えるのに飽きたらず、放課後にクラスの連中相手に理科教室を開いてクラスの生物・化学の平均点を20点以上も引き上げたのです。
そして高校卒業直後から家庭教師を始め、現在に至るまで殆ど中断期間なく続けてきたという、正式な病名がつきそうな程の教え好き。
その結果、人生の七割以上に先生成分が含まれる生活を送ってきたのです。
地表面の七割が水の地球が「水の惑星」と呼ばれているのですから、私が「先生」と呼ばれるのも致し方ないことなのかも知れません。
 
しかし、そんなに字が下手なのに教えることができるのかと気になることでしょう。
実は高校時代に放課後教師をしたときに悩んだのがその点。
板書の文字が読めないという苦情が相次いだのです。
そこで編み出したのが、ほぼほぼ字を書かない教え方。
簡単な図形ぐらいしか板書せず、殆ど全てを口頭だけで教える技を身につけたのです。
そして今でも家庭教師では、ほぼ文字を書くことなし。
一子相伝の秘技を伝えるが如く、口頭だけで殆どのことを伝えているのです。
そんなわけで、先生生活も40年を超え、ベテランの域に達しています。
しかも私には関連する事実が三つあれば「もっともらしい仮説」を作るという特技もあります。
もし世の中で、何か知りたいことがあったら何でも訊いてみていただきたい。
ChatGPTの如く「知ったかぶり機能」満載ではありますが、何でもお答え致しましょう!





KURIKURI