260号の当選番号は 006   156   162   175   193 です。
割り増し上等
先月後半に始まった「チェリーと紅茶のパフェ」は意外なところで苦労しました。 
それは飾り。 
パフェに生のアメリカンチェリーを乗せて金粉を吹くことまで決めていたのですが、それにはどうしても細いチョコを飾りたいと仕上げ担当の嫁さんが言うのです。 
季節はもう夏。そして美味しくパフェを食べていただくために室温は高めに設定しています。 
一方、美味しいクーベルチュールチョコレートは25度を超えるとヤワヤワになってしまうのです。 
板状のチョコならまだしも、細いチョコではあっという間に倒れてしまうに決まっています。 
と、なると製菓用の溶けにくいチョコを使わざるを得ないのですが、こいつはちょっと美味しくありません。 
飾りといえども美味しくないのは使いたくないと悩んだ末、編み出したのはココアを添加するという技。 
要は溶けにくいために感じにくくなっているチョコ感をカカオの香りで割り増しようということなのです。 
そして、ホワイトチョコも同時に使うことで口溶け感もアップさせ、何とか美味しい飾りができたのです。 
  
さて、七月から九月まではパフェ祭り。 
祭りといっても春の某祭りのように白いお皿がもらえたりするわけではなく、毎月一回シーズンパフェが出るだけ。 
たったそれだけ?と思われるかもしれませんが、よくよく考えていただきたい。 
当店は二週間に一回新作パフェが出るのである。 
と、いうことは、月に一回三週連続で新作パフェが出るのが三か月も続くということ。 
ひと月が大体四週間であることを考えれば、ほぼほぼ毎週新作パフェ♪ 
これはもう、祭りと呼ばずして何と呼べばいいのでしょう? 
ご来店の際にはぜひ「わっしょい!わっしょい!」と連呼していただきたい。 
  
とまぁ、お客さんにとっては楽しさ満載のパフェ祭りではありますが、制作担当者としては不安いっぱいの三か月。 
そんなに都合よく新作パフェを思いつくのか? 
毎年毎年ぎりぎりの綱渡りでなんとかなっているのですが、今年はパフェ祭りの期間中に赤いちゃんちゃんこの年齢に到達するおトシゴロ。 
寄る年波と経験値のどちらが勝つのか。 
なかなかスリリングな展開ではありますが、亀の甲羅をぶち破るという年の功パワーを120%発揮して乗り切ろうと思います。 
  
そこで気になると思われるのがこの120%という表現。 
一般的には100%が最大値ですし、今の若者は「1000%ムリ」といった具合に桁違いの表現を使っています。 
そう考えると、この120%はあまりにも中途半端な値です。 
しかし、私のように宇宙戦艦ヤマトを観て育った世代なら、波動砲発射の際に発する「エネルギー充填120%」のセリフに心をときめかせた経験があるからわかるでしょう。 
満タンよりもちょっと無理した所には男のロマンが詰まっているのです。 
なんてことを学生時代には思っていましたが、社会に出ると120%は現実的な値。 
機械の設計なら限界から二割は余裕を見て最大値を定めますし、商品の袋詰めだってパンパンにせず二割以上は余裕をもっているのが普通です。 
人の能力も筋トレが限界だと思ってから数回はこなせるように、もう駄目だと思ってからも意外に先があるもの。 
パフェ祭りだって、何回も「もう無理」と思うことでしょうが、二割の余力で何とかなるはずですので、期待していただきたい。 
  
話は変わりますが、先月の初めに一週間ほどのお休みを頂きました。 
理由は母の葬儀のためなのですが、その後しばらく実家に残ったのは父のため。 
九十を過ぎた父は、母が亡くなる十日ほど前に緊急入院するまで、長年にわたって介護看護を続けていたのです。 
それが、急にするべきことが無くなってしまうと、魂が抜けてしまう心配があります。 
そこで、通夜や葬儀を一緒にこなした後は、家族の思い出が詰まった大宰府や父が若いころ働いていた佐世保の造船所などに連れまわして無理やり歩かせ、食事は私が食べたいものをわがまま言って父にも食べさせるという悪逆非道な孝行息子を演じてきたのです。 
本来ならばゆっくり休ませ、食べたいものを食べさせるべきだったのかもしれません。 
しかし父も私も昭和生まれの九州男児。 
「女には優しく、男には容赦なく」という、令和の世では不適切にもほどがある価値観で育ってきているのです。 
父もまた息子の前では弱いところは見せられぬと、意地を張って歩いて食べて、きっと疲れたことでしょう。 
しかしその甲斐あって、歩幅が10センチも広がったのです。 
天国で母にゴロニャンと甘えるのは先送りにして、しばらくは現世を楽しんでいただきたい。 
 
そんなこんなで、私の実家関係は小康状態になったものの、我が家も色々ままならぬ状況を抱えるおトシゴロです。 
そんなわけで、今後しばらく毎週火曜日と水曜日をお休みさせていただくことにしました。 
去年は隔週で週休二日ですから、今年はさらに毎月二日ほど休みが増えることになります。 
次々にパフェが出る割に、食べるチャンスは減ってしまうかもしれません。 
しかし、休みが増えた分考える時間も工夫する時間も増えるはず。 
エネルギーを20%割り増しして充填した宇宙戦艦ヤマトの波動砲は、オーストラリア大陸サイズの衛星をも破壊する威力を発揮しました。 
休みを増やしてエネルギーを割り増ししたパフェは、味覚のみならずハートまでも打ち抜くパワーを持っているはず。 
最新パフェ画像は常にHPに掲載しますので、心ときめくパフェを見かけたときには、何をおいても駆けつけていただきたい! 
